『ドラゴンボール』には原作であまり使われなかったのに、ものすごいインパクトを残した技があります。その中には天津飯の黒歴史に認定されたり、『ドラゴンボール』の最強技としてファンの間で語り継がれているものも。次の4つの技は、威力やネーミング、使い手の突然の奇行から読者に大きな衝撃を与えました。
◆悟空を初めてあの世へ送ったピッコロのとっておき──魔貫光殺砲
魔貫光殺砲は原作ではラディッツ戦で2度使われただけですが、サイヤ人2人を簡単に貫いて絶命させたその威力から、強いインパクトを残しています。なにより、主人公である孫悟空を初めてあの世へ送った技のため、衝撃を受けた人も多いでしょう。
また、高速ビームの周りをらせん状のエネルギー波が並走する形状は、いかにも貫通力がありそうでカッコよいです。魔貫光殺砲という技名も、つい声に出して叫びたくなる絶妙なネーミングとなっています。
さらに、気を指先にためるのに時間がかかるというデメリットがあるのも、人気が高い理由でしょう。使い勝手が限られる玄人好みなところも、魔貫光殺砲の魅力の一つです。
ラディッツ戦では悟空とピッコロの共闘という、当時のファンが心おどらせた夢のタッグが実現。その戦いでのフィニッシュ技という大役だったことも、魔貫光殺砲に強い衝撃を受けた人が多い要因でしょう。
また、ピッコロにはこれまた出番が少なかった、魔空包囲弾というインパクトの強い技もあります。残念ながら人造人間17号のバリアで防がれますが、逃げ場がなく威力も高いこの技が、ほかの敵に使われていたら大きなダメージを与えていたかもしれません。
なお、魔空包囲弾が登場するまでは、魔貫光殺砲がピッコロの最大の技でした。そのため、アニメや映画版では魔貫光殺砲を使っているシーンも多くなっています。
◆天津飯の黒歴史──排球拳
天津飯が第22回天下一武道会の決勝で使った排球拳は、ヤバい意味でインパクトが強く黒歴史となっています。相手をバレーボールに見立てて、レシーブやアタックで攻撃する技ですが、「排球拳いくわよーっ!!!」「はぁ〜い♡」など天津飯の口調はまさに女子バレー部員。
この技のときは顔つきすら変わり、細く中央に酔った眼はキツネのようです。アニメでは初代声優の鈴置洋孝さんの裏声による演技によって、排球拳のおもしろさが見事に表現されていました。
しかし、その口調と顔つきがやはり天津飯の本来のイメージとはかけ離れているため、黒歴史と化しています。それを本人も自覚しているのか、排球拳を見せたのは天下一武道会決勝の悟空戦たったの一度でした。
ただ、排球拳のアタックで武舞台に叩きつけられた悟空の様子を見ると、威力は高いようです。『ドラゴンボール』に、まだギャグ路線の色が残っていたころ特有の技といえるでしょう。
◆かめはめ波よりアブない技──萬國驚天掌
萬國驚天掌は亀仙人がジャッキー・チュンとして出場した第21回天下一武道会で、一度だけ見せた技になります。危険すぎて亀仙人もめったに使わない技であり、悟空を追い詰めたことからインパクトが強かったです。
萬國驚天掌は人体に流れる微量の電気を増幅して、両手から放出する技となっています。アニメやゲームでは、おなじみのいわゆる属性技ですが『ドラゴンボール』では珍しい部類です。
その威力は絶大で一番弟子の孫悟飯も耐えられず、悟空もあと少しでギブアップするところでした。満月を見て大猿化しなければ、萬國驚天掌によって悟空は負けていたでしょう。
技のネーミングも1960~70年代にフジテレビ系列で放送されていたバラエティ番組『万国びっくりショー』が由来なっているため、印象に残っている人も多いハズ。
かめはめ波とは違って、この技は亀仙流の弟子が誰も受け継がなかったのも出番が少なかった理由です。それだけ覚えるのも難しい技だったのかもしれません。
◆悟空や悟飯以外は倒せる最強技?──アクマイト光線
悪魔族アックマンのアクマイト光線は、悟空に効かなかったにもかかわらず、その技の特性から記憶に残っている人は多いでしょう。
相手にわずかでも悪の心があれば、それを増幅させ体ごと爆発させるとんでもない技のため、『ドラゴンボール』の最強技議論でたびたび名前が挙がります。
悪の心がない悟空には効かなかったですが、ピッコロ大魔王やフリーザなど悪そのものの相手であればアクマイト光線で倒せていたかもしれません。
当時から多くの人が同じように考えており、実際に「アクマイト光線で敵を倒せばいいのでは」という質問が読者から寄せられています。
これに対して鳥山先生からは、「たぶん相手に当たらないし、もうそんなレベルの闘いじゃないんだと思います」という回答がありました。
確かにベジータやフリーザにアクマイト光線が当たるとは思えませんが、ナッパやドドリアのように相手をナメて技を跳ね返そうとする敵には通用していたかもしれません。
アクマイト光線は出番が少なく、悟空に簡単にやぶられたにもかかわらず、読者に強いインパクトを与えた珍しい技といえるでしょう。クリリンを爆発させたフリーザが、アクマイト光線で爆発する姿を見てみたかったです。
──大きな欠点がある技だったりネーミングがおもしろかったり、インパクトが強い理由はさまざまです。しかし、ラディッツ戦や天下一武道会決勝など、やはり重要な戦いで使われた技は記憶にも残りやすいといえるでしょう。
〈文/諫山就〉
《諫山就》
フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。
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