ヒソカは常に自分より強い敵と戦いたがっていますが、ハンター試験ではメンチに戦いを仕掛けず、合格を優先していました。また、キメラアントが猛威を振るっていたときは登場していません。
肝心なときには現れず、弱い敵や念能力を使えない幻影旅団の団員ばかりを倒している印象がありますが、ヒソカには最高のバトルを楽しみたいがゆえの苦労も……。せっかくの強敵と戦えるチャンスにヒソカは何を考え、どのような行動をしていたのでしょうか?
◆ヒソカがハンターライセンス獲得にこだわった理由は?
ヒソカはハンター試験の最終試験前にネテロとの面談で、ハンターになりたい理由として人の命を奪っても免責になる場合が多いからと答えています。しかし、一番の目的はクロロと戦うためです。
そもそもヒソカが幻影旅団に入った目的がクロロと戦うことでしたが、なかなかそのチャンスを得られませんでした。なぜなら幻影旅団としての活動後、クロロを追ってもハンターライセンスがないと入れない国や地域に上手く逃げられてしまっていたからです。
そこでヒソカは自分もハンターライセンスを取ろうと考えますが、1年目はムカつく試験官を瀕死の状態に追い込んで不合格となりました。しかし、2年目もヒソカは2次試験の試験官メンチと戦いたくてウズウズしており、試験中ずっと敵意を放ち続けます。
さすがに2年連続同じ理由で不合格を避けたかったため、自分から仕掛けるのは我慢していました。敵意を向けてメンチをイライラさせて、戦いになるよう仕向けていたわけです。
しかし、ケンカッ早そうなメンチも、試験官としての責任感を優先したのか我慢します。それもあって、ヒソカはハンター試験に合格できたうえ、ゴンやキルアという将来楽しみにな逸材に出会えたのだから、うれしい誤算といえるでしょう。
◆才能あるカストロの命をあっさり奪った理由は?
ヒソカは最初の戦いでカストロの才能を見抜いて、再戦を楽しむため命は奪わずに果実が育つのをじっと待つことを選びました。
そして、2年後の2度目の戦いでこれ以上強くならないとあっさり見限って命を奪いますが、これはカストロが良い師匠に巡り合えないと判断したからだと思われます。
カストロは強化系の念能力者で虎咬拳の威力は、ヒソカの腕を簡単にちぎり飛ばすほどです。その優れた才能を分身(ダブル)で無駄遣いしてしまったことも大きかったですが、良い師匠のもと修業をやり直して、強化系を極めていけばさらに強くなる可能性は残っていました。
しかし、カストロの性格は「お前の洗礼がなければ私はここまで強くなれなかった」などセリフの端々に自惚れの強さが出ており、自分大好きのナルシストです。独学で分身(ダブル)を作り出せたのも、自分の姿への思い入れが強かったからでしょう。
『HUNTER×HUNTER』では、良い師匠に巡り合えるかどうかも、強くなるための重要な素質の一つとして描かれています。ゴンやキルアはウイングに念能力について教わり、グリードアイランドで偶然出会った実力者のビスケにも教えを請いレベルアップしました。
また、ハンターに敗れたヂートゥやレオルたちはメルエムのもとに逃げ込み、シャウアプフによって自分に適した念能力を手に入れています。つまり、強くなるためには人に教えを請う素直さや謙虚さも必要だということです。
ヒソカは2度目の戦いで、自惚れが強くナルシストのカストロは適した師匠に巡り合う素質がなく、メモリの無駄遣いばかりを繰り返すと判断したのだと思われます。
もしくはヒソカのように1人でも強くなっていける類まれなセンスを期待していたのかもしれませんが、残念ながらカストロにはそれもありませんでした。
◆ヒソカはキメラアントの発生中に何をしてた?
