碇シンジの母、碇ユイは、ゼーレと深い関わりがあり、人類補完計画にも関与していたのではないかと噂されています。彼女は、初号機とのシンクロ実験の際にイレギュラーが起きて肉体が消失し、精神だけが初号機の核に取り込まれてしまいましたが、ファンの間ではこれは自らの意思によるものだったという考察が見受けられます。もしそれが本当だとしたら、なぜ彼女は自ら初号機に取り込まれることを選択したのでしょうか?
◆碇ユイが初号機に取り込まれたのは自らの意思だった?
ユイが初号機に取り込まれたことは、たんなる実験の事故のように思えます。しかし、シンジも同様に初号機に取り込まれかけたことがあり、その際には救出され事なきを得ています。この点を踏まえると、ユイは自らの意思で初号機の中に入ったのではないか、という可能性が浮上します。
また、「たとえ50億年たって地球も月も太陽すらなくなっても、人の生きた証を永遠に残したい」という思いから、初号機と融合したのではないかとも捉えられます。
◆家族を守るために初号機を利用した?
ユイは、初号機とのシンクロ実験に息子のシンジを連れてきており、そのことを咎められた彼女は冬月に「この子には、明るい未来を見せておきたいんです」と答えています。
もしユイが初号機に取り込まれることを知ったうえでシンジを連れてきているのだとすると、自身の最後の姿を息子の目に焼き付けておくとともに、自分が初号機の中にいることを伝えておきたかったのかもしれません。
では、なぜそこまでしたのか。理由は家族、特にシンジを守りたかったからではないでしょうか。
シンジが危険に陥ると初号機はいつも暴走します。そこにはユイの意思が働いており、息子を守ろうとしていると考えるのが自然です。
もしゼーレによってシンジが幼少期から初号機パイロットになることが決まっていた場合、ユイは「シンジを守れるのは自分だけだ」と考えたのかもしれません。
ゼーレの意思には逆らえない状況下で、自らの意思で人類の希望となるため、そして家族を守るために初号機と融合した可能性は十分に考えられます。
◆碇ユイが初号機に取り込まれたのはゼーレのシナリオ?
エヴァンゲリオンを起動するためには、コアに魂を宿らせる必要があり、その魂が近い存在ほどシンクロ率が上昇します。そのため、ゼーレがそれぞれのパイロットの母親の魂をコアに入れるよう指示したという見方もできます。実際にシンジもアスカもゲンドウも、エヴァの中に母親の存在を感じ取っています。
使徒が迫り来る中、人類を守るためにゼーレがそう判断し、実行に移したとの解釈も成り立ちます。最初から搭乗するパイロットが決まっていたと考えれば、ユイが初号機に取り込まれたのは必然だったのではないでしょうか。
──物語は終焉を迎えましたが、多くの謎が残されています。碇ユイを失ったショックから、ゲンドウは彼女を取り返そうとさまざまな画策をします。そして、それが叶わないと悟ったかのように、そこにいるはずのない初号機に捕食されるシーンがあります。それは、ゲンドウがユイのもとで永遠に生きたかったことの表れなのかもしれません。そしてそれはユイにとっても同じで、ゲンドウとユイの二人でシンジを守るという思いを象徴したシーンとも考えられます。
〈文/虹中勝久〉
※サムネイル画像:Amazonより 『「エヴァンゲリオン ANIMA 1」(出版社:KADOKAWA)』