『機動武闘伝Gガンダム』放送30年を記念して、今年の夏に総監督を務めた今川泰宏氏による完全新規の外伝シナリオが作られることが発表されました。
『Gガンダム』で強烈なインパクトを与え続けた東方不敗ですが、実はあまり知られていない4つのエピソードを持っており、たとえば、彼の元ネタともいえる人物がいたり、愛馬の風雲再起にもあまり知られていない秘密があったりします。
◆東方不敗マスター・アジアの「元ネタは女性」だった!
東方不敗の名前の由来は、香港映画『スウォーズマン 女神伝説の章』(原題『笑傲江湖之二 東方不敗』)から取られています。
この「東方不敗」というのは強さを求めるあまり去勢して性別を超越した最強の存在であり、台湾出身の女優ブリジット・リンが演じています。
『スウォーズマン』の原作小説『秘曲 笑傲江湖』を書いた金庸氏は、東方不敗を女性が演じることについてはあまり快く思っていないそうですが、ブリジット・リンの影響が強く、『スウォーズマン』以降の映像化では女性が演じることが多いようです。
ちなみに原題の中の『笑倣紅湖』はそっくりそのままデビルガンダム四天王の「笑倣紅湖ウォルターガンダム」として使われていたり、「風雲再起」も『スウォーズマン』シリーズの原題から取られていたりします。
ほかにも「石破天驚拳」を思わせる名前の人物が登場するなど、今川泰宏監督が『スウォーズマン』シリーズから受けた影響は大きいでしょう。
◆東方不敗の過去が分かる──『機動武闘外伝ガンダムファイト7th』
漫画作品『機動武闘外伝ガンダムファイト7th』では、若き日の東方不敗ことシュウジ・クロスがネオジャパン代表として第7回ガンダムファイト大会に参加したときのことが描かれています。
第7回大会ではカオスという組織が世界征服を企てており、ガンダムファイトによって平和裏に地球圏の統治国家を決めるという仕組み自体が脅かされていました。
シュウジはのちにシャッフル同盟となる4人のガンダムファイターと、ネオドイツ代表のウォルフ・ハインリッヒと協力してカオスの陰謀に立ち向かいます。
カオスと戦うためにギアナ高地で修行することで、石破天驚拳を習得し、流派東方不敗は完成しました。
決勝大会のバトルロイヤルに参加する際、カオスの悪あがきで制御を失ったネオオーストラリアコロニーが落下の危機になりますが、シュウジは4人のファイターとともに阻止に向かいました。
結果的にバトルロイヤルに参加できませんでしたが、彼らはシャッフル同盟を受け継ぎます。シュウジを含めたこの5人がアニメにも登場した先代のシャッフル同盟です。
決勝大会はカオスの手先となったファイターだらけでしたが、シュウジたちから託されたウォルフが1人で耐えしのぎ、見事に優勝。ウォルフ自身はシュウジたちとも決勝で戦いたい気持ちがありましたが、5人が間に合うことはありませんでした。
決勝戦に参加しなかったことから、シュウジは敵前逃亡として国外追放になったとも言われており、その後ネオホンコンの東方不敗になったのでしょう。
◆風雲再起はガンダムファイトの「景品」だった!
東方不敗の愛馬の風雲再起は馬でありながら、ガンダムファイターさながらにファイティングスーツを着てモビルホースに乗ります。
このモビルホース風雲再起は第12回ガンダムファイトで東方不敗が優勝した景品として贈られたものでした。
ドモンが東方不敗と修行している場面に登場していないので、馬の風雲再起自体が景品だった可能性もありますが、東方不敗との抜群のコンビネーションを見ると長期間をともにしているのでしょう。
東方不敗亡き後にはドモンを新たな主人と認め背中に乗せてレインの救出に向かいました。同じく格闘を題材にした漫画『北斗の拳』の黒王号を思わせるかっこいい展開です。
ゴッドガンダムがギアナ高地でマスターガンダムを退けて、ネオホンコンの決勝会場に向かう際、デビルガンダム四天王が一斉に邪魔をしますが、この時ボロボロで動けなかったマスターガンダムを再生させながら背中に乗せてゴッドガンダムを攻撃したのも風雲再起でした。
◆キャラクターソングが「演歌」なワケ
キャラクターソングの「男道、獣道/マスターアジアの恨み節」は東方不敗役の秋元羊介さんの希望で演歌として作られました。
秋元さんは当時キャラクターソングを歌わないことにしていて、「演歌なら」と言えば断られるだろうと期待したところ、本当に演歌で作られてしまい、引くに引けなくなったという経緯があるそうです。
一方で今となっては秋元さんにとってもお気に入りの1曲であり持ち歌になっているそうです。実際、秋元さんが歌ったキャラクターソングは数少ないので貴重といえます。
『Gガンダム』にはほかにも一風変わった挿入歌があり、中でも田中公平さん作曲による『勝利者たちの挽歌』は、「翔べ!ガンダム」以来の歌詞でモロに「ガンダム」と歌っているガンダムソングなので一聴の価値があるでしょう。
〈文/雨琴〉
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