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※この記事にはアニメ・原作漫画『鬼滅の刃』のネタバレが含まれます。ご注意ください。

 TVアニメ『鬼滅の刃』のもっとも重要な3場面は、いずれも「誰も鬼を倒していない」シーンです。TVアニメ第1話・第22話・第26話──この3つの話数で視聴者が流した涙の理由を突き詰めると、この作品が本当に描こうとしていたものが見えてきます。

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◆鬼になっても消えなかった家族の絆──第1話、禰豆子が兄をかばった瞬間

 物語の起点となる第1話に、このアニメの核心が詰まっています。鬼化した禰豆子が、鬼殺隊の柱・冨岡義勇と炭治郎の間に割って入り、兄をかばうシーンです。

 炭治郎はこの時点で、禰豆子を含む家族全員を失う悲劇に見舞われ、さらに一度は禰豆子本人に襲われてもいます。それでも兄は妹を信じることをやめませんでした。

 そして禰豆子も、鬼の本能と飢餓状態という二重の苦しみを抱えながら、たった一人残った兄を守るために体を張ります。アニメ内でも解説されていましたが、このときの禰豆子は負傷しており、傷の回復のために空腹が極限まで高まっていました。鬼とは本能的に人を食おうとする存在です。それを意志の力で押さえ込んだということが、どれほど尋常でないことか。

 さらに注目したいのは、冨岡義勇の判断です。鬼を斬り続けてきた柱でありながら、「この鬼は他と違うかもしれない」と固定観念を外した柔軟さ。あの場に居合わせたのが別の柱だったなら、禰豆子はその場で命を落としていたかもしれません。

 炭治郎・禰豆子・冨岡義勇、三者の思いが絡み合ったこの場面こそ、『鬼滅の刃』という作品の入口と言えるでしょう。

◆腹を斬って詫びる──鱗滝の手紙が炭治郎と視聴者を同時に泣かせた理由(第22話)

 さまざまな活躍を見せてきた炭治郎でしたが、禰豆子が鬼であることが鬼殺隊に発覚してしまいます。隊律では、鬼を庇うことは厳禁。炭治郎と禰豆子は柱全員の前に引き出され、厳しい審問にさらされます。

 「人を食わないと断言できるか」「食ってしまったら誰が責任を取るのか」──反論の余地もない問い詰めに、炭治郎がなす術をなくしかけたとき、鱗滝左近次からの手紙が読み上げられます。

 その末文には、「禰豆子が人に襲いかかった場合は、竈門炭治郎、および鱗滝左近次、冨岡義勇が腹を斬ってお詫びいたします」とありました。

 読み終えたあと、炭治郎は言葉を発することなく涙を流します。その涙につられるように、画面の前で泣いていた視聴者も少なくなかったはずです。

 このシーンで深く考えさせられるのは、他人の命に自分の命を賭けた鱗滝と冨岡、その「信頼」の重さです。鬼の最前線を何年も生きてきた二人が、なぜそこまでできたのか。その答えは、炭治郎と禰豆子の家族愛が二人の心を動かしたからにほかなりません。

 思いが思いを動かし、やがて産屋敷耀哉を経由して全柱が折れる。思いの連鎖が物語を前へ押し進めた、記念碑的な場面です。

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◆「裏が出ても、表が出るまで投げ続けようと思っていたから」――炭治郎がカナヲの心を解かした言葉(第26話)

 療養と修行を終えた炭治郎が出発する際、心を閉ざし続けていたカナヲへ声をかけるシーンです。指示がなければコインで物事を決めてきたカナヲに、炭治郎はこう言いました。「きっとカナヲは、心の声が小さいんだろうな」。

 そう言いながら、「これから自分の心の声をよく聞くこと」に運命を賭けてコインを投げます。表が出て、炭治郎は勝負に勝ちます。

「なんで表を出せたの?」と不思議そうなカナヲに、炭治郎はこう返しました。「裏が出ても、表が出るまで何度でも投げ続けようと思っていたから」。

 コインにすべてをゆだねてきたカナヲにとって、この答えは想像の外にあったはずです。自分の意志で出したい目が出るまで振り続ける──そんな生き方があることを、炭治郎は言葉ではなく行動で示しました。

 「心がないわけじゃない、ただ小さいだけ」という受け取り方も秀逸です。正論や説教ではなく、カナヲがこれまで拠り所にしてきたコインという形式をあえて借りながら、そっと心の扉をノックするやり方は、炭治郎という人物の本質をよく表しています。

 大きな感動が一瞬で訪れるのではなく、静かな気遣いの積み重ねの先に心が動く。そんな繊細な感情の揺れをていねいに描いたシーンです。

 

 ──取り上げた3つの場面に共通しているのは、「極限の状況下で、それでも誰かを信じた人間の姿」です。鬼と化した妹、命がけの手紙、コインに込めた問いかけ──いずれも派手な演出よりも、その奥にある「思い」こそが視聴者の心に刺さります。

 『鬼滅の刃』が長く語り継がれる理由は、刃の切れ味だけではありません。人と人の間に生まれる信頼と愛情の描き方が、誰かと「あのシーン、よかったよね」と話したくなる余韻を残すのだといえます。

〈文/士隠カンナ〉

《士隠カンナ》

1990年〜2000年代に放送されたアニメに中学・高校の頃にどっぷりとハマり、その後フリー編集・ライターに。主にアニメ・漫画のムック本のブックライターとして活動中。最近のマイブームはもっぱら『ちいかわ』。

 

※禰豆子の「禰」は「ネ+爾」が正しい表記となります。


※サムネイル画像:アニメ「鬼滅の刃」公式ポータルサイトより 『「TVアニメ「鬼滅の刃」竈門炭治郎 立志編」 第1話 場面写真 (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable』

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