『ドラゴンボール』のように連載が長期化すると、当初ストーリーにおいて大きなウエイトを占めていた設定でさえ、いつの間にかなくなっていることがあります。その中には『ドラゴンボール』特有の理由で生じてしまった、その後の設定に大きく関わる重要な変更もありました。

◆初登場のベジータは髪の色が赤かった

 アニメ版のベジータは初登場時、髪が赤色になっています。当時この髪色に違和感を抱いた視聴者はいなかったでしょうが、『ドラゴンボール超』で登場した超サイヤ人ゴッドの髪が赤色だったため、初期ベジータはすでにサイヤ人の神形態だったのかと話題となりました。

 アニメを制作する際、キャラクターの色彩設定は原作者に確認するのが普通です。もちろん鳥山明先生にも確認していましたが、『ドラゴンボール』の場合はアニメがたびたび原作に追いつくという特殊な事情がありました。

 そのため、ベジータの髪色の確認が間に合わず、アニメでは最初赤髪での登場となります。その後、鳥山先生に確認しておなじみの黒髪に修正されました。

 純粋なサイヤ人は黒髪、超サイヤ人になると髪色が変わることは、ファンにとっておなじみの設定となっています。当時のアニメ制作スタッフも、サイヤ人の髪色にここまで重要な意味があるとは想像していなかったでしょう。

◆シッポと大猿になる設定はどこに?

 サイヤ人にはシッポがあり、1700万ゼノを超えるブルーツ波を有する満月の光を目から吸収すると大猿になる設定がありました。しかし、ストーリー後半では変身することはなくなり、そのうち勝手に生えてくるはずのシッポの存在も忘れられてしまいます。

 悟空や悟飯、ベジータもシッポが生えなくなり、フリーザ編以降に登場した地球との混血サイヤ人である、トランクスや悟天にいたっては最初からシッポがありません。これは界王拳や超サイヤ人など、大猿にならなくてもパワーアップできる手段が出てきたことが大きいでしょう。

 悟空や悟飯は大猿化すると正気を失い、そういったデメリットがないベジータも変身後の醜い姿を嫌っていました。また、満月がなければ変身できず、疑似満月を作り出せるベジータもパワーボールを出すことで気が大きく減るため不便です。

 このようなデメリットを考えると、大猿化するより超サイヤ人になったほうが戦闘に有利でしょう。さらには、体が大きくなると服が破れてしまうので、悟空もベジータが使っていた戦闘服を着なければなりません。

 しかし、それでは悟空のイメージが変わってしまいますし、やはり道着姿のほうがしっくりきます。かといって、子供の頃ならまだしも、さすがに大人になった悟空が大猿からもとに戻ったときに裸なのはヤバいです。

 超サイヤ人になるには穏やかな心を持ったうえで、極端な危機感や強い怒り、悲しみを抱いていることが条件です。もしかすると、シッポをなくすことで大猿の凶暴性を捨て去り、超サイヤ人になりやすくなっていたのかもしれません。

◆ラディッツは悟空を逃げるダシに使った?

 ラディッツが地球に来た理由は、次に攻めようとしている星がサイヤ人3人だけでは苦戦が予想されるので悟空を仲間に加えるためでした。しかし、ベジータがいて苦戦する相手ならラディッツがかなうはずもなく、逃げる口実だった可能性があります。

 地球にやって来た時点での3人の戦闘力はラディッツが1500、ナッパが4000、ベジータが18000ほどです。仮に攻める予定だった星の住人の戦闘力が1000を超えるレベルだとすると、ベジータとナッパにとっては楽な相手ですが、ラディッツは苦戦する可能性があります。

 大猿化すればラディッツでも余裕でしょうが、都合よく月がある星だとは限りません。また、ベジータがラディッツのために攻める日を満月に合わせたり、パワーボールを出してあげたりすることはないでしょう。そもそも星の住人が多くて攻め滅ぼすのに日数がかかれば、満月の日に合わせて襲来してもあまり意味がありません。

 そんな状態ではラディッツより戦闘力が低いと思われていた悟空が加わったところで、状況が大きく変わるとことはないはずです。そこでラディッツは弟と2人でなら自分も十分やれるとうそぶいて、悟空を迎えに行くという口実で、その星攻めを回避したのではないでしょうか。

 そう考えると、ナッパが彼のことを「よわむしラディッツ」と呼んでいた意味も分かります。「弱虫」は臆病な人、いくじがない人という意味です。つまり、悟空たちに負けたことではなく、ラディッツがヒヨッて星攻めから逃げた弱虫だと言っている可能性があります。

 ラディッツが死んだとき、ベジータたちはどこかの星を攻めていました。ベジータが宇宙人を食べていた有名なシーンですが、2人の様子から苦戦している雰囲気はありません。

 ただ、ナッパはこのとき「この星を後回しにしていくか…」と、ベジータに地球に向かうのかたずねています。つまり、まだ星攻めは終わっておらず、時間がかかるということです。

 そのため、本来はラディッツも参加させたかったところ悟空をダシにして逃げたため、「よわむしラディッツ」を放って2人で先に攻めていた可能性も考えられるでしょう。

◆仙豆を食べると満腹になる設定はどこへ?

 仙豆には傷を治したり体力を回復したりするだけでなく、普通の人間なら1粒食べるだけで10日間は何も食べなくても平気でいられる設定がありました。しかし、当初は空腹を満たす程度のもので、回復効果はフィーチャーされていませんでした。

 その証拠に悟空が超神水を飲んで再びピッコロ大魔王と戦って傷ついたときは、仙豆を使わずにカリンの薬草で治しています。その後は瀕死の状態から復活すると戦闘力が大きく上がるサイヤ人の特性もあって、仙豆は傷や体力を回復する重要なアイテムとなりました。

 しかし、そうなると今度は満腹をもたらす効果が薄れてきます。天下一武道会決勝後の悟空やピッコロ、ナメック星での悟飯やクリリン、ベジータなど、たびたび仙豆の恩恵にあずかっていますが、誰も満腹感には触れていません。

 これには2つの可能性が考えられます。1つは緊迫した戦闘の後、もしくは戦闘中のためお腹いっぱいになったなど、のんきなことを言っている空気ではなかったということです。そして、2つ目は深いダメージや失った体力の回復に仙豆の栄養が使われたため、それほど満腹感は得られなかった可能性もあるでしょう。

 

 ──『ドラゴンボール』は今ではあまり見られない、アニメが原作に追いつく現象が起きました。その結果、アニメ1話でほとんどストーリーが進まなかったり、その後余分なシーンをカットした『ドラゴンボール改』が放送されるなど、イレギュラーなことも多かったです。そういう意味でも、『ドラゴンボール』は、ほかに類を見ない伝説的な作品と言えるでしょう。

〈文/諫山就〉

《諫山就》

フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。

 

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