※本記事にはTVアニメ・原作漫画『ONE PIECE』の内容が含まれます。ご注意ください。
※本記事はTVアニメ・原作漫画『ONE PIECE』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。
東の海(イーストブルー)でルフィに敗れた小物、道化のバギー。しかし今、彼はジュラキュール・ミホークやサー・クロコダイルといった強者たちを従え、「四皇」の一角にまで上り詰めています。なぜ実力で劣る彼が、名だたる怪物たちを傘下に収めることができたのでしょうか。
その答えは、たんなる「運」の良さだけではなく、彼の異常なカリスマ性だと考えられます。そしてそのカリスマ性の正体とは、彼自身も気づいていない「無意識の覇王色の覇気」なのかもしれません。
◆バギーはなぜ人を従えてしまうのか “運”だけでは説明できないカリスマ
バギーが四皇にまで上り詰めることができた最大の要因。その異常なカリスマ性の正体は、数百万人に一人しか持たないとされる「王の資質」、すなわち“覇王色の覇気”である可能性があります。
ただし、彼の持つ力はルフィやシャンクスのように敵を圧倒して気絶させるものとは性質が異なっているといえるでしょう。「自身の周囲にいる人間を強烈に惹きつけ、味方に変えてしまう効果」だけが、常に全開で発動しているという極めて特殊な覇王色だと考えられます。
この「運」だけでは到底説明がつかない異常な現象が、もっとも顕著に現れたのが大監獄インペルダウンからの大脱獄のさなかでした。
脱獄の道中、バギーはルフィとともに行動していたため、脱獄の首謀者として勘違いをされ始めます。そしてバギーは本人の意思とは裏腹に、凶悪な囚人たちから完全にリーダーとして崇められていました。
そしてその後、脱獄を果たした第549話において、バギー自身が彼らをだましたわけではなく、海軍が放った通信によってバギーが「ロジャー海賊団の元船員」「四皇シャンクスの兄弟分」という過去の経歴が勝手に明かされたのです。
その驚愕の事実が明るみに出た瞬間、周囲の囚人たちはさらにバギーに魅了され、彼を絶対的な神輿として祭り上げました。
これは、彼の言葉の巧みさや戦闘力によるものではありません。バギーという存在そのものが周囲の人間の心を激しく揺さぶり、「この人についていけば間違いない」と盲信させてしまう覇王色特有の「人を惹きつける力」が働いていた何よりの証拠といえるのではないでしょうか。
バギーの恐るべき出世の根源は、彼自身すらも気づいていない「無意識の覇王色の覇気」にあるのかもしれません。彼は自分の意志とは関係なく、周囲のすべてを巻き込んで味方に変えてしまうもっとも不気味で厄介な「王の資質」の持ち主だといえるでしょう。
◆ミホークは何を見誤ったのか 操り人形のはずのバギーが組織を動かすまで
世界最強の剣士ミホークと、元王下七武海クロコダイル。この二人の知将による完璧なはずの計画を内側から崩壊させたのも、バギーの持つ異常な力でした。
七武海制度が撤廃され、平穏な暮らしを求めるミホークと、新たな軍事国家の設立という野望を抱くクロコダイル。第1056話にて彼らは、バギーの会社である「バギーズデリバリー」を吸収し、新たに「クロスギルド」としてバギーを表面上のボスに仕立て上げる計画を立てました。
自分たちの手を汚さず、海軍からのマークをバギーに集中させることで、安全な隠れ蓑と巨大な組織力を手に入れようとしたのです。しかしその計画は、バギーが放ったたった一言によって崩壊することになります。
第1082話において、ミホークたちの慎重な方針を完全に無視し、バギーは全社員に向けて「取りにいくぞォ!!!“ひとつなぎの大秘宝”!!!!」と涙ながらに叫び、ワンピース争奪戦への参戦を堂々と宣言してしまったのです。
この魂の演説に、バギーの「無意識の覇王色」に魅了された部下たちは賛同。クロスギルドという組織全体の意志は、完全にバギーの言葉一つで動くようになってしまったといえます。
