どのようなことがあったとしてもみんなが思い付かないような考えや、自分で自分の機嫌をうまく取ることができるハチワレは、普段から笑顔を見せてくれることが多いのです。そのため、いつも一緒に過ごすことが多いちいかわが深く悩んでいると「一緒だから大丈夫だよ」などと、相手が求めている言葉に気づいて自然と伝えられる心優しい子。
そんな自分よりも相手を一番に想うハチワレはいつも笑顔を届けてくれますが、あたたかくて強い想いを抱いているからこそ時に、あふれる想いに思わず涙してしまうシーンが何度もありました。
普段からハチワレは自分の感情を吐き出すことをしないため、抑えられずに号泣する姿に釣られて涙してしまったファンもいたハズ。
既にアニメで放送された回はもちろん、まだアニメでは放送されていない原作ファンだけが知っている、ハチワレの涙があふれたエピソードを見てみましょう。
◆孤独で涙した討伐中の落とし穴
討伐中の不注意で大きな穴に落ちてしまったハチワレは「自分で……なんとかするッ」「絶対……負けない……」と呟きながら一人でどうにかしようと崖を登ろうとしますが、うまく登れず心が折れてしまいました。
助けを求めてもハチワレの声は誰の耳にも届かず、悪天候で雨に濡れてしまっている状況であったり、先の見えない不安や孤独・恐怖心に気持ちが落ちてしまいます。どんなときも前向きに考えられるハチワレは雨にあたりながらも「雨が止んだらもっかい登るぞッ!」といって自分自身に言葉をかけるものの、あまりの不安で孤独さに思わず「喜びがない……」と涙が流れてしまったのでした。
そんな不安と孤独に戦っている中、急に崖の上から顔をのぞかせたちいかわに「なッ……なんでいるの!?」と、ハチワレは立ち上がってしまうほどびっくりします。これまで感じていた孤独や不安を消し去るかのように予想もしていなかったちいかわの登場に驚きつつ、草むしり中に迷子になってしまったちいかわの説明を聞くハチワレ。
すると、ハチワレの状況を見て救いたい想いから、ちいかわは穴に降りようとします。ですが「ふたりで落ちたら登れなくなっちゃうよッ!」というハチワレの言葉で思い留まると、何かを思い付いたちいかわは突然にもハチワレの前から姿を消してしまうのです。
なかなか戻ってこないちいかわに再び不安を感じていると……ハチワレを救うためにツタを手に戻ってきてくれたのでした。いつもはハチワレがちいかわを守る側だったこともあり、ちいかわが自分のために考えてくれたことに嬉しさと驚きを見せてくれたハチワレ。
ちいかわが持ってきてくれたツタでハチワレが登っていると、あることが気になったちいかわは、先ほどまでハチワレがいた穴に迷うことなく降りるのでした。以前からハチワレが大切にしていたことを知っていたちいかわだからこそ「さすまた」を置いていくことができず、ハチワレが諦めようとしても置いていくことはできなかったのでしょう。
地上に登ることを優先させなければいけないため、大切であったとしても持っていくことはハチワレも言えなかったのかもしれません。そんなハチワレが心の中に抱く想いを言葉にせずとも察して行動してくれたちいかわに、これまでのハチワレからは想像できないようなたくさんの涙を流してしまいます。
いつもは助けることを意識していたハチワレだからこそ、想像していなかったちいかわの行動に互いに想い合っている友情を再確認し、嬉しさゆえに涙してしまったのでしょう。
◆ハチワレだけが受かった草むしり検定
ちいかわが草むしり検定の勉強をしていることを知ると、ちいかわを驚かせようとハチワレは秘密で勉強を始めます。なかなか覚えられないと気持ちをこぼしてしまうものの、ちいかわと一緒に合格することを想像して頑張るハチワレ。
試験当日に緊張して会場に入れずに立ち止まっているちいかわでしたが、ハチワレが声をかけるとちいかわは驚いてしまいます。戸惑いながらちいかわの手を引くハチワレは「実はね、勉強してたんだッ!」と教えると、一人で緊張していたこともあり安心感からちいかわは涙を見せてくれました。
一緒に合格することを想像していたハチワレでしたが……ハチワレ一人だけが受かってしまったのでした。ですが、ちいかわがいつものようにつらく悲しい気持ちを吐き出してくれたり、たくさん涙を流して泣いてくれないため、どんな言葉をかけてあげればいいのか分からなくなってしまっていたハチワレ。
ハチワレは自分のことよりも誰かの想いに寄り添うことが多いからこそ、何も言ってくれないちいかわにどのように寄り添えばいいのか、分からなくなってしまったのかもしれません。そのため、ちいかわの悲しい想いに共感しては心に引っかかりを抱いて「一人だけ喜べない……」と、約束をしていた郎に誘うことができなかったり合格したものの喜べなかったのです。
