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※この記事にはTVアニメ・原作漫画『ドラゴンボール』のネタバレが含まれます。ご注意ください。

※本記事はTVアニメ・原作漫画『ドラゴンボール』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。

 サイヤ人といえば尻尾、尻尾といえば大猿──のはずが、物語後半ではその設定がほとんど表に出なくなりました。大猿が消えた理由には、公式資料で語られた制作上の事情もあります。さらに、悟天やトランクスに尻尾がない理由を追うと、混血サイヤ人ならではの不思議な設定も浮かび上がります。

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◆大猿はなぜ出なくなったのか 公式資料で語られた意外な理由

 戦闘民族・サイヤ人にとって重要な意味を持つ特徴が“尻尾”です。ご存知の通り、尻尾のある状態で満月を見ると大猿に変身できます。大猿は、ラディッツ曰く「我々サイヤ人の本領を発揮」であり、ベジータ曰く「戦闘力が10倍にもなる」と明かされています。

 またメタ的にも重要な要素となっていました。サイヤ人にとって尻尾は弱点でしたが、サイヤ人襲来編では尻尾の弱点が克服されており、逆に読者に絶望感を与える装置ともなっています。そんなサイヤ人とは切っても切り離せない設定である「大猿」ですが、ベジータが大猿化して以降、出番がなくなっています。

 実はこの理由については、原作でピッコロが月を消し飛ばした以外にも理由があるのです。2016年1月に発売された『30th Anniversaryドラゴンボール超史集―SUPER HISTORY BOOK―』(出版社:集英社)で、公式に回答がなされています。

 その中で、『ドラゴンボール』の2代目担当編集者である近藤裕さんが、「大猿が登場した話は原作でもアニメでも全然人気がなく、大きすぎるとリアリティがなく見ている側がピンとこないから」と大猿が登場しなくなった経緯を明かしているのです。

 このほかにも、大猿になるとベジータなどのエリート戦士以外は「理性が保てない」という設定があったため、キャラクターを動かしづらかったのかもしれません。しかし、近藤さんの明かした話を聞く限り、やはり最も大きな原因は、「超サイヤ人」という新たな変身形態の登場ではないでしょうか。

 同じ変身形態でも、超サイヤ人は大猿と違って近藤さんが指摘した問題点を改善していますし、何より金髪に変化するというヴィジュアル面でも画期的でした。

 ちなみに、原作では登場しなくなった大猿の設定ですが、原作終了後の1996年2月より放送されたTVアニメ『ドラゴンボールGT』でその設定が再利用されています。それが、大猿の力を由来とした最強形態「超サイヤ人4」です。

 超サイヤ人4は、大猿状態のときのパワーと、人間形態ならではの超スピードを兼ね備えています。一方で、悟空も「ちょっとばかし理性がぶっ飛んじまう」と言っていたように、大猿特有の理性が保てないという設定も引き継がれていました。

 その後、超サイヤ人4は、2018年に公開された映画『ドラゴンボール超 ブロリー』、そして2024年10月に放送されたTVアニメ『ドラゴンボールDAIMA』でそれぞれサプライズ登場しています。

 「大猿」自体は登場しなくなっても、鳥山明先生が生み出したサイヤ人の特性である「大猿」の設定は、今なお受け継がれているのです。

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◆悟天とトランクスになぜ尻尾がないのか 公式回答が分かれた謎

 サイヤ人と地球人のハーフである孫悟飯も尻尾が生えています。一方で、同じくハーフのはずの孫悟天やトランクスには、尻尾が生えていたという明確な描写がありません。

 実は、原作コミックス第337話で赤ん坊だったころのトランクスがお披露目された際、連れてきたブルマに対しクリリンが「この子のシッポは? 切っちゃったんすか?」と聞いている場面があります。しかし、ブルマの返事はカットされており、真相は闇の中でした。

 実はこの疑問について、公式はなんと2パターンの回答をしているのです。まず1つ目は、1995年10月に発売された『DRAGON BALL大全集』第4巻(出版社:集英社)で次のように回答しています。

