長らく日本で上映されるかどうか分からなかった映画の日本公開が発表されました。実写版の『ヒックとドラゴン』が今秋、日本で公開されます。

 海外でこそ特報映像が大々的に話題になるなど2025年の目玉作品という扱いの作品なのですが、日本ではもととなる“アニメーション映画版”の知名度のせいなのか、発表自体も少し遅れています。

 この実写版『ヒックとドラゴン』とはどういう映画なのでしょうか。

◆“知る人ぞ知る”? 人気作『ヒックとドラゴン』とは

 今回上映が発表された映画『ヒックとドラゴン』は、2010年に日本でも劇場公開された同名のアニメーション映画の実写版です。制作したのは『シュレック』や『ボス・ベイビー』、直近では『野生の島のロズ』のヒットも記憶に新しいドリームワークス・アニメーションです。

 物語の主人公はバイキングの一族である少年・ヒック。ドラゴンが住む世界を舞台に、ヒックが、敵対するはずのドラゴンの中でも危険とされている“ナイト・フューリー”と出会ったことをきっかけに危険だと思っていたドラゴンの正体に気づいていく──という内容です。

 第1作は世界的なヒット作となり映画シリーズは三部作が作られ、TVシリーズやスピンオフシリーズなどの展開に加え、今年アメリカのユニバーサル・オーランド・リゾート内には『ヒックとドラゴン』をテーマにしたエリアがオープン予定なほどの人気作です。

 それほどの大きなシリーズブランドなのですが日本での知名度は、「知る人ぞ知る」に落ち着いているというのが実際のところです。

 前述の映画三部作も、シリーズ1作目の公開時には同時期に公開された『トイ・ストーリー3』の大ヒットの影に隠れてしまい、目立った興行成績を残せませんでした。

 そのせいもあってなのか、シリーズ第2弾『ヒックとドラゴン2』に至っては、世界的なヒット作でありながらも日本では劇場公開もされず、直接ソフトのみが発売される形での日本上陸を果たしました。

 日本での扱いが不遇な一方で、熱意のある日本のファンの存在も確認ができる作品です。『ヒックとドラゴン2』が日本で劇場公開されなかった際には、上映を求める署名運動が行われ、映画の監督自身も参加を表明するほどの事態になっています。

 また、先月には『映画.com』がX(旧Twitter)の公式アカウントで投票企画“ドリームワークスアニメ勝手にトーナメント”が行われましたが、この企画でも『ヒックとドラゴン』が快挙を達成。

 この企画は歴代ドリームワークス・アニメーション作品46作品の中からトーナメント制で推し作品をユーザーが投票で選んでいき、もっとも票を集めた作品が勝ち上がっていくのですが、『シュレック』や『マダガスカル』といった人気シリーズを抑え決勝戦に上がれる3作を『ヒックとドラゴン』三部作が独占するという珍事態が発生。三部作での投票対決となり見事、第1作目の『ヒックとドラゴン』が優勝を果たしました。

 上映当時の興行成績で見たらほかの作品のほうが票を集めそうですが、『ヒックとドラゴン』シリーズはそれを覆すほどの圧倒的なシリーズ人気を見せつけました。

◆再現度は抜群! アニメーションがそのまま実写になっている?

 これだけの人気作ともなると“実写化”事態の取り組みに反発も発生しそうなところですが、今回の『ヒックとドラゴン』はその実写化の再現具合にも既に予告編の時点で多くの支持を獲得しています。

 というのも、現時点で明らかになっているシーンなどの多くはもととなるアニメーション映画版にかなり近い画作りをしているからです。

 今回主人公のヒック役を務めるメイソン・テムズさんのシルエットや顔立ちはもちろんのこと、ほかのキャラクターに至っても衣装の造形から元のアニメーションを踏襲したものとなっています。ヒックの父親であるストイック役に至っては、アニメーション版で声をあてていたジェラルド・バトラーさんが実写版でも同役を演じるという粋な計らいとなっています。

 そして驚きはヒックの相棒であるドラゴンのナイト・フューリーの造形です。確かに実在感のあるように質感などはアニメーション版よりもリアルに作られてはいますが、もともと持っていた愛嬌などを失っていない絶妙なデザインに落とし込まれています。

 なにより安心できるのはこの実写版の監督を務めているのが、元のアニメーション版の監督を務めたディーン・デュボアさんであることでしょう。

 実写化やリメイクなどの度に従来のファンは、オリジナル版とは別の人が余計な解釈を足したりしないかと不安に思ったりするところですが、本家本元のクリエイターがトップを務めているということで、制作布陣としても期待ができます。

 海外では6月から興行が始まるので、秋公開の日本は少し遅れての上陸にはなるのですが、大作ひしめく夏休みシーズンからはずれていることもあり、ラージフォーマット上映などの機会も得やすいであろうことから興行自体をじっくり展開できるのは、ユーザー側からしても良いことでしょう。

 今年こそ日本でも、『ヒックとドラゴン』が“知る人ぞ知る”なんて言わせないような“誰もが知る”作品になる年かもしれません。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteではアニメ映画ラブレターマガジンを配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi

※サムネイル画像:YouTubeチャンネル『ユニバーサル・ピクチャーズ公式』より

配給:東宝東和

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