およそ1ヵ月という延期の末、やっと『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章』の劇場公開が5月24日から始まりましました。この映画は3月に公開された前章に続く完結編となっています。

 主演のボイスキャストとしてタレントのあのさんとYOASOBIのボーカルで知られる幾田りらさんの二人が映画の主題歌を歌っていることでも注目されていますが、実はもう一つ、作中では重要な楽曲が“挿入歌”として用いられています。

◆実は縁が深かったでんぱ組.incの「あした地球がこなごなになっても」

 『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』こと映画『デデデデ』でも本編の重要な場面で流れる楽曲、それがでんぱ組.incの「あした地球がこなごなになっても」です。

 この曲は2015年にリリースされたグループの14枚目のシングル曲ですが、およそ9年も前の曲がなぜこのタイミングで採用されているのか、そこには理由があります。

 なぜならこの曲の作詞を担当しているのが、他でもない『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』の原作者である浅野いにお先生だからです。

 当時は浅野いにお先生とでんぱ組.incのコラボ作品として、浅野先生がジャケットやMVなどの制作にもがっつりと参加する企画でした。

 『デデデデ』とのコラボというわけではなかったのですが、浅野先生は当時まだ連載中だった原作漫画の後半の展開も想定しながら作詞したことを当時語っており、実際に後に描かれる原作の終盤ではこの曲名が作中で登場しています。

 思えば“人類滅亡”というキーワードが登場する『デデデデ』と、地球の終末を歌った本作はそもそも親和性がありますが、それも偶然ではなかったのです。

 むしろ、本来であれば、漫画の作中で流れていたであろう音楽が、今回の映像化に合わせてついに再現されたという意味でも、必見の演出と言えるでしょう。

◆時代を経て“当時を思い出す”意味も深まっていく楽曲

 2015年の曲という点でも、当時この曲の存在を知っていた人には余計に意味が乗ってくるものがあります。

 『デデデデ』における宇宙船の襲来は明らかに東日本大震災のメタファーにもなっていて、作中では否が応でも震災の前後での生活の変化を想起させます。

 ただ、その震災自体も今となっては10年以上も前。直近でも新型コロナウイルス感染症の流行など時代も急変していき、その間にどんなことを思っていたのかという感覚も薄れてくるものです。

 しかし2015年ごろの曲を起用することで、まだ震災後の感覚が色濃く感じられた“あの頃”を思い出させるトリガーの役割も担ってくれます。

 その感覚は当時のでんぱ組.incのファンであればなおさらでしょう。そもそもでんぱ組.incはこの「あした地球がこなごなになっても」以降もメンバーの脱退や卒業など紆余曲折を経て現在があります。

 この曲がリリースされた当時は、現在は既に脱退・卒業を経ている最上もがさんや夢眠ねむさん、成瀬瑛美さんといったメンバーが在籍していた6人体制の時期でした。

 2017年に最上もがさんが脱退を発表して以降、徐々にメンバーの構成の変化が加速していったので、今となってはこの曲自体が変化が加速するでんぱ組.incの直前の頃を思い出させる曲となっています。

 今もでんぱ組.incというグループは存在しているとはいえ、当時とは異なるメンバーとなった現在からかつてを思い返すと“もう戻れないあの頃”としての意味が強まります。超常的なあるできごとがキーとなる『デデデデ』においては余計に物語に意味が乗ってくるところです。

 そして、そんなでんぱ組.incも2025年の初頭に行うライブを最後に解散すると発表されました。

 グループのフィナーレが近いこともあり、さらに今回のような終末世界を描いた物語に曲が流れると感慨深いものがあります。

 2015年に生まれたこの曲が、時代を超えて別の意味を持っていくことになる──それ自体も『デデデデ』の物語に不思議とシンクロしているのは果たして狙っていたのか、はたまた偶然か。何にしても、この挿入歌が一つのマジックをこの映画にもたらしてくれているのは間違いないでしょう。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレターを配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi

※サムネイル画像:YouTubeチャンネル『ギャガ公式チャンネル』より


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