※本記事にはTVアニメ・原作漫画『ONE PIECE』の内容が含まれます。ご注意ください。
※本記事はTVアニメ・原作漫画『ONE PIECE』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。
ビビがイム様にねらわれる理由は、彼女がアラバスタ王国の王女だからだけではないのかもしれません。虚の玉座の間で、イム様はルフィや黒ひげの手配書を傷つける一方、ビビの写真だけは静かに見つめていました。その違和感をたどると、800年前のリリィ女王、ネフェルタリ家に受け継がれた「D」の名、そしてビビが世界政府にとって危険な存在になり得る理由が見えてきます。
◆イム様はなぜビビを欲しがるのか 写真を傷つけなかった“特別な理由”
イム様がビビに対して見せる行動は、ルフィや黒ひげといった世界の秩序を脅かす外敵に向ける「排除の意志」とは明らかに性質が異なっているといえます。
第908話において、虚の玉座の間にいるイム様は、ルフィと黒ひげの手配書をバラバラに切り刻み、しらほしの写真には短剣を深く突き立てていました。これらは、自身の支配体制を揺るがす存在への怒りや、明確な敵意の現れであるといえるでしょう。
しかし、ビビの写真だけは傷つけることなく、手元で静かに見つめ続けていたのです。さらに、第1086話では「ビビが欲しい」と自身の口から直接その願望を明かしていました。
これらの描写こそ、イム様がビビを「破壊すべき敵」としてではなく、どうしても「自分の手に入れたい対象」として見ている決定的な証拠なのではないでしょうか。
世界を統べる王がそこまで彼女を求める背景には、800年前、最初の20人のなかで唯一自分の創り出した世界政府に残らず去っていった「最初の裏切り者」ネフェルタリ・D・リリィ女王の存在があるのかもしれません。
第1084話で、コブラ王の口からリリィ女王の過去が語られた際、描かれたそのシルエットはビビの容姿と酷似していました。イム様は、ビビの姿にかつて手に入れられなかったリリィ女王の面影を見出し、800年越しの歪んだ所有欲を抱いている可能性があります。
同時に、イム様は彼女がリリィと同じ「人々を動かし世界をひっくり返しかねない危険なカリスマ性」を受け継いでいることも強く警戒しているのかもしれません。
第1085話でイム様は「あの日のリリィのミスがなければ!!」と怒りをあらわにしていました。だからこそ、その血筋に宿る危険な力ごと、ビビのすべてを完全に自分の支配下に閉じ込めておきたいのではないでしょうか。
イム様がビビを執拗にねらう理由。それは、過去に自分を裏切ったリリィ女王への執着と、彼女が継ぐカリスマ性への警戒心が混ざり合った、極めて個人的で執念深い感情の現れだといえるでしょう。
◆ビビに受け継がれたものとは リリィ女王が残した“夜明け”の意味
イム様がそこまでして警戒しているリリィ女王の「危険な力」とは、いったいどのようなものなのでしょうか。
第1085話でのイム様の発言によれば、リリィ女王こそが「歴史の本文(ポーネグリフ)」を世界中に拡散させ、「空白の100年」の真実を遠い未来へと託した張本人だったとされています。
世界政府がしいていた絶対的な情報統制の網をかいくぐり、世界の嘘を暴くための手がかりをあえて残した彼女は、800年前にたった一人で巨大な権力に反旗を翻した、最初の「革命家」とも呼べる存在だといえるでしょう。
リリィ女王が命をかけて残したその反逆の意志は、彼女が国を託したネフェルタリ家へ向けて遺した手紙の文面にも、はっきりと刻み込まれていました。
第1085話でコブラ王の口から明かされたその内容には、「歴史の本文(ポーネグリフ)を守りなさい」という明確な命令とともに、「ゆく世界に夜明けの旗をかかげ」という未来の希望に満ちた強いメッセージが込められていたのです。