ハチワレはお家に帰って一人で過ごしていても、試験に合格したことよりも頭の中はちいかわのことでいっぱい。嬉しいはずの1日が「同じ気持ちじゃないとき……どうしたらいいんだろ……」と、いつも笑顔のハチワレからは想像できないような心配と不安やさまざまなネガティブな想いが感じられました。
ですが、翌日ちいかわからハチワレに似た形のものを合格のお祝いとしてプレゼントされると、昨日とは違って驚きながらもかわいい笑顔を見せてくれました。ちいかわにお礼を伝えながらも「ご……」といって、ハチワレは謝罪の言葉を伝えようします。ハチワレの中ではちいかわのマネをして後から勉強を始めたこともあり、自分だけが受かってしまったことに罪悪感を感じていたのかもしれません。
そのため、試験に落ちてつらいはずなのにハチワレのためにお祝いを考えてくれたことやちいかわの気遣いと優しさを感じると、嬉しさと申し訳なさから思わず涙してしまうハチワレ。
普段から自分のことよりも相手の想いを優先してしまうハチワレだからこそ、特にマイナスの感情に共感してしまっては不安と心配で怖かったのかもしれません。ですが、ちいかわから向けられる優しさと驚きから涙してしまうものの、改めて2人の気持ちがつながっていることを実感したはずです。
◆大切にしていた宝物を無くしたハチワレ
草むしり検定のお祝いでちいかわからもらった青いリボン。試験に落ちたちいかわに寄り添えなかったハチワレの想いであったり、ちいかわに謝ろうとしていたハチワレへの気遣いであったりたくさんの想いが込められています。
そんな青いリボンはいつしか、ハチワレの宝物になっていたのです。そのため、偶然にも鎧さんたちがお家にきたときには「大事な……思い出のリボンですッ」と照れながら話したり、ちいかわにも「褒められちゃったッ」と嬉しそうに報告していました。自分のことを多く話さないハチワレが「実はね……」と、話してしまうほどハチワレにとって宝物となり、あまりの嬉しさゆえに「ほめられリボン」と名前をつけてしまうのです。
ですが、ある日それほどまでに大切にしていた青い褒められリボンを、ハチワレはなくしてしまったのでした……。
小鳥の鳴き声が聞こえる朝早くからハチワレは「ほめら〜れリボンッ……」と、口ずさみながらお家の掃除をしたり青いリボンを結んでいる花瓶に水の入れ替えをします。そのとき、大切な青いリボンが濡れてしまわないように白い花瓶から解き、ダンボールのテーブルの上に青いリボンを置いてそばを離れてしまいます。その隙に青いリボンを小鳥にねらわれてしまったのです……。
花瓶を手にして戻ってきたハチワレは「ココに置いたよね……」と、家中のいろんなところを探したものの、青いリボンを見つけられませんでした。自分の想いよりも相手を優先する優しいハチワレだからこそ、ちいかわの気持ちも込められていた青いリボンを無くしてしまったことは「なかったこと」になってしまうと思ったのかもしれません。
ですが、正直にちいかわに伝えようとしますが、大切にしていたからこそ悲しみや罪悪感であったり申し訳なさなど、当然ネガティブな感情を抱いてしまいます。勇気を出して言葉に詰まり涙を流しながら「……あのさッ」と、一生懸命ちいかわに伝えるハチワレ。
いつも笑顔のハチワレからは想像できないようなたくさんの涙に、ちいかわもびっくりしてしまうと「思い出があるよッ!」と、ハチワレが元気になれるように慰めてくれたのでした。
草むしり検定に落ちたちいかわの気持ちに寄り添いたくてもうまく寄り添えず「同じ気持ちじゃないとき、どうすればいいんだろ……」と、自分の合格よりもちいかわのことを心配していた中、合格祝いでもらった青いリボンだったのです。そのため、ハチワレが初めて号泣する姿からとても大切にしていたことが感じられ、改めてちいかわのことをどれほどら大事に想っているのかを再確認できたのではないでしょうか。
──いつも周りをよく見て誰かを気遣ったり、誰かの想いに寄り添ったりすることが多いハチワレだからこそ「しっかりしなきゃッ」と、心の中で強く思っているのでしょう。そのため、小さなことであったとしても無理にでも自分で「頑張るぞッ」といって気持ちを切り替えられるため、つらいことがあったとしてもあまり涙を流すことがありません。
ですが、強く振る舞っているハチワレが3つのようにたくさん涙を流してしまうことは自分の気持ちを大切にできていることであり、ちいかわの想いもくんでくれている証拠。また、いつもハチワレが涙を流すときには必ずちいかわがそばにいるため、ハチワレだけではなくちいかわもお互いが大切に思い合っていると強く感じられたはずです。
〈文/柳瀬蓮 @_prince0807_〉
元キャバ嬢ライター。脚本、エッセイ、アニメ以外では主にスピリチュアルや恋愛について、さまざまなメディアで執筆中。赤髪やピアスで派手な見た目をしているものの中身はふわふわしている人。誰かを傷つけてしまわないような記事を心がけています◎。10年の夜職経験を生かし『アニギャラ☆REW』では「アニメで学ぶ恋愛術」を連載中。