※本記事には複数の『ガンダム』作品の内容が含まれます。ご注意ください。
『ガンダム』ではあり合わせのパーツで修復された、いわゆる現地改修機がたびたび登場します。陸戦型ガンダムの現地改修機であるガンダムEz8、バイアランのカスタム機であるバイアラン・カスタム、そしてX1とX3のパーツを組み合わせたクロスボーン・ガンダム パッチワーク。あり合わせのパーツで組み上げられた機体誕生の経緯を知ると、ロマンの裏に隠れた前線ならではの切実な事情が見えてきます。
◆ガンダムEz8はなぜ無骨な姿になったのか 陸戦型ガンダムを変えた前線の事情
OVA『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』に登場するガンダムEz8。シロー・アマダ少尉の搭乗機で、ガンダムらしからぬ無骨な見た目が特徴の機体です。ちなみにプラモデル『HGUC 1/144 ガンダムEz8』の説明書によると、 Ez8の名は”08小隊特別機”を意味する、 Extra-Zero-8の略とされています。
本機はプラモデル『MG 1/100 RX-79[G] ガンダムEz-8』の説明書によると、アプサラスⅡとの戦いで中破した、シロー・アマダの陸戦型ガンダムを改修した機体です。そのため型式番号も、陸戦型ガンダムのナンバーを受け継がれました。
ただ、見た目は原型機と大きく異なっています。これは、陸戦型ガンダム自体が、RX-78-2の余剰パーツで建造されたため、戦線に供給される補修用のパーツが十分ではなかったことに起因しています。
そのため、改修には陸戦型ガンダムではなく、陸戦型ジムのパーツや、現地で調達された各種ジャンクパーツが使われました。結果、ユニットによっては、ほぼ現地調達の部品に置き換えられているようです。
たとえば、頭部はデュアルカメラ用のデバイスと、基本フレーム以外はオリジナルパーツから換装されています。
また、『ガンダムモビルスーツバイブル 55号』(出版社:デアゴスティーニ・ジャパン、2020年7月14日出版)によると、胴体の胸部増加装甲には、ザク・シールドを2枚重ねて流用した急造品となっています。このように、原型を止めないほどつぎはぎの状態ですが、原型機より性能は向上しました。
作中でも、マゼラ・アタックの主砲を近距離で喰らってもびくともせず、そのまま作戦行動を続けられる堅牢さを見せています。
◆バイアラン・カスタムはなぜ強かったのか 寄せ集めパーツが生んだ完成度
『機動戦士Zガンダム』にてカミーユのライバルである、ジェリド・メサが一時期搭乗したバイアラン。非可変機ながら非常に機動力に優れており、作中でもモビルスーツ形態のまま単独で飛行し、Zガンダムと拮抗する姿を見せています。
そんなバイアランの改修機が、バイアラン・カスタム。プラモデル『HGUC 1/144 バイアラン・カスタム』の説明書によると、本機は技術試験計画によって生み出された機体です。ただ、計画自体は軍事企業などで正式に発案、進行されたものではなく、そのすべてがトリントン基地の限られた人員によって行われています。
そのため、最新技術で改修された最新鋭の機体ではなく、既存技術をかき集めて強化された機体といえるでしょう。実際、書籍『ガンダムモビルスーツバイブル 103号』(出版社:デアゴスティーニ・ジャパン、2021年6月15日出版)によると、本機はさまざまなルートで集められた余剰部品、廃業寸前のパーツによって改修が行われています。
各部を構成するパーツも、ティターンズ製のモビルスーツからかき集めたもので、腕部のクローアームはガブスレイの脚部、脚部の踵のパーツにはバウンド・ドッグの大型クローが採用されています。
また、2号機ではギャプランの技術を取り入れ、大型ブースターを装備可能とし、高高度戦闘能力を獲得しました。このように、基本的には既存技術をツギハギにしたような機体ですが、本機の開発に関わったものたちの情熱からか、非常に完成度の高い機体となったようです。
『機動戦士ガンダムUC』の劇中でも、ジオン残党軍によるトリントン湾岸基地襲撃に際して出撃。自慢の機動力を活かして、ジオン残党のモビルスーツを、10機近く短時間で無力化しています。
◆X1パッチワークはなぜ戦えたのか 他機のパーツでよみがえった海賊ガンダム
『機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人』に登場した、クロスボーン・ガンダムX1(以下、X1)。キンケドゥ・ナウが木星戦役で運用したのち、トビア・アロナクスへと受け継がれ、クロスボーン・バンガード残党の主力として活躍しました。
そんなX1が月面での戦いで中破した際、クロスボーン・ガンダムX3(以下、X3)用に準備してあったパーツで補修した姿がクロスボーン・ガンダムX1 パッチワークです。本機はその名と経緯の通り、他機体のパーツをツギハギにして修復された機体となります。
『機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人』第1巻によると、X1は長きに渡って運用されたため、本編時点で既に補給パーツが底をつきかけていました。しかし、月面での戦いでは胸部ユニット、両腕部を激しく損傷しています。
そのため、完璧に修復できるほどのX1のパーツは用意できなかったのか、サナリィの倉庫で使い所がなく、奥底に眠っていたX3のパーツを使用して修復されました。そのため、黒白のボディーを持つX1に、ところどころ青白で塗装されたX3のパーツが使われ、非常に歪な見た目となっています。
ただ、クロスボーン・ガンダムはナンバーによって名称、カラー、形状は多少異なるものの、基本的には同仕様の機体です。そのため、見た目は非常に異なりますが、X3のパーツをX1に使うのに、特段不都合はありません。
つまり、パッチワークと言っても、バイアラン・カスタムやガンダムEz8のように、完全に別機体のパーツを使ったキメラ機ではないのです。なお、X3には腕部のIフィールドジェネレーターや、胸部ガトリングなどX1にはない独自の武装がありますが、パーツを移植したことで使用可能となりました。そのため、むしろX1よりパワーアップしているようです。
作中でも、インプルース・コルニグスとの戦闘で、ビームアックスを Iフィールドハンドで受け止め、逆転のきっかけを作るなどX3のパーツが有効に活用されています。
──決して設備や物資が整っているわけではない状況で、改修を受けたツギハギの機体たち。本来使用が想定されていないパーツを組み合わせながらも、原型機以上の性能を発揮できたのは、現場の情熱と、パイロットの卓越した腕があったからでしょう。
〈文/北野ダイキ(ガンダム担当ライター)〉
《北野ダイキ》
『Real Sound』などで、アニメ・漫画を中心に執筆するライター。『アニギャラ☆REW』では、『ガンダム』シリーズの宇宙世紀作品をはじめ、モビルスーツの設定、外伝作品、関連書籍などを踏まえた解説記事を担当。定番の人気機体からマニアックな機体まで幅広く取り上げ、作品を見返すきっかけになるような情報整理を得意としている。
※サムネイル画像:バンダイ ホビーサイトより 『「HGUC 1/144 ガンダムEz8」(C)創通・サンライズ』


