作品の垣根を越えた“まさかの共演”は、見つけた瞬間に思わず二度見したくなります。『シティーハンター』に『YAWARA!』を思わせる少女が現れたり、『ルパン三世』にオスカルが登場したりと、アニメには意外なつながりが残されています。声優やスタッフ、作者同士の関係までたどると、ただの小ネタでは終わらない面白さが見えてきます。
◆冴羽獠が一本背負い!? 『シティーハンター』に現れた柔道少女
一流のスイーパーである冴羽獠が、まさかの一本背負いを食らう場面があります。舞台はアニメ『シティーハンター’91』第10話「今夜だけこの愛を…都会のシンデレラ物語」です。
この回では、槇村香の買い物に付き合っていた獠が、待ちくたびれていつものようにナンパを開始します。そこで声をかけたのが、黒髪のボブヘアに赤いリボンをつけた少女・裕子でした。獠が肩に手を置いた瞬間、裕子は「もうしつこいんだから!」と怒り、鮮やかな一本背負いで獠を地面に叩きつけます。
名前は裕子ですが、髪型や雰囲気、得意技の一本背負いから、浦沢直樹先生の『YAWARA!』の主人公・猪熊柔を思わせるキャラクターです。さらに、裕子を演じたのは猪熊柔役でも知られる皆口裕子さんでした。
加えて、『シティーハンター』と『YAWARA!』はいずれも諏訪道彦さんがプロデューサー、浦上靖夫さんが音響監督を務めており、制作面でも接点があります。正式な共演とは言い切れないものの、両作品を知るファンにとっては、気づくとうれしい“隠れコラボ”のような場面だったといえるでしょう。
◆『ルパン三世』にオスカル登場? 100回記念で実現したベルサイユ回
アニメ『ルパン三世 2nd series』第101話「ベルサイユは愛に燃えた」には、『ベルサイユのばら』のオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェを思わせる人物が登場します。
ルパンたちは、幻の秘宝“マリー・アントワネットの宝冠”にまつわる情報を得てベルサイユへ向かいます。そこで現れたのが、貴族社会の復活を狙う「黒百合党」の幹部・オスカルでした。
彼女の目的は、宝冠に飾られた青真珠の中に隠された“人間を石にする秘薬”です。最終的にはルパンたちや黒百合党を裏切り、先に石像となっていた恋人アンドレ・グランディエに寄り添いながら、自らも石化していくという印象的な結末を迎えます。
この回は『ルパン三世』アニメ100回記念として募集された視聴者アイデアがきっかけだったとされています。次元大介の「ベルサイユのばら族なんて気持ち悪いぜ」というセリフや、オスカルの男装に気づかずルパンが惚れてしまう場面など、通常回では見られない遊び心が詰まった特別なエピソードでした。
◆『銀魂』と『SKET DANCE』が直接対決 “なんでも屋”同士のジャンプ共演
『週刊少年ジャンプ』作品同士のコラボとして印象深いのが、アニメ『銀魂』第227話「コラボにはエイリ◯ンVSプ×デターがあるのも覚えとけ」です。ここでは、同じジャンプ作品である『SKET DANCE』との共演が実現しました。
万事屋の坂田銀時、志村新八、神楽の前に、『SKET DANCE』からボッスン、ヒメコ、スイッチが登場します。どちらも依頼を受けて人助けをする“なんでも屋”的な立ち位置であり、その共通点をもとに、キャラクターや声優のかぶりネタまで交えたにぎやかな掛け合いが展開されました。
このコラボが特別だったのは、作品同士の関係性にも理由があります。『SKET DANCE』の作者・篠原健太さんは、『銀魂』の作者・空知英秋さんのアシスタントを務めていた人物です。
さらに『SKET DANCE』第26話「SPIRIT DANCE」では、逆に万事屋一行が登場しています。作者同士の師弟関係から生まれた相互コラボとして、ジャンプファンにはたまらない共演だったのではないでしょうか。
◆アトム対星飛雄馬という異色勝負 1969年に実現したお宝コラボ
『鉄腕アトム』と『巨人の星』という、ジャンルのまったく異なる名作同士が共演したこともあります。実現したのは、1969年9月放送のバラエティ番組『前田武彦の天下のライバル』内での企画でした。
番組では、さまざまなジャンルの“ライバル”を対決させるという趣旨のもと、星飛雄馬とアトムが顔を合わせます。星一徹、花形満、伴宙太、お茶の水博士、ウランといった両作品のキャラクターが見守る中、マラソン対決や野球対決が行われました。
特に、投手・星飛雄馬、打者・アトムという組み合わせは、今見てもかなり異色です。スポ根野球アニメとロボットアニメの主人公が真剣勝負をする構図は、当時としても非常に珍しいものだったでしょう。
現在ではクロスオーバー作品も少なくありませんが、1960年代にこうした企画が実現していたことを考えると、まさに貴重なお宝映像といえます。作品の枠を越えた共演は、昔から視聴者の想像力を刺激してきたのかもしれません。
──アニメのクロスオーバーは、ただキャラクターを並べるだけではありません。声優やスタッフのつながり、記念企画、作者同士の関係、番組ならではの遊び心が重なることで、作品の外側にある意外な縁まで見えてきます。
『シティーハンター』の獠を投げ飛ばした柔道少女も、『ルパン三世』に現れたオスカルも、ジャンプ作品同士の共演も、アトムと星飛雄馬の対決も、知ってから見返すとまた違った楽しさがあります。こうした“まさかの共演”は、アニメ史の中に残された小さな驚きであり、ファンが語り継ぎたくなる魅力の一つといえるでしょう。
〈文/秋山緑〉
《秋山緑》
アニメ・漫画・ゲームを中心に、エンタメ領域の記事制作に携わるライター。話題作から長年愛される名作まで幅広く扱い、作品の魅力やキャラクターの関係性、印象的なシーンを読者目線でわかりやすく伝える記事制作を得意とする。アニギャラ☆REWでは、アニメ・漫画作品のコラムや解説記事を担当している。
※サムネイル画像:Amazonより 『DVD「劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>(通常版)」(販売元:アニプレックス)』


