今年の映画『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』では、北海道を舞台にコナンや平次、怪盗キッドといった人気キャラクターはもちろんのこと、あまり本編でも登場機会の少ないキャラクターも登場する“お祭り映画”となっています。

 ただし今年はキャラクターだけでなく、映画の予習としておさえておいた方が良い、TVシリーズで放送されたエピソードの“ある”設定があります。というのも、今回の映画では平次と怪盗キッドのある因縁が映画に大きく絡んでくるのです。

◆予習推奨? 今年の映画の前日譚として重要なエピソードとは?

 今回の『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』では今年も恒例のあらすじコーナーが用意されており、あまりコナンに詳しくない人も冒頭でざっくりと登場人物が分かるようにできています。

 今年の主要キャラクターである平次や怪盗キッドにも触れられるのですが、ここで“平次の唇をキッドが奪おうとした”という因縁の話が出てきます。このエピソードはいつの話を言っているのでしょうか。

 これはTVアニメ『名探偵コナン』のシリーズで2020年に放送された第983話〜984話「キッドVS高明 狙われた唇」の内容です。このエピソードでは怪盗キッドが和葉に変装していることを知らずに、平次がキスを迫ったシーンが登場しており、その因縁について言及しています。

◆平次の逆恨みだった? 怪盗キッドは最初から平次の唇を狙っていない?

 しかしこのエピソードを予習しても、違和感を感じるのではないでしょうか。

 『100万ドルの五稜星』のキャラクター紹介では、平次は“怪盗キッドが自分の唇を奪おうとしたので怒っている”という前提になっていますが、そもそも怪盗キッドは平次とキスをしようとはまったく思っていなかったどころか、むしろキスをされそうになってしまった側で、怪盗キッド自身も思わず焦ってしまうアクシデントだったのが実際でした。

 そもそもこのエピソードの頃の平次は、自分よりも先駆けて恋人同士になった新一と蘭の関係性に焦っており、いつもより冷静ではない状態でした。

 普段なら見破れていそうな怪盗キッドの変装も見抜けていないどころか、積極的に接触してくるキッドの扮する和葉に絆されて、思い切ってキスをしようとする大胆な行動に出てしまったわけです。結局キスしようとしたのは平次だし、キスの件に関しては怪盗キッドは逆恨みと言って良いほどの因縁です。

 ただ、今回の映画で分かったのは、平次にとってはこの時に「怪盗キッドが和葉に変装して誘惑してきた」という理解をして、キッドに怒りを抱いているというおかしな事態になっていたということです。

 普通に考えたら唐突すぎる展開ですが、平次は和葉のことになると冷静ではいられず、キッドの変装も見破れないわけです。その冷静ではいられないことがこの飛躍した考えに至らせたのでしょう。

◆実はこのエピソードの重要なパートは高明の方?

 この平次の言いがかりとも言える因縁を知るためにも第983話〜984話は必見なのですが、実はこのエピソードではそれよりも重要な事実が明らかになる、別の意味でも重要な回だったことは忘れてはいけません。この回はコナンたちと一緒にキッドと対峙することとなった諸伏高明刑事について、意外な事実が判明する回でした。

 その事実とは高明の弟が、公安部の警察官であり黒ずくめの組織に潜入していた“スコッチ”こと景光だったことです。この関係性はこの回ではじめて明らかになりました。景光といえば安室たちとは警察学校の同期であり、赤井の接近で自殺を図ったとされる因縁のあるキャラクターでした。

 この二人が兄弟だと判明したことが物語に大きく関与していくどころか、高明自身があまり登場機会が多い方ではないため、その事実が物語にはまだ大きく絡んで来ていません。それが意味を持ってくるのは『名探偵コナン』の今後の展開だ、と予想できます。これからのコナンの予習という意味でも第983話〜984話は必見の回なのです。

 そして今年の映画の本編にこそ高明刑事は登場しませんが、彼の存在を知っていると“気づけること”が今年の上映には用意されているので、そういった意味でも見ておいて損はないでしょう。

〈文/ネジムラ89〉

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《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレターを配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi

 

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劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』
(C)2024 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

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