10月から『もののけ姫』と『エヴァンゲリオン』シリーズのリバイバル上映が予定されています。実はこの2作品は、当初の上映当時から「因縁のある作品」でしたがこれは偶然なのでしょうか?
◆企画としてはまったくの別物 それぞれのリバイバル上映の方向性とは?
『もののけ姫』と『エヴァンゲリオン』シリーズのリバイバル上映はそれぞれ別の企画です。
10月24日(金)からIMAXスクリーンでの上映が予定されているのが『もののけ姫』です。
本作は4Kデジタルリマスター版となっていて、当時よりもより高精細な映像とクリアなサウンドで『もののけ姫』を楽しめる期間限定の上映です。
実はこの『もののけ姫』の4Kデジタルリマスター上映自体は海外でも先行して行われていた企画で、今回日本でも待望の上映となりました。
『もののけ姫』のリバイバル上映は、2020年にコロナ禍での映画館への集客を促す企画で『千と千尋の神隠し』や『風の谷のナウシカ』などとともに大規模な上映が行われましたが、時期的に足を運べなかったという人もいるでしょう。これらのジブリ作品は日本では配信サービスなどでの視聴もできない状態なだけに、この機会に観たいという人も多いのではないでしょうか。
一方の『エヴァンゲリオン』シリーズのリバイバル上映はシリーズの30周年を記念した長期企画です。
“月1エヴァ”と題して、2025年10月から2026年2月まで、各月に1作品以上、それぞれ一週間ずつの期間限定で『エヴァンゲリオン』シリーズ6作品を全国の劇場で上映する企画です。10月には『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』と『新世紀エヴァンゲリオン Air/まごころを、君に』、11月からは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズを『序』、『破』、『Q』をひと月おきに上映し、来年2026年2月には完結作である『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を上映します。
◆1997年の再来か?“偶然にも”二度目の同時期公開!
この2つの企画が同時期の10月よりスタートを切るにあたって話題となっているのが、実は『もののけ姫』と『新世紀エヴァンゲリオン Air/まごころを、君に』は同じ1997年の夏の同時期に公開していたから。四半世紀近く前と同じように2作品が興行でぶつかるということに驚きや当時を懐かしむ声が上がっています。
10月からの「もののけ姫」の4K上映と「月1エヴァ」の上映時期が重なったのは、全くの偶然です。
因みに1997年初回上映の時期が重なったのも全くの偶然です。… https://t.co/1yoBVJxzNn— (株)カラー 2号機 (@khara_inc2) September 5, 2025
そういった声が上がったことを受けてか、上映時期が重なったことに関して株式会社カラーの公式X(旧Twitter)アカウントの一つである「(株)カラー 2号機」のアカウントでは、当時も今回の企画も時期が重なったのは偶然だと語られています。
『もののけ姫』の宮崎駿監督と『エヴァンゲリオン』シリーズの庵野秀明監督といえば『風の谷のナウシカ』のころから縁のある間柄ということで、因縁めいたものを感じてしまうところですが、海外先行で企画自体は先行していた『もののけ姫』と長期アニバーサリー企画の一部の『エヴァンゲリオン』では企画の出自からまったく別物なので、この2作が同時期に並んだのは偶然といえるでしょう。
だからこそ、余計に運命めいたものを感じてしまうところではありますが──。
◆リバイバル上映ラッシュ! 実はジブリやエヴァだけじゃない?
そもそも実はリバイバル上映企画はアニメーション映画だけでも『もののけ姫』や『エヴァンゲリオン』以外にも同時期に複数作品で実施が予定されています。
10月3日(金)、そして10月17日(金)からはそれぞれ二週間限定で『機動警察パトレイバー 劇場版』、『機動警察パトレイバー2 the Movie』の4K版(劇場・スクリーンによっては2K上映)の上映が行われる予定です。
10月31日(金)からは2週間限定で『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の4Kリマスター版が劇場公開30周年を記念して上映予定です。
さらに押井守監督作品が続いて、翌月の11月には天野喜孝氏がアートディレクションを担ったことでも知られ、カルト的な評価を誇る一作『天使のたまご』のリマスター版の上映が予定されています。
なぜこんなに立て続けにリバイバル上映が重なるのかには複合的な理由が考えられます。
秋は夏休みと年末年始の間となる映画館の閑散期にあたること。それぞれの作品が何らかのアニバーサリーイヤーを迎えていること。ソフト化などに伴い往年の作品のリマスター版が制作されたこと。そして去年行われた『海がきこえる』のリバイバル上映が人気を博し、今年は規模を拡大して上映する成功例などが生まれ“リバイバル上映”自体に波が来ていることなどが考えられます。
──今や配信サービスも充実してきて、作品自体を観ることは以前よりも手軽になりました。だからこそ観客も映画館も双方が“体験”として映画館で映画を観ることの意味を求め、イベント的に展開する方向が強くなってきています。
実際に劇場に足を運ぶ価値というものが変化してきているといえます。そういう意味でも今年の10月は“1997年の映画館にタイムスリップするような体験ができるイベント”といえるかもしれません。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像:『「もののけ姫」場面写真 © 1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND』