※本記事には複数の『ガンダム』作品のネタバレが含まれます。ご注意ください。
完成されたシステムより、不完全な欠陥のほうが戦場で強みになることがあります。『ガンダム』シリーズには、本来なら制御しきれないはずの余剰エネルギーや放熱現象が、結果的に必殺技のような力へ変わった機体が存在します。V2ガンダムの「光の翼」、F91の「質量を持った残像」、そしてファントムの異様な発光現象を追うと、試作機ならではの危うさとロマンが見えてきます。
◆V2ガンダムの「光の翼」はなぜ武器になったのか 制御不能な余剰エネルギーの正体
宇宙世紀を代表する欠陥システムといえば、『機動戦士Vガンダム』に登場したV2ガンダムの光の翼でしょう。書籍『データコレクション(12) 機動戦士Vガンダム』(出版社:KADOKAWA、1999年9月27日)によると、胸部から背部にかけて、Vの字型にミノフスキー・ドライブ・ユニットが搭載されています。
これは通常の燃焼型機動装置とは異なる推進システムで、稼働に支障がない限りは亜高速まで加速することも可能です。ただ、本機に搭載されているミノフスキー・ドライブは不完全なものでした。
ミノフスキー・ドライブはユニット内部にミノフスキー粒子の力場を発生させ、任意の方向に反発推進力を獲得するシステムです。ただ、本機では急激な移動や機動を行うと、高エネルギー上のミノフスキー粒子が封じきれず放出されます。
これが光の翼と呼ばれる荷電粒子ビームです。光の翼は、ビームサーベルやビームシールドで形成するビームと同等の効果を持っており、最大稼働時には1キロメートルにも及ぶビーム帯を形成できます。
ただ欠点も多く、光の翼が展開された空間では、ミノフスキー粒子の力場が著しく乱れるため、他機体のミノフスキー・フライトは作動できません。また、巨大なビーム刃が発生するため、味方を巻き込んでしまう可能性もあります。
しかし、V2のパイロットであるウッソ・エヴィンは、そのセンスで光の翼は武装の一つとして使いこなしていました。
たとえば、アニメ第39話では超巨大な光の翼を発生させ、その間を通った機体をメガ粒子で機能障害を起こすという離れ技をやってのけます。
アニメ最終回では、ゴトラタンのメガ・ビーム・キャノンを、光の翼をシールドとして纏うことで防ぎ切りました。
◆F91の残像はただの幻ではなかった ラフレシアを誤認させた欠陥現象
『機動戦士ガンダムF91』(以下、『ガンダムF91』)の主役機であるガンダムF91(以下、F91)。本機を象徴する「質量を持った残像」も、システムの不完全さから生まれた現象です。
書籍『機動戦士ガンダムMS大図鑑 Part.5 コスモ・バビロニア建国戦争編』(出版:バンダイ出版、1991年6月1日出版)によると、F91にはマルチプル・コンストラクション・アーマー(MCA構造)という多機能装甲が採用されています。
これはリアクティブ・アーマーや耐ビーム・コーティングなどの機能を複合的に施した装甲です。そして、この複合装甲はF91の性能を最大限発揮する、最大稼働時の放熱時に有効に働きます。
モビルスーツは宇宙空間だと大気圏内のように放熱できません。そのため、F91では機体の冷却を行うのに、フェイスガードを両頬に収納しエアダクトを露出。それでも冷却が間に合わない場合は、金属剥離効果であるMEPEが起こります。
これはMCA構造の副産物で、放熱をラジエーターや触媒のみではなく、熱された装甲を剥離させることで実現します。このMEPEによって機動慣性方向に機体の輪郭および、ある程度の質量を持った残像が残るのです。
そして、F91の残像は主な材質が金属粒子であるため、レーダーなどの索敵装置やパイロットの肉眼には、まるで残像が発生しているように見えます。特に、同時期のモビルスーツやモビルアーマーはコンピューターグラフィックスでモニター画面を作っているため、この金属粒子で作られた残像に欺かれやすいのです。
実際、作中でもラフレシアがF91の残像を、F91本体と誤認。テンタクラー・ ロッドで残像を攻撃したところ、自らの機体を撃ち抜いてしまい、ラフレシアは自滅していました。この際カロッゾ・ロナが放った「質量を持った残像だというのか?」は、『ガンダムF91』を象徴するセリフとなっています。
◆ファントムはなぜ“幽霊”のように光るのか 未完成システムが生んだ異形の強さ
『機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト』に登場したファントム。本機にもV2ガンダムと同様に、ミノフスキー・ドライブが搭載されています。しかし、本機のシステムは、V2ガンダム以上に不安定なものでした。
『機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト 』第4巻によると、本機はサナリィで開発されていたF99レコードブレイカーのミノフスキー・ドライブ・ユニットと、クロスボーン・ガンダムのデータから開発したアマクサを掛け合わせて完成した機体とされています。
しかし、サナリィから盗用したミノフスキー・ドライブ・ユニットの技術は、木星の技術では再現できませんでした。それを無理やりコントロールするために、木星はIフィールドを別の制御系とともに組み込みます。
一応、ミノフスキー・ドライブのパーツ単体での噴射実験はある程度成功したものの、技術的な未熟さから、余剰エネルギーとなる光の翼が、かなり不安定となってしまいました。これを抑えるため、全身に小さな光の翼の噴射口を作りつつ、強力なIフィールドで外部から、ミノフスキー・ドライブの収束を抑え込もうとします。
しかし、その力のぶつかり合いがさらに不安定にさせ、光の翼が波打つように動くようになりました。これがファントム・ライトという現象です。
なお、ここまでしても放熱問題は解決しておらず、本機の使用限界は15分程度となりました。総合的要素を加味すると、本機のミノフスキー・ドライブ搭載機体としての完成度は、V2ガンダムと比べると50%ほどとされています。
しかし、収束のために取り付けたIフィールドが、結果的に機体全体にビームに対するバリアを展開することにつながりました。作中ではビーム兵器を寄せ付けず、ビーム・サーベルを手で掴み取る芸当を見せています。
もちろん、出力自体も凄まじく、大型モビルスーツであるガラハドを単純な推進力だけで振り回すほどのパワーを発揮しました。
──V2ガンダムの「光の翼」も、F91の「質量を持った残像」も、ファントムの「ファントム・ライト」も、最初から理想的な武装として設計されたものではありません。むしろ、制御しきれない余剰エネルギーや放熱、技術不足が表に出た結果として生まれた現象でした。
それでも、それらをただの欠陥で終わらせず、戦場で切り札に変えてしまうところに『ガンダム』らしい面白さがあります。完成された量産機にはない危うさと、パイロット次第で性能以上の力を発揮する爆発力。欠陥さえ武器に変わるからこそ、『ガンダム』シリーズには独特のロマンが宿っているのかもしれません。
〈文/北野ダイキ(ガンダム担当ライター)〉
《北野ダイキ》
『Real Sound』などで、アニメ・漫画を中心に執筆するライター。『アニギャラ☆REW』では、『ガンダム』シリーズの宇宙世紀作品をはじめ、モビルスーツの設定、外伝作品、関連書籍などを踏まえた解説記事を担当。定番の人気機体からマニアックな機体まで幅広く取り上げ、作品を見返すきっかけになるような情報整理を得意としている。
※サムネイル画像:バンダイ ホビーサイトより 『「MG 1/100 V2ガンダム Ver.Ka」 (C)創通・サンライズ』