ミホークたちが裏でどれだけバギーを脅し、従えようとしても、組織の末端を維持するためには、表向きはバギーの指示に従わざるを得ない状態になってしまったのです。安全な「操り人形」だったはずの男は、いつの間にか組織の進路を決定づける「本物の王」へと成り代わってしまいました。
第561話のマリンフォード頂上戦争において、ミホークはルフィの「次々と周囲を味方につける力」を、海においてもっとも恐るべき力であると見抜いていました。
しかしそんな彼でも、バギーが持つまったく同じ質の力を「ただの幸運」と見誤ってしまったのです。そのたった一つの油断によって、彼は自らがもっとも嫌う「世界の覇権争い」の最前線へと、強制的に引きずり出されてしまったのだといえるでしょう。
◆バギーは最終章のジョーカーなのか バラバラの実に残る覚醒の可能性
実力ではなく「運命」と「無意識の覇王色」によって四皇に選ばれた、偽りの王バギー。しかし、彼の周りで起きる現象を見ていると、世界そのものが彼を重要な舞台へと押し上げているようにさえ見えます。
その象徴的な場面が、第573話のマリンフォード頂上戦争でした。処刑台からエースが解放され、世界中が固唾をのんで見守る歴史的な瞬間に、よりにもよってバギーの姿が映像電伝虫を通じて全世界に生配信されていたのです。
重要な局面でなぜかスポットライトを浴びてしまう彼の「道化」という称号。これは、彼が物語の最終局面において、本物の王たちの運命を左右する予測不能な“ジョーカー”であることを示唆しているのではないでしょうか。
同時に、あのクロコダイルがバギーの側に残り続けているのも、たんに彼の持つ組織力や「運の良さ」だけに引きずられているわけではないのかもしれません。クロコダイルは第542話でインペルダウンの監獄獣を前に悪魔の実の「覚醒」について語りました。
「覚醒」について知見があるといえるクロコダイルの行動は、一見すると戦闘には不向きに思える「バラバラの実」が秘めた、将来的な覚醒の可能性に期待しているとも考えられます。
バギーの持つバラバラの実の能力は、第561話で世界最強の剣士ミホークの斬撃を完全に無効化したように、分離した体のパーツを空中に浮遊させ、バギーの思うがままに動かせます。
この能力が「自身以外にも影響を与える」という超人(パラミシア)系の覚醒を迎えたらどうなるでしょうか。周囲の地形や敵の要塞、さらには古代兵器すらも一瞬でバラバラに分解してしまう、究極の破壊能力へと進化する可能性があるのです。
バギーが放つ予測不能なカリスマと、バラバラの実が秘める覚醒の可能性。この二つの爆弾が、ルフィや黒ひげといった「本物の王」たちの進路をことごとく混乱させ、最終章の盤面をひっくり返す強力なジョーカーとなるのかもしれません。
──バギーが強者たちを従える本当の理由。それは、彼自身も気づいていない「無意識の覇王色の覇気」による圧倒的なカリスマ性にあるのではないでしょうか。
ミホークたちはその力を「ただの運」とあなどり、利用しようとした結果、逆に組織の主導権を完全に奪われてしまったといえるでしょう。
運命に選ばれた偽りの王。彼の予測不能なカリスマ性と、クロコダイルも期待を寄せる「バラバラの実」の覚醒の可能性。この二つが本物の王たちを混乱させ、最終戦争の行方を左右する最大のジョーカーとなるのかもしれません。
〈文/凪富駿(ONE PIECE担当ライター)〉
《凪富駿》
アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に活動するフリーライター。アニギャラ☆REWでは『ONE PIECE』関連記事を担当し、物語の伏線、キャラクターの関係性、名シーンの解釈などを読者目線でわかりやすく解説している。作品を読み返したくなるような記事制作を心がけている。
※サムネイル画像:Amazonより 『「ONE PIECE」105巻(出版社:集英社)』