 「悟飯以外の尻尾については、生まれつき持たない混血サイヤ人は特に強大な戦闘力を秘めており、悟天やトランクスのように小さいうちから自然と超サイヤ人への変身も体得してしまうことが多い」と生まれつき持っていなかったことが示唆されています。

 一方で、2003年10月に発売された『テレビアニメ完全ガイド Dragonball Z 孫悟空伝説』(出版社:集英社)では、「生まれてすぐに切られた」と正反対の解説がなされています。

 異なるとはいえ、公式回答があるのでそれをそのまま受け入れるしかありません。しかし、どちらが正しいのか……どうしても気になってしまうのが、読者の性ではないでしょうか。少し野暮ですが、どちらの説に信憑性があるのか考察してみようと思います。

 結論からいうと、悟天やトランクスは生まれつき尻尾を持っていなかった説のほうが正しいように感じます。根拠は大きく2つあります。

 まず1つは、尻尾を切られたとしてもサイヤ人の場合は自然と尻尾が生えてくるはずだからです。コミックス第246話で、地球で負った瀕死の重傷の治療を受けていたベジータが、尻尾は再生できなかったと知らされた際、「かまわん、そのうちはえてくる」と言っていました。

 実際に、原作では悟空の尻尾は何度か生えてきています。悟空の尻尾が生えなくなったのは、神様によって「邪魔だろう」と二度と生えないようにしてもらったからで、特殊な処置をしない限り再生してしまうと考えられます。

 そして2つ目は、悟天やトランクスが強大な戦闘力を生まれながらに持っていた点です。実はこれに関しては、2020年1月にバンダイナムコエンターテインメントから発売されたゲームソフト『ドラゴンボールZ カカロット』で、興味深い設定が明かされています。

 余談ですが、バンダイナムコエンターテインメント公式Webページの制作チームのインタビューによると、このゲームは鳥山先生が直々にいくつもの新設定を書き起こしたそうです。そんなゲームの中で、悟飯の尻尾が再生しなくなった理由を探るサブクエストがあるのです。ゲーム内で、悟飯の尻尾は悟空のように神様に処置をされたわけではないことが判明します。

 つまり、自然と生えなくなったのですが、ベジータに聞いても明確な根拠も分からないと言われてしまいます。最終的に悟飯自身は「大猿になるより自分が強くなったから生えなくなった」という考えに至っているのです。

 この結論は、鳥山先生が自ら考えた新設定であり、「生まれつき尻尾を持たない混血サイヤ人は強大な戦闘力を秘めている」という大全集の設定とも矛盾しません。悟天やトランクスは生まれてから戦闘力が高く、この論理に当てはめるともともと尻尾が生えていなかった可能性の方が高いと考えられるのです。

 

 ──サイヤ人の尻尾と大猿は、『ドラゴンボール』初期を象徴する重要な設定でした。しかし物語が進むにつれ、変身の主役は大猿から超サイヤ人へと移り、尻尾も表舞台から遠ざかっていきます。それでも、大猿の力は『ドラゴンボールGT』の超サイヤ人4や、関連作品に残る設定の中で受け継がれてきました。

 悟天やトランクスに尻尾がない理由にも複数の公式解釈があり、サイヤ人の設定には今なお考える余地があります。初期には当たり前だった要素を振り返ると、長く続く作品だからこその設定の変化や、後年の作品へつながる面白さが見えてくるのではないでしょうか。

〈文/fuku_yoshi〉

《fuku_yoshi》

出版社2社で約10年にわたり編集業務に従事した元編集者。男性向けライフスタイル誌やムック制作のほか、漫画編集者としての経験も持つ。現在はフリーライターとして、映画・アニメ・漫画などサブカルチャー領域を中心に記事を執筆。漫画考察記事では、元編集者の視点を活かし、作品内の描写や設定を論理的に読み解く記事制作を得意としている。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「ドラゴンボール」第37巻(出版社:集英社)』

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