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本記事には複数の作品のネタバレが含まれます。ご注意ください。

本記事は一部ライター個人の考察・見解に基づくものが含まれます。公式の設定や見解とは異なる場合があります。

 今見返すと、「こんなバージョンもあったのか」と驚かされる旧版アニメがあります。OVA版『ジョジョの奇妙な冒険』や1999年版『HUNTER×HUNTER』には、現在よく知られているアニメ版とは違う演出や空気感が残されていました。作品ごとの違いをたどると、当時ならではの魅力も見えてきます。

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◆OVA版『ジョジョ』はなぜ“幻”になったのか 承太郎vs.DIOに残る独自演出

 『ジョジョの奇妙な冒険』のアニメといえば、現在は2013年から放送されたTVシリーズを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、それ以前にも、原作第3部『スターダストクルセイダース』を描いたOVA版が存在しました。1993年と2000年に、現在のTVシリーズとは異なるスタッフによって制作された作品です。

 このOVA版は、原作の雰囲気を大切にしつつ、映像作品としての見せ方に独自の工夫が加えられていました。特に有名なのが、承太郎とDIOの最終決戦です。原作やTV版で印象的な「ロードローラー」の場面は、OVA版では炎を噴き出すタンクローリーに変更されています。時が止まる演出に、より大きな臨場感を出すねらいがあったと見られます。

 TV版と比べると変更点は多く、ファンの間でも好みは分かれます。それでも、重厚な演出や原作の空気感を評価し、「OVA版が好き」という声も根強く残っています。

◆1999年版『HUNTER×HUNTER』は何が違ったのか キルアの場面に残る原作の空気

 『HUNTER×HUNTER』のアニメ版といえば、2011年に放送された日本テレビ版を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、1999年にもフジテレビ系列でTVアニメ化されています。1999年版はヨークシンシティ編の途中まで放送され、その後はOVAという形でグリードアイランド編まで描かれました。

 1999年版が今でも語られる理由の一つが、原作初期のダークな空気感です。たとえば、2011年版では規制の関係で直接的な描写が抑えられていたキルアの冷徹な場面も、1999年版ではより原作に近い形で表現されています。こうした描写から、「原作の暗さや緊張感を忠実に再現していた」と評価するファンも少なくありません。

 ただし、1999年版は原作そのままの構成だけではありません。2011年版が比較的原作に沿って進むのに対し、1999年版には「軍艦島編」というアニメオリジナルのストーリーも存在します。作品の空気を保ちながら、当時のTVアニメらしい膨らませ方もされていたのです。

 1999年版はVHSやDVDが発売されているものの、現在はサブスク配信で気軽に見られる状況ではありません。そのため、2011年版から入ったファンにとっては触れにくい作品になっています。だからこそ、いま振り返ると“もう一つの『HUNTER×HUNTER』”として気になる存在です。

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◆東映版『遊☆戯☆王』はなぜ別物に見えるのか 緑髪の海馬と“闇のゲーム”中心の初期路線

 TVアニメ『遊☆戯☆王』といえば、スタジオぎゃろっぷ制作の『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』が有名です。カードゲーム人気を決定づけた作品でもあり、海馬瀬人や武藤遊戯のイメージも、このシリーズで強く定着しました。

 しかし、それ以前の1998年には、東映アニメーション制作のTVアニメ『遊☆戯☆王』が放送されています。東映版は、原作初期に多かったカードゲーム以外の「闇のゲーム」エピソードを中心にアニメ化した作品でした。いま広く知られるデュエル中心の『遊☆戯☆王』とは、かなり違う空気を持っています。

 中でも印象的なのが海馬瀬人です。『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』では茶色系の髪色で描かれていますが、東映版の海馬は白ラン姿で、髪の毛は緑色。その特徴的な外見から、のちにファンの間では「キャベツ」と呼ばれるようになりました。このデザインは、後の『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』に登場するオリジナルキャラクター・海馬乃亜にも受け継がれています。

 東映版にはほかにも、原作では1話限りに近かった野坂ミホがレギュラーキャラ化していたり、城之内と本田が友達になるきっかけが描かれたりと、独自要素が多くあります。カードゲームもTVアニメ放送時にバンダイから発売されており、後のコナミ版カードゲームとは異なる流れを持っていました。

 また、原作者の高橋和希先生は文庫版第5巻の巻末で東映版について触れており、その発言からは作品に悪い印象を持っていなかったことがうかがえます。現在は配信などで視聴しにくく、当時発売されたVHSを探すしかない状況に近いため、知名度の面では後発シリーズの影に隠れてしまった旧版といえるでしょう。

◆日テレ版『ドラえもん』は本当に“おじさん声”だったのか 現在のイメージと違う初期設定

 アニメ『ドラえもん』といえば、1979年から始まったシンエイ動画版の印象が圧倒的です。大山のぶ代さん、そして水田わさびさんの声で親しまれてきたため、ドラえもんにはマスコット的で親しみやすい声のイメージがあります。

 しかし、実は1973年に日本テレビ動画が制作したアニメ版『ドラえもん』が存在しました。この日テレ版の前半でドラえもんを演じたのは、赤塚不二夫氏原作のアニメにも多く出演していた富田耕生さんです。現在のドラえもん像から考えると、かなり意外に感じる人もいるでしょう。

 富田さんが起用された背景には、当時のスタッフがドラえもんを「世話好きのおじさん」のような存在として捉えていたことがあったといわれています。ところが、物語が進むにつれて、ドラえもんを「のび太の友人」に近い存在へ変えていく方針になり、後半では野沢雅子さんへ交代したと言い伝えられています。

 また、シンエイ版でスネ夫を演じた肝付兼太さんが、日テレ版ではジャイアンを演じていた点も興味深いところです。同じ『ドラえもん』でありながら、声優の配置やキャラクターの捉え方が現在とはかなり異なっていました。

 日テレ版が広く知られにくくなった理由としては、制作会社の倒産によって著作権の所在が不明瞭になったことや、フィルムの大半が失われたことが大きいとされています。現在の『ドラえもん』とは別物のように見える旧版ですが、作品のイメージが固まる前の試行錯誤を感じられる貴重な存在でもあります。

 

 ──同じ原作から生まれたアニメでも、制作時期やスタッフ、放送環境が変われば、作品の印象は大きく変わります。OVA版『ジョジョ』の独自演出、1999年版『HUNTER×HUNTER』の重い空気、東映版『遊☆戯☆王』の初期路線、日テレ版『ドラえもん』の声やキャラクター像は、どれも後発の有名版だけでは見えてこない魅力です。

 いま広く知られているアニメの姿は、長い時間をかけて定着したものでもあります。だからこそ、旧版をたどると「この作品にはこんな可能性もあったのか」と見え方が変わります。動画配信が当たり前になった時代だからこそ、こうした“もう一つのアニメ史”にも改めて光が当たる日が来るのかもしれません。

〈文/最上明夫 編集/相模玲司〉

《最上明夫》

アニメ・漫画・特撮・映画など、幅広いエンタメ作品に関心を持つライター。作品内の設定やキャラクター描写、物語構成を丁寧に読み解き、読者が作品をより深く楽しめる記事制作を心がけている。アニギャラ☆REWでは、アニメ・漫画を中心とした考察・解説コラムを担当している。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「ジョジョの奇妙な冒険」第28巻(出版社:集英社)』

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