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本記事には複数の作品のネタバレが含まれます。ご注意ください。

 悪役に見えた行動が、実は誰かを守るための「汚れ役」だった。そんな展開は、作品を見返したときにキャラクターの印象を大きく変えます。次の3作品の各キャラはそれぞれ大切な人や世界のために悪名を引き受けた人物でした。

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◆イタチはなぜ一族を背負ったのか 弟と里を守るために選んだ孤独な任務

 『NARUTO -ナルト-』のうちはイタチは、弟のサスケから長く憎まれ続けた人物です。サスケ以外のうちは一族を手にかけたことで、彼は作中でも特に重い罪を背負った存在として描かれていました。

 しかし物語が進むにつれ、その事件は単純な裏切りではなかったことが明らかになります。暁の一員であるトビは、イタチが木ノ葉隠れの里から任務を受け、うちは一族によるクーデターを止めるために動いていたと語りました。里を守るためとはいえ、その選択はあまりにも過酷なものでした。

 さらにイタチは、サスケに自分を討たせることで弟を英雄にしようとしていました。万華鏡写輪眼を得るためだと語っていた兄弟の戦いも、実際にはサスケの未来を守るための計画だったと見ることができます。

 第四次忍界大戦で穢土転生によって再び現れたあとも、イタチはナルトに火影の資格を説き、サスケには「おれはお前をずっと愛している」と本心を伝えました。悪役として恐れられていた人物の言葉だからこそ、その優しさがより強く残ります。

 世界中のファン投票企画「NARUTO TOP99」(投票期間:2022年12月18日〜2023年1月31日)では、イタチは全世界で2位に選ばれました。国別ランキングでも各国でトップ5入りするほどの人気を見せており、彼の自己犠牲が多くの読者の心に残っていることが分かります。

◆ルルーシュはなぜ“悪”を演じ切ったのか 世界一優しいウソつきの結末

 『コードギアス 反逆のルルーシュ』のルルーシュは、物語の終盤で自ら世界の憎しみを集める道を選びました。妹のナナリーが生きられる優しい世界を作るため、彼は祖国ブリタニア帝国に反逆し、やがて皇帝の座にまで上り詰めます。

 ルルーシュがたびたび口にした「撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ」という言葉は、最終話で大きな意味を持ちます。彼が用意した「ゼロレクイエム」は、自分自身を憎しみの象徴にしたうえで、ゼロとなったスザクに討たせる計画でした。

 世界の敵として倒されることで、憎しみの連鎖を断ち切る。ルルーシュはそのために、仲間や民衆からの理解さえ捨てました。計画の真意を知る者が限られていたからこそ、彼の死は作中世界にとっては「暴君の最期」として映ります。

 しかし視聴者にとっては、その結末こそがルルーシュの愛情と覚悟を示す場面でした。最終話で計画の全容が見えたことで、彼はSNSなどでファンから「世界一優しいウソつき」と呼ばれるようになります。悪役として幕を下ろした姿の裏に、誰よりも優しい願いが隠れていたのです。

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◆福地桜痴はなぜテロリストになったのか 未来の大戦を止めるための選択

 『文豪ストレイドッグス』の福地桜痴も、ただの悪役とは言い切れない人物です。軍警最強部隊「猟犬」の隊長でありながら、彼は国家消滅を掲げるテロ組織「天人五衰」のボスとして暗躍していました。

 その目的が明かされたのは、TVアニメ第5期の最終話です。福地は、36年後に世界大戦が起こり、2億1000万人が犠牲になるという未来からの暗号を受け取っていました。彼は戦争の原因を国家という枠組みに見出し、すべての軍を従える人類軍を作ることで、未来の大戦を止めようとしたのです。

 そのために福地は、人類軍を手に入れたうえで、自分を福沢諭吉に討たせ、彼を総帥にしようとしました。ところが福沢は、幼い頃から親しい人を守れる強さを願ってきた人物です。福地はその心も見抜いており、最終的には部下の燁子に自分を討たせ、その事実を伏せる形で計画を進めようとしました。

 彼の行動は許されるものではありません。それでも、自分の命と名誉を犠牲にして未来の戦争を防ごうとした姿は、多くの視聴者に強い印象を残しました。

 

 ──イタチ、ルルーシュ、福地に共通しているのは、正しさだけでは救えないものを前に、自分が悪名を背負う道を選んだことです。彼らの行動は決して軽く肯定できるものではありませんが、その裏にあった愛情や覚悟を知ると、物語の見え方は大きく変わります。

 悪役として恐れられ、憎まれ、時には討たれることまで受け入れる。そんな「優しすぎるウソ」をついたキャラクターたちだからこそ、物語が終わったあとも、読者や視聴者の記憶に残り続けるのでしょう。

〈文/最上明夫 編集/相模玲司〉

《最上明夫》

アニメ・漫画・特撮・映画など、幅広いエンタメ作品に関心を持つライター。作品内の設定やキャラクター描写、物語構成を丁寧に読み解き、読者が作品をより深く楽しめる記事制作を心がけている。アニギャラ☆REWでは、アニメ・漫画を中心とした考察・解説コラムを担当している。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「NARUTO―ナルト― イタチ真伝 暗夜篇」(出版社:集英社)』

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