キメラアントがNGLに現れたとき、ヒソカは護衛軍をはじめ強敵と戦うチャンスでしたが出番がなかったです。このときヒソカはクロロと戦うために、彼の後を追いかけているところでした。
しかし、クロロはヒソカと戦うための準備を整えるまで逃げ回っており、実現しません。その結果、ヒソカはキメラアントと戦うチャンスも逃してしまいます。
ヒソカもクロロを捕まえるのは無理と悟ったのか、ハンター協会会長選が始まると十二支んをターゲットに変えようかと考え始めていました。しかも、強敵と戦えるようにイルミにマネージャーをしてくれないかと頼んでいます。
ヒソカがイルミにプロデュースしてもらえていれば、キメラアントと戦えていたかもしれません。幻影旅団の戦いから推測すると兵隊長レベルには楽勝でしょうが、護衛軍と戦っていたらどうなるのか見てみたかった読者は多いハズ。
◆ヒソカはなぜシャルナークやコルトピの命を奪った?
ヒソカは天空闘技場でクロロとの戦いに敗れた後、シャルナークとコルトピの命を奪います。これは2人から念能力を借りていたクロロに負い目を感じさせて、自分の命を狙わせるためでした。
ヒソカはクロロに負けたことで、相手の土俵で戦って勝つのは難しいと悟ります。もう1度クロロに戦いを挑んでも逃げられ、再戦が叶ったとしてもヒソカに勝つための念能力を手に入れ、準備が整ったときでしょう。
しかし、幻影旅団の団員の命を奪えば、クロロがヒソカへの復讐命令を出すはずです。しかも、狙うターゲットがクロロに能力を貸していて、満足に戦えなかったシャルナークとコルトピであれば効果は高くなります。
クロロが彼らの死に負い目を感じて、自らヒソカを倒しに来ると踏んだのでしょう。その狙い通り、暗黒大陸を目指すブラックホエール号内で幻影旅団は躍起になってヒソカを探しており、一応早い物勝ちというルールですが、クロロは自分でヤル気マンマンです。
冨樫義博先生は『HUNTER×HUNTER』0巻の一問一答コーナーで、「今後、クラピカは、幻影旅団はどうなるのでしょうか?」という質問に「全員死にます」と答えています。
もしかしたら、ヒソカとの戦いで多くの旅団メンバーが命を落とす展開になるのかもしれません。
◆ヒソカはどうして自分をターゲットとしてゾルデック家に依頼しなかった?
暗黒大陸編でヒソカは自分の命を狙うようイルミに依頼を出していますが、最初からゾルディック家に依頼していれば早い段階でシルバやゼノといった強敵と戦えた可能性があります。
しかし、ゾルディック家は仕事を達成するためなら手段を選ばないので、1対1の戦いを楽しみたいヒソカにとっては望む形ではなかったのでしょう。
キルアの発言から考えると、ゾルディック家はターゲットの行動をチェックして、狙いやすい日を決めて仕事に移ります。ゾルディック家の仕事で一番大切なことは待つことであり、確実に任務をこなすため相手の隙を突くわけです。
つまり、隙がなければいつまでも襲ってこない可能性があります。また、あくまで仕事をこなすことが優先のため、相手が強敵であればクロロ戦のようにゼノとシルバ2人で戦う可能性も高いです。
しかし、そう考えると一つの矛盾が浮かんで来ます。どうしてブラックホエール号では、イルミに自分をターゲットにする依頼を出したのでしょうか? イルミはカルトと2人で行動していますし、ヒソカを狙うチャンスを待って隙を突いて襲って来るはずです。
これには3つの可能性が考えられます。1つはブラックホエール号内という限られた空間の中での遭遇戦なので、一方的に狙われるわけではなくヒソカから見つけて襲うチャンスも十分あります。
また、幻影旅団のメンバーはヒソカを見つけたらすぐ襲ってくることは確実なので、イルミが動かずチャンスをうかがっていても退屈しません。むしろ幻影旅団との戦いがある分、イルミがヒソカの隙を突いて襲いやすくