今年は公開前の試写会を開催しない──。

 異例の事情をわざわざ発表する映画が登場しました。その映画というのが4月12日に公開が予定されている『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』です。

 一般の試写会を行わないで公開を果たす映画は実際はそんなに少なくはないのですが、あの『コナン』がわざわざ明言するとなると話は別。作品自体を揺るがすサプライズが隠されている可能性が出てきました。

◆「キッドの真実」のお披露目をキッド自身が阻止!? 驚きの予告状が公開

 まさかの発表がされたのは2月1日。公開が迫ってきた『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』のメインビジュアルが明らかになり、この映画で活躍が予想されるキャラクターたちの姿がお披露目になったのですが注目はそのキャッチフレーズです。

 「ついに明かされる、“キッドの真実”──」

 このように大きく描かれたフレーズの通り、この映画では原作でもまだ明かされていない“とある秘密”が描かれていることが公式で言及されました。

 しかし、驚きのポイントはさらにここから。そんな秘密を一刻も早くファンに知ってもらおうと試写会の準備を進めていた宣伝スタッフが、招待状が保管された倉庫へ走ると、怪盗キッドからの予告状が残っているのみで、招待状とフィルムをキッドに盗まれたというのです。

 これにより公式サイトでは試写会が行われないというお詫びとお知らせ、そしてその代替案として「公開直前!SPファンミーティング」の開催が発表されました。

 これまでも怪盗キッドが映画に登場する年には、キッドが現実世界のいろんな物を盗んでしまうという広告施策が行われてきたのですが、今年はなんと試写会を盗んでしまうという思い切った事件を引き起こしました。

 そもそも試写会を開催しなければいけない決まりもないので、わざわざお詫びを発表するようなことじゃないからこそ、今回の発表は「映画で明かされる“真実”があまりに大きいために試写会を実施しない」という宣伝サイドがサプライズのハードルを大きく上げる思い切った戦略といえます。

 果たしてこの映画に隠された“真実”とはなんなのか? まんまと一気に内容をいち早く知りたくさせられているのが悔しいです。

◆要警戒!『コナン』映画の「初出し衝撃展開」は前例アリ!

 このたびのサプライズについて期待のハードルが上がるのは、『名探偵コナン』シリーズはこれまでも原作漫画ですら描いていなかった秘密を映画で初めて解禁した前例があるからです。

 特にそのサプライズの度合いが顕著な映画が、2014年公開の『名探偵コナン 異次元の狙撃手(スナイパー)』でしょう。

 この映画では最後のカットで、沖矢昴が赤井秀一の声で呟くシーンで幕を下ろします。

 今でこそ赤井秀一は沖矢昴という人物に成りすまして活動していることが公になっていますが、上映当時は原作漫画においても赤井秀一の生死すら不明な状態でした。

 そんな状態で前述のような演出が意味深に登場したことで“赤井秀一が沖矢昴として実は生きていた”というのがこの映画で初めて明らかになったのです。

 TVアニメシリーズや原作漫画のある作品の劇場版はこれまでもいくつも公開されてきていますが、生死が不明の主要キャラクターの行方を映画を観にきたファンに初めて知らせる、という芸当は『名探偵コナン』が初めてではないでしょうか。

 これも劇場版第1弾の頃から、原作者である青山剛昌先生が制作に大きく携わっているコナンだからこそできたことといえます。

 そんな前例があるからこそ、この映画が隠している“真実”の期待の度合いがグッと上がってしまうわけです。

◆実は警戒度合いも高まる近年のネタバレ対策事情も?

 また、試写会がないこと自体がファンとしてはホッとできるという面もあると言えます。

 というのも試写会が行われたために、一般の公開日より前から映画のネタバレがオンライン上に流れてしまうという問題もありました。

 実際、昨年に公開された『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』でも、活躍にスポットが当たった灰原哀が“これまでしたことのないある行動を取った”ことが大きなサプライズになっており、『コナン』シリーズを深く追っているファンほど衝撃を受ける内容となっていました。

 しかし、その内容を伏せて感想を述べたりするファンが多い一方で、中には故意にネタバレとなる内容を投稿したり、その映画で描かれた内容に満足できない人が攻撃的な投稿をするなどの事態を発生させ、公式アカウントが配慮を促すメッセージを投稿するほどとなりました。

 そんな事件があったからこそ、今年の「試写会を実施しない」という判断は納得がいくでしょう。

 『コナン』シリーズの見事なところは、その“中止”までも宣伝施策の一環として取り入れてしまえるところ。

 ファンが楽しめる映画を作るだけでなく、ファンが映画をより楽しめる環境づくりにも注力していると分かる今回の試写会中止のニュースだったのです。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレターを配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi

※サムネイル画像:YouTubeチャンネル『東宝MOVIEチャンネル』より


劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』
(C)2024 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

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