宇宙世紀の『ガンダム』シリーズに多く登場し、経験と年を重ねることで人望を集めたブライト・ノア。

 そんな彼は、ニュータイプの少年少女と接することで、かなりのストレスを抱えていたのは想像に難くありません。

◆尾崎もビックリ! 思春期の少年にガンダムを盗まれる

 『機動戦士ガンダム』第17話「アムロ脱走」では、アムロが自身の技術や考えを過信してブライトの命令を無視した行動をした結果、ホワイトベースや仲間たちを危険にさらしてしまいます。

 ブライトは上官としてアムロをガンダムから降ろすかミライ・ヤシマと相談をしますが、偶然その会話を聞いてしまったアムロはガンダムに乗ってホワイトベースを脱走してしまいました。

 この時点でホワイトベースは、地球上のジオン軍の勢力圏におり、なんとか自軍の勢力圏にたどり着きたい状況です。15歳の少年であるアムロが家出してしまうことも平時であれば許容できる範囲かもしれません。

 しかし戦場のど真ん中で、盗むのもバイクでなく主戦力のガンダムでは尾崎豊も真っ青の「15の夜」です。

 そもそもこのときのアムロが15歳なら、ブライトは4つ年上の19歳でまだまだ青年です。士官学校を卒業し軍属になっていたものの、半年でホワイトベースに配属されサイド7でシャアの襲撃にあいました。

 パオロ・カシアス艦長が戦死し、ブライトが艦長代理として乗員全員の命と連邦軍の新兵器であるガンダムやホワイトベースを守らなければならない重責を負っています。

 アムロがガンダムと戻ってきてからは独房に入れる処分を下しますが、戦闘時にガンダムに乗せるとき以外は独房に入れるなど、人権を無視した采配からも分かるとおり、ブライト自身も疲弊していたことがうかがい知れます。

 艦長としてクルーの命を預かるだけでなく、若い上に場合によっては軍属でもない乗員たちの父親役をやらなければならなかったブライトの心労は計り知れないでしょう。

 後年、グリプス戦役で精神崩壊を起こしたカミーユ・ビダンらと立ち寄ったシャングリラでジュドーたちにZガンダムを盗まれるなど、ガンダムを盗まれたのが一度で終わらないあたり、胃に穴が開きそうです。

◆「俺を殴って気を済ませろ」中間管理職のつらさ……

 一年戦争後を描いた『機動戦士Ζガンダム』と『機動戦士ガンダムΖΖ』でブライトは、少年たちの父親代わりとしての役目を負う場面に加えて、彼らと上官の間に挟まれる中間管理職としての苦労がにじみ出ています。

 『機動戦士ガンダムΖΖ』第47話「戦士、再び……」では、ガンダムチームとネオ・ジオン軍の決戦が終わったあと、ブライトは再びジュドーたちの前に姿を現します。

 戦後処理のために出てきたエゥーゴ・連邦軍の高官たちの振る舞いに激怒したジュドーはメッチャー・ムチャにつかみかかりますが、ブライトはジュドーの行き場のない怒りに対し「俺を殴って気を済ませろ」と、大人の代表者としてあえて殴られました。

 ジュドーをはじめとしたガンダムチームの子供たちと一緒にいたときが一番、上官と彼らの板挟みにあい苦しかったのではないでしょうか。

◆地球を救ったはずが、まさかの司法取引

 『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』でブライトは、シャアによるアクシズ落としを防いだ功労者の一人になったといえますが、漫画作品『機動戦士ガンダムUC 虹に乗れなかった男』では国家騒乱罪の容疑で連邦軍の審問会に召集されます。

 ブライトは、“アクシズ・ショックと呼ばれるニュータイプとサイコフレームによる感応がアクシズを止めるほどの物理的エネルギーを生み出した事象を否定するように求められます。

 作戦時、15発の核弾頭の横領をしたことで、カムランには終身刑がかかっていました。加えて戦闘中に実子であるハサウェイがジェガンで無断出撃し、チェーン・アギ搭乗のリ・ガズィを撃墜するという惨事も起きています。

 カムランの終身刑を阻止し、ハサウェイの件をもみ消す代わりに“アクシズ・ショックを否定する司法取引をブライトは持ち掛けられました。

 ニュータイプの少年たちを間近で見てきた彼だからこそ、ニュータイプの可能性に偽りの証言をしてしまっていいのか……。ブライトは苦悩します。

 

 ──宇宙世紀の戦場を駆けぬけたブライトですが、映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』第2部のサブタイトルは『サン オブ ブライト』になるそうです。この映画でブライトはどのような活躍を見せてくれるのか。また、息子のハサウェイの行く末にも注目といえます。

〈文/雨琴 編集/乙矢礼司〉

 

※サムネイル画像:Amazonより

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