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※本記事には複数の作品のネタバレが含まれます。ご注意ください。

 昭和を知らない世代にも、あえて古い画面や歌謡曲の気配が新鮮に映ることがあります。『アストロノオト』のオープニングテーマであり、降幡愛さんの「ホホエミノオト」のMVに登場する電気コンロや、その他作品に登場する音楽演出には、ただの懐古ではない作り手の“好き”が詰まっています。昭和歌謡やアイドル文化への目配せをたどると、作品の見え方も少し変わってくるかもしれません。

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◆『アストロノオト』はなぜ昭和の空気が濃いのか MVに詰まった歌番組と料理番組の記憶

 2024年に放送された『アストロノオト』は、作品全体にどこか懐かしい空気が流れるアニメです。その雰囲気を強く伝えているのが、降幡愛さんが歌うオープニングテーマ「ホホエミノオト」のMVでしょう。

 このMVには、昭和の歌番組や料理番組を思わせる演出がふんだんに盛り込まれています。画面サイズ、時刻表示、テロップの字体、料理番組らしい段取りなど、細かな部分まで“昔のテレビ”の手触りが再現されており、当時を知る人なら思わず反応してしまうはずです。

 中でも目を引くのが、料理シーンに登場するコンロです。現代のキッチンで見慣れたガスコンロやIHではなく、電気コンロが置かれていることで、映像全体のレトロ感がさらに濃くなっています。派手な小道具ではありませんが、こうした生活感のある道具こそ、時代の匂いを強く残します。

 さらに「ホホエミノオト」の作詞は、『ドラゴンボールZ』の「CHA-LA HEAD-CHA-LA」や、シブがき隊の「Zokkon 命-Love-」などを手がけた森雪之丞さんです。昭和から平成にかけて数々のアイドルソング、アニメソングに関わってきた人物の名前まで含めて見ると、『アストロノオト』のレトロ演出は単なる雰囲気づくりではなく、音楽面からも支えられていることが分かります。

◆『かんなぎ』OPはなぜ80年代アイドル風なのか 中山美穂さん「派手!!!」への目配せ

 2008年に放送された『かんなぎ』のオープニングテーマ「motto☆派手にね!」にも、昭和末期から80年代アイドル文化への強い目配せが感じられます。タイトルや楽曲の方向性から、中山美穂さんの「「派手!!!」」を意識したものと考えられます。

 「「派手!!!」」は、中山美穂さんが中山美穂役で出演したTBSドラマ『ママはアイドル!』の主題歌です。歌詞の内容は、派手すぎて悪目立ちすることをたしなめつつ、ひそやかに愛を育てるような雰囲気を持っていました。

 一方、「motto☆派手にね!」は、内気で地味になりがちな人へ、もっと前に出てアプローチしていくことを促すような楽曲です。元ネタを思わせるタイトルでありながら、歌詞の方向性は対照的になっている点が面白いところでしょう。

 曲調にも80年代アイドルソングらしさがあり、山本寛監督が自ら作詞していることからも、かなり意識的に作り込まれた楽曲だと考えられます。オープニング映像でも、アイドルを取り巻く芸能界の空気が描かれており、楽曲と映像がセットで“アイドル文化へのオマージュ”になっています。

 山本監督はのちに『Wake Up, Girls!』でアイドルアニメを手がけ、川島海荷さん主演の映画『私の優しくない先輩』も監督しています。そうした歩みを重ねて見ると、『かんなぎ』のオープニングに込められたアイドルへのこだわりも、よりはっきり見えてきます。

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◆『夏のあらし!』はどこまで懐メロづくしなのか OPとサブタイトルに隠れた昭和歌謡愛

 昭和歌謡への愛がもっとも濃く出ている作品の一つが、2009年に放送された『夏のあらし!』かもしれません。オープニングテーマ「あたしだけにかけて」は、全13話の間に毎回サビ以外の歌詞が変わり、13番まで存在するという珍しい構成の楽曲です。

 その変化する歌詞には、昭和の歌謡曲や懐メロを思い出させる言葉が散りばめられています。歌っている面影ラッキーホール自体が、昭和歌謡のパロディソングを得意とするバンドであることもあり、たんなるネタではなく、楽曲としての完成度も高いものになっています。

 映像面でも、実在するレコードジャケットのポーズをキャラクターたちが次々に再現する構成になっています。元ネタをすべて拾い切るのが難しいほど多くの構図が登場しており、昭和歌謡やレコード文化を知る人ほど、画面を見返したくなる作りです。

 また、『夏のあらし!』はタイムリープ要素を持つ作品でもあります。そのため、各回のサブタイトルには懐メロの曲名が使われ、挿入歌として山本リンダさんの「どうにもとまらない」、チューリップの「心の旅」、山口百恵さんの「プレイバック Part2」などを出演声優が歌う場面もありました。

 物語、音楽、映像、サブタイトルまで、昭和を思わせる仕掛けが作品のあちこちに置かれているのが『夏のあらし!』の特徴です。懐かしさを前面に出しながらも、タイムリープ作品としての構造と自然につながっている点が、ほかのレトロ演出とは少し違う魅力といえるでしょう。

 

 ──昭和・平成の流行は、今の10代や20代にとっては新鮮なデザインや音楽として受け取られることがあります。一方で、かつて歌番組やアイドルソング、歌謡曲に心を動かされた人たちが作り手になり、その記憶をアニメの中に忍ばせているとも考えられます。

 電気コンロ、80年代アイドル風の楽曲、懐メロのサブタイトル。細かな演出をたどると、昭和レトロは単なる古さではなく、作り手の原風景を映す手がかりにも見えてきます。数十年後には、令和の文化もまた、未来のアニメで懐かしいオマージュとして描かれているのかもしれません。

〈文/秋山緑〉

《秋山緑》

アニメ・漫画・ゲームを中心に、エンタメ領域の記事制作に携わるライター。話題作から長年愛される名作まで幅広く扱い、作品の魅力やキャラクターの関係性、印象的なシーンを読者目線でわかりやすく伝える記事制作を得意とする。アニギャラ☆REWでは、アニメ・漫画作品のコラムや解説記事を担当している。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「ホホエミノオト (アニメ盤)」(レーベル:SMM itaku (music))』

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