これは彼女が反逆の決断をした時点で、800年後の未来に自分と同じ「D」の名を持つ者たちが必ず現れ、再び世界をひっくり返すための大きな嵐を呼ぶことを予知していた証拠ではないでしょうか。その来たるべき大変革の日のために、彼女は数百年先を見据えて、あらかじめ未来への重要な種を蒔いていたと考えられます。
だからこそ、ビビがその身に宿しているものは、たんなる一国の王女としての血筋だけではありません。それは、800年前に世界の闇へと立ち向かい、未来に世界の夜明けを託したリリィ女王の「反逆の意志」そのものだった可能性があります。
ビビに流れるネフェルタリ家の血筋とその内に秘められた本質こそが、イム様による長きにわたる絶対的な世界支配を終わらせる、もっとも強力なカギを握っているのかもしれません。
◆ビビは世界政府の嘘を暴くのか モルガンズの元で変わる王女の役割
ビビを手に入れたいというイム様の強い執着は、結果として世界政府にとって最大級の誤算を生み出すことになりました。
イム様がビビの身柄を最優先のターゲットとしてCP0に追わせた結果、第1074話で皮肉にも彼女は、世界でもっとも政府による情報の操作を嫌う“ビッグ・ニュース”モルガンズの元へと逃げ込むことになったのです。
現在ビビは、世界政府の力が及びにくい空を飛ぶ世界最大の「情報インフラ」のど真ん中に身を置いています。そして彼女の知らないところで、聖地マリージョアでの悲劇の目撃者であるサボが、「ネフェルタリ家はDの一族だった」という世界を揺るがすもう一つの衝撃的な真実を革命軍へともたらしていました。
革命軍によってもたらされた「ネフェルタリ家のDの名」という重要な秘密が、モルガンズの元にいるビビ本人とつながった瞬間、彼女の果たすべき役割は一変すると考えられます。
これまでは政府の流す嘘のニュースに怒りを見せるだけだった一国の王女が、今度は自らの“声”で、自らに流れる“血筋”の真実を全世界に向けて告発する。彼女は、亡き父の無念を晴らし、先祖であるリリィ女王の意志を継ぐため、世界政府が隠蔽してきた統治システムを空の上から大暴露する最強の「語り手」へと覚醒すると考えられます。
イム様のたった一つの執着が、最悪の形で裏目に出たといえるでしょう。彼はビビを追い詰めたことで、結果的に「サボが知る歴史の真実」と「モルガンズが持つ強大な情報網」、そして「ビビ自身が持つ圧倒的なカリスマ性」という政府を終わらせかねない三つの最悪のカードを合流させてしまったのです。
彼が手に入れようとした籠の中の鳥は、今や全世界に夜明けを告げるもっとも危険な「革命の象徴」へと羽化しようとしているのかもしれません。
──イム様がビビに執着する理由は、たんなる敵意だけでは説明しきれません。そこには、800年前に世界政府から離れたリリィ女王への執念と、ネフェルタリ家に受け継がれた「D」の名、そしてビビ自身が持つ人々を動かす力への警戒が重なっているようにも見えます。
しかし、その執着は世界政府にとって大きな誤算になるかもしれません。ビビは今、モルガンズという世界有数の情報発信源に近い場所にいます。父コブラの死、ネフェルタリ家の真実、そして世界政府が隠してきた歴史を知ったとき、彼女は守られるだけの王女ではなく、世界に声を届ける存在へ変わる可能性があります。かつてアラバスタを救われたビビが、今度はルフィたちとともに世界の夜明けを告げる側に立つのかもしれません。
〈文/凪富駿(ONE PIECE担当ライター)〉
《凪富駿》
アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に活動するフリーライター。アニギャラ☆REWでは『ONE PIECE』関連記事を担当し、物語の伏線、キャラクターの関係性、名シーンの解釈などを読者目線でわかりやすく解説している。作品を読み返したくなるような記事制作を心がけている。
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