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※本記事にはTVアニメ・原作漫画『北斗の拳』の内容が含まれます。ご注意ください。

※本記事はTVアニメ・原作漫画『北斗の拳』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。

 本当に北斗と南斗は互角の拳法なのでしょうか? 新作アニメ『北斗の拳 -FIST OF THE NORTH STAR-』第13話で牙大王は、ケンシロウとレイが戦えばどちらも相打ちになると踏んで、両者をけしかけていました。はたして、どこでそんな情報を仕入れたのでしょうか。また、この回ではマダラという隠し玉も登場。マダラの行動は、かつてケンシロウに挑んだ野生の虎と比較すると、ある違和感が残るのです。

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◆ケンシロウとレイは本当に相打ちだったのか 牙大王が信じた“互角説”の穴

 新作アニメ第13話の終盤で牙大王は、「表裏一体の北斗と南斗は互角の拳法。戦えば勝者はない。」と言っていました。確かに北斗神拳と南斗聖拳は「表裏一体」や「陰と陽」であると作中でも随所で語られてきましたが、互角の拳法とは一切言われていません。

 参考までに、武論尊先生と原哲夫先生が監修し1999年4月に発売された『北斗の拳 究極解説書 世紀末覇王列伝』(出版社:ホーム社)では、公式の最強キャラランキングが掲載されています。

 そこでは、最強のAAA評価となったのは、ケンシロウ、ラオウ、トキ、リュウケン、カイオウと全員が北斗の関係者で南斗の使い手は一人もいませんでした。このことからも、北斗と南斗が互角だったというのは、誤った解釈だと言わざるを得ないでしょう。

 それでは、なぜ牙大王は互角だと思い込んでしまったのでしょうか? そもそも牙大王は相撲の源流にもなったといわれる「華山角抵戯」の使い手で、北斗と南斗それぞれの拳法についてもある程度詳しい様子でした。

 しかし、牙大王からすると、どちらの使い手も自分とは実力差がありすぎて正確な強さを測り切れなかったと考えられます。そして、両者は表裏一体の拳法であるから、実力も同程度だと解釈してしまったのかもしれません。

 または、牙一族の情報収集能力の高さが裏目に出た可能性も考えられます。ここで注目したいのは、サウザーとラオウの関係です。サウザーは「南斗鳳凰拳」の使い手で、公式設定でも南斗聖拳最強の使い手として位置づけられています。ちなみにサウザーは、先ほどの公式ランキングでAA評価となっていました。

 そんなサウザーは、作中でも描かれたように、あのラオウですら戦いを避けた強敵なのです。原作では軽く流されましたが、実は2人のやり取りは『天の覇王 北斗の拳ラオウ外伝』で細かく描かれています。

 ここでは、聖帝の領地に侵攻してきたラオウとサウザーが一度戦うことになります。両者は互いの強さに驚愕し、サウザーから休戦を提案するのです。こうして、サウザーは拳王軍と同盟を結び相互不可侵の条約を交わすことになります。

 つまり、実質北斗と南斗は引き分けたことに……。もしかすると牙大王は、この情報を知っており、北斗と南斗は互角だと判断したのかもしれません。余談ですが、伝承者となったケンシロウを完膚なきまでに打ち負かしたのは実は作中で3人だけなのです。

 1人は、「北斗琉拳」の使い手であるカイオウ、残りの2人は「南斗孤鷲拳」のシン、そして「南斗鳳凰拳」のサウザーと南斗聖拳の使い手。……ひょっとしたら、牙大王の見立ては間違ってなかったのかもしれません。

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◆マダラはなぜ逃げなかったのか ケンシロウを恐れた野獣との違い

 牙一族の中で、最も野獣に近い特異な存在であるマダラ。そんなマダラは、ケンシロウをひと目見ただけで、彼が放つ「死神」の雰囲気に恐れを抱いていました。

 ここで比較したいのは、作中で描かれたケンシロウに立ち向かったもう1匹の野獣の存在。それが、コミックス第62話で登場した巨大な野生の虎です。

 先代北斗神拳伝承者リュウケンは、次期伝承者を決めるためケンシロウとラオウに対し暗殺者として「北斗神拳」をもって虎を仕留めよと課題を出していました。

 野生の虎は本能で相手の敵意を読むと説明されており、まずはケンシロウを威嚇します。しかし、執拗に威嚇するもケンシロウは微動だにせず虎の目を見つめ続け、なんと虎の戦意を喪失させたのです。

 リュウケンによると、このときのケンシロウは暗殺者として虎に命を落とす「覚悟」をさせたと解説しています。ちなみに、ラオウは襲い掛かる虎に対し闘気を放ち、虎を「恐怖」させていました。

 注目したいのは、野獣ならケンシロウを目の前にしたら戦いを放棄するのですが、なぜかマダラはケンシロウに立ち向かえたこと。これに関しては、2つの理由が考えられます。

 まず1つは、マダラの野生の本能がケンシロウとラオウの放つ敵意をかぎ分けた虎ほど鋭敏なものではなく、中途半端なものだったという可能性です。

 マダラの見た目は、ほかの牙一族の子どもたちとまったく異なります。牙大王の血が入っていることは間違いないのですが、もしかしたら本当に獣の血が混ざって誕生した存在なのかもしれません。だからこそ、野生も知性も中途半端だったと考えられるのです。

 しかし、もう1つ考えられるのはまったく逆の可能性です。それは、野獣のような見た目をしているマダラでも、人間であったから。牙一族は何より家族を大事にする一族です。つまり、マダラは野生が強いのですが、人間的な感情も残っており、一族を守るためにあえてケンシロウに立ち向かったとも解釈できます。

 とはいえ、ボスである牙大王の制止も聞いていなかったことから、ただ暴走していただけの可能性の方が高いのも事実……。そうなると、やはり前者の仮説が有力になるのかもしれません。

 

 ──公式資料では北斗側が高く評価されている一方で、シンやサウザーのようにケンシロウを追い詰めた南斗の使い手が存在するのも事実です。牙一族編は、北斗と南斗の共闘が初めて描かれたエピソードでもあります。レイやマミヤの活躍に注目されがちですが、改めて北斗神拳と南斗聖拳の関係に想いを馳せてみるのも面白いかもしれません。

〈文/fuku_yoshi〉

《fuku_yoshi》

出版社2社で約10年にわたり編集業務に従事した元編集者。男性向けライフスタイル誌やムック制作のほか、漫画編集者としての経験も持つ。現在はフリーライターとして、映画・アニメ・漫画などサブカルチャー領域を中心に記事を執筆。漫画考察記事では、元編集者の視点を活かし、作品内の描写や設定を論理的に読み解く記事制作を得意としている。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「北斗の拳」第7巻(出版社:コアミックス)』

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