<この記事には劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』のネタバレが少し含まれます。ご注意ください。>
劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』は、函館を舞台に隠されたお宝を探すお宝争奪バトルミステリーです。コナンや服部、キッドはもちろんのこと、さまざまな登場キャラたちがお宝をめぐって謎を解いたり刀を交えたりします。
しかし、その設定から、映画を観た人のなかにはとある作品を思い浮かべる人も多いようです——。
◆北海道のお宝争奪戦といえば……?
劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』のお宝争奪戦の発端は、戦時中の軍需産業にかかわっていた斧江家初代当主が函館にお宝を隠したことです。
このお宝はただの宝ではなく、戦時中、劣勢だった日本の戦況を一変させるほどの強力な武器だといわれています。このお宝には新選組副長の土方歳三が残した刀がかかわっているため、キッドをはじめ武器商人や謎の剣士らが刀を追い、お宝を奪い合うのです。
そんな本作はオールスター並みの懐かしいキャラたちの登場や、刀同士の派手なアクションが話題を呼んでいます。しかし一方で、「北海道」「お宝」「争奪戦」「土方歳三」という共通点から『ゴールデンカムイ』を思い浮かべる人が多いようです。
『ゴールデンカムイ』は日露戦争後の北海道を舞台に、さまざまな勢力がアイヌの隠した金塊を奪い合います。金塊の場所は網走監獄に収監されていた24人の囚人の体に刺青で記されていますが、この刺青は皮を剝がすのを前提に彫られていました。
このあらすじからも分かるようにどちらの作品にも、北海道を舞台に隠されたお宝を奪い合うという共通点があります。しかし、共通点があまりに多いことから、ふたつの作品の設定が似通っているのは偶然ではないでしょう。なぜ、北海道を舞台にしたお宝争奪戦という設定が生まれたのでしょうか。
◆北海道には埋蔵金伝説がいくつもあった
実は北海道にはいくつも埋蔵金伝説があります。この伝説から、北海道を舞台にした隠されたお宝を探すお宝争奪戦という設定が誕生したのかもしれません。
たとえば、北海道道東地方にある標津町には、金山という場所にアイヌが財宝を埋めた伝説が残っています。
この伝説では金山の近くを流れる忠類川の水が枯れたとき、滝壺の底が見えて金塊を発見したそうです。代々金山の村長は金塊を守ってきましたが、娘が嫁入りしたときの隙をつかれ、村を攻められてしまいました。ほとんどの村人が嫁入りについていったことで戦力が残っておらず、村長は滝のそばの深い穴に金塊を埋めてしまいます。そして、村の砦に火をつけて炎のなかへ消えてしまいました。金塊を埋めた場所を解く手掛かりは「朝日さす、夕日さす」と語り継がれていますが、まだ誰も金塊を発見していないそうです。
また、渡島半島の北部にある八雲町にも有名な埋蔵金伝説があります。鉛川鉱山の責任者が戦争に負けた徳川の脱走兵が攻めてくるという噂を耳にし、アイヌの親子に頼んで雄鉾岳の麓に埋蔵金を埋めて桐の木を植えました。その後、埋めた埋蔵金は誰にも発見されず、伝説となったようです。
このように北海道には金塊や埋蔵金の伝説が数多く残されています。これらの伝説が誕生した理由として、明治のころに北海道で起きたゴールドラッシュが挙げられるでしょう。
1898(明治31)年、道北の枝幸郡で大量の砂金が発見されたのをきっかけに、北海道のゴールドラッシュが始まります。この噂をききつけた人がこぞって枝幸郡にやってきて、砂金を探し始めました。
当時、砂金を求めて枝幸郡の山中を4,000人以上の人が歩き回っていたというのですから、多くの人が一攫千金を夢見ていたのがよく分かるでしょう。そして、枝幸郡でのブームを終えると新たな場所を探し、つぎつぎと砂金地が発見されていきました。ゴールドラッシュが過ぎ去るまで、多くの人が北海道へ訪れたそうです。
このように北海道は砂金の一大産地なことから、さまざまな場所に埋蔵金伝説があるのもうなずけます。劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』や『ゴールデンカムイ』は、これらの伝説に基づいて北海道を舞台にしたお宝争奪戦を描いたのかもしれません。
〈文/林星来 @seira_hayashi〉
《林星来》
フリーライターとして活動中。子供の頃から培ってきたアニメ知識を活かして、話題のアニメを中心に執筆。アニメ以外のジャンルでは、葬儀・遺品整理・金融・恋愛などの記事もさまざまなメディアで執筆しています。