『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』の勢いがスゴイ──!

 『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』の初週末の興行収入が22.3億円を突破し、2024年公開作品ではNo.1のロケットスタートとなっています。しかも本作は二部作の第一弾ということで、この『ハイキュー!!』の熱はまだまだ続いていきそうです。

 これだけの人気を獲得していると、今まで『ハイキュー!!』を観ていなかった人もこれをきっかけに手を出してみようという人もいるのではないでしょうか。

 かくいう自分も、今回の映画に合わせて一から『ハイキュー!!』を知った身。実体験として今から『ハイキュー!!』を追っていくのに、最適な履修方法を紹介させていただきたいです。

◆今から『ハイキュー!!』を知るには「漫画を読む」のが一番? アニメや総集編映画が足りない部分は

 一から『ハイキュー!!』の物語を追っていく手立てとして現在、大きく分けて3つの手段があります。

 まずは原典でもある「原作漫画」、そして2014年から始まった「TVアニメ」、そしてそのTVアニメシリーズをまとめた「劇場版総集編」の3つがあります。いずれも一から物語を追っていけるのですが、結論から言ってこの中で一番の良いのが「原作漫画」でした。

 自分はまずは「TVアニメ」から観てみようと思って手を出したのですが、TVアニメシリーズは全部で第4期分という80話以上のボリュームがあります。その物量を知っていながら観始めたので、あまりにも先が長いことが分かっているとモチベーションが上がらず、序盤で挫折してしまいました。

 こういう時のための総集編! ということで続いては「劇場版総集編」に手を出してみたのですが、さすが総集編というべきか、試合内容やドラマがギュッと凝縮されていて、お手軽に物語を追えました。ただしここで一つ問題が起きます。今度はそこまで登場人物に愛着が湧かずに続きを観たくなる推進力がそこまで強く湧き上がってきませんでした。

 そこで、一度物語は追っているし序盤を「原作漫画」で追ってみようと思ったところ……ここで一気に引き込まれました。総集編で割愛されていた部分にこんな大事なドラマがあったのか、といった細かな部分がたくさん存在しており、先の長さなどは気にならず、どんどん先を読みたくなる気持ちにさせられました。

 受動的に物語が流れてくるTVアニメに比べると、能動的に読み進められる原作漫画の方が私の場合は向いていたようです。このあたりは人によって向き、不向きがあるかもしれないので受動派は「TVアニメ」、能動派は「漫画」を手にとって観るのがよいでしょう。

◆総集編映画で損なわれていた要素とは?

 今回「劇場版総集編」でいまいち乗り切れず、「原作漫画」で発見できた『ハイキュー!!』の良さはどこだったのか。それは『ハイキュー!!』の“部活物”ならではのドラマの部分でした。

 主人公の翔陽は中学生時代にバレー部自体がまともに成立していなくて、誰かとバレーができること──ましてや、試合ができること自体が特別な意味を持っていました。

 そんな中で友達に無理を言って試合に出てもらったり、女子バレー部に協力してもらったりと、高校生になるまでたくさんの努力や妥協を経てきたわけです。そういった背景を踏まえているかどうかで、高校生以降の物語が全然違った感触に変わっていきます。

 同様に高校生となった以降の本編の中でも、部活動だからこそライバル校となんども試合や練習を重ねたり、中には大会に敗退したことで部活動として道が断たれていく者のドラマにも注力していて、ただのバレーボール作品というよりもバレーボール“部”の作品として重厚な内容になっています。

 「劇場版総集編」は流れこそ追えますが、『ハイキュー!!』はこういった登場キャラクターのディテールこそが一番持ち味として活きている作品ということで、それらが割愛されてしまうのはもったいないです。「原作漫画」や「TVアニメ」で追っていくことを一番よいかもしれません。

◆今回の劇場版も初見で臨むにはもったいない?

 実は今回の『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』も、もったいないという意味では同様のことがいえます。

 今回の映画は完全にTVアニメシリーズからの続き物となっている上に、あまり詳細なキャラクター紹介などはされません。これまでのシリーズを見ていなくても映画の内容をスポーツ観戦のように楽しめるでしょうが、それぞれ選手の背景を知っているのといないのでは、一つ一つのシーンの見え方が全然変わってくるので、まったく知らないという人でも今回の映画は少しでも予習していった方が良いかもしれません。

 それどころか、今回は「原作漫画」の要素からも割愛された部分も存在します。TVアニメ派という人も今回に限っては、鑑賞前後で「原作漫画」に手を出してみると発見があるはずです。

 『ハイキュー!!』は歴史も長いので、なかなか今から一から追っていくには大変な作品なのは間違いないのですが、その厚み相当の感動が詰まっている作品です。

 この映画の公開という“お祭り”のタイミングでは、原作漫画の無料配信施策なども実施されたりと入りやすい配慮もされています。触れ損ねていたという人もこの機会に『ハイキュー!!』ワールドに臨んでみてはいかがでしょうか。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレターを配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi

※サムネイル画像:YouTubeチャンネル『TOHO animation チャンネル』より


アニメ『ハイキュー!!』公式サイト
©2024「ハイキュー‼」製作委員会 ©古舘春一/集英社

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