クリリンが「太陽拳」で目をくらませ、そのまま「気円斬」を放っていたら——フリーザは生き延びられなかったかもしれません。実際、気円斬はフリーザのしっぽを切断しており、技の威力は折り紙つきです。なぜこの2つが同時に使われなかったのか。そこには、あえて描かれなかったと思わずにはいられない事情があると考えられます。
気円斬と太陽拳の組み合わせをはじめ、『ジャンプ』の名作には「なぜ使わなかったのか」と首をかしげたくなるコンビ技が複数存在します。強力すぎてストーリーが成立しなくなるため、封じられたとしか思えない技の数々を振り返ります。
◆『ドラゴンボール』──「気円斬」×「太陽拳」
目をくらませている隙に、飛んだ円盤で真っ二つ——クリリンの持つ2つの技「太陽拳」と「気円斬」を組み合わせれば、ほぼ確実に敵を仕留められるはずでした。初めて見る相手であれば、まず避けることはできません。
フリーザ戦では、気円斬でしっぽを切断し、その後に太陽拳で目をくらませる場面が別々に描かれています。しかし、同じ相手に2つを同時に使うことはありませんでした。あのとき咄嗟に気円斬を放ってしまったクリリンが、切り替えて太陽拳を使うだけの余裕はなかったのかもしれません。
またこのコンビ技には明確な弱点もあります。気を察知できる相手には回避される可能性が高く、再生能力を持つ敵には効果が薄い。ドクター・ゲロや19号は気を読む能力を備えており、セルや魔人ブウは再生が可能です。人造人間17号・18号のように気を持たない相手であれば決まったかもしれませんが、作中ではそのシナリオには至りませんでした。
◆『ジョジョ』第5部──「パープル・ヘイズ」×「ゴールド・エクスペリエンス」
30秒で肉体を溶かすウイルスをまき散らし、その後に仲間だけを新たな器官を生成することで回復させる──フーゴのパープル・ヘイズとジョルノのゴールド・エクスペリエンスが同時に発動すれば、大半の敵は手の施しようがありません。
荒木飛呂彦先生自身もフーゴのスタンドを持て余していたようで、戦闘シーンはイルーゾォ戦の一度きりにとどまっています。結果、組織への反旗を翻したブチャラティたちと行動をともにすることを選ばず、フーゴは途中でパーティーを離脱しました。
死闘でもなく、能力が封じられたわけでもなく、精神的な葛藤によって戦線を離れる——こうした退場の形は異例であり、読者に強い印象を残しました。あのコンビが揃っていれば、物語の展開そのものが変わっていたかもしれません。
◆『ダイの大冒険』──「メドローア」×「アストロン」
アバンのアストロンで動きを封じ、その間にポップの極大消滅呪文メドローアを叩き込む。どんな敵も消し去れるこの師弟コンビの合わせ技は、大魔王バーンとの最終決戦を目前に師匠と弟子が再会していたにもかかわらず、ついに使われることはありませんでした。
アバンはかつてダイとポップにアストロンをかけており、敵に対しても同様に使えるはずです。アストロン中は魔法が使えないためマホカンタも機能しません。ただし、ダイがかつて内側から破ったように、バーンほどの実力者を長時間縛り付けるのは難しかったかもしれません。
久しぶりの再会、極限の戦況──その場の緊張の中で、師弟がこの反則コンビ技を思いつくことができなかったとしても、無理からぬことでしょう。
◆『HUNTER×HUNTER』──「窓を開く者」×「神の不在証明」
気配を完全に消した状態で、どこからでも奇襲できる——ノヴの「窓を開く者(スクリーム)」とメレオロンの「神の不在証明(パーフェクトプラン)」を合わせれば、相手に悟られることなく瞬時に仕留めることが可能です。蟻の王メルエムすら例外ではありません。
さらにノヴの「4次元マンション(ハイドアンドシーク)」が加わることで、完璧な奇襲拠点まで確保できます。しかし、護衛軍の圧倒的なオーラを前にノヴは精神的な限界を迎え、戦線から離脱しました。一瞬でやつれ、白髪になり、その後は脱毛にまで至ったことからも、受けたダメージの深刻さが分かります。
このコンビ技が復活すればバトルバランスが崩壊するのは明らかであり、ノヴが今後の戦いに戻ってくることは考えにくいかもしれません。
──一つの必殺技を生み出すだけでも、作者には膨大な設定と整合性の調整が求められます。それが2つ重なったとき、どんな相乗効果が生まれるかまで考慮するのは、想像するだけで気が遠くなるような作業です。
限られた時間と紙面でストーリーを紡ぐ漫画家も、刹那の判断が生死を左右する戦場のキャラクターも反則クラスの組み合わせに気づく余裕がなかったとしても、むしろそれが自然だったのかもしれません。
〈文/最上明夫〉
※サムネイル画像:Amazonより 『「ドラゴンボールZ G×materia THE KRILLIN クリリン」(ブランド:バンプレスト)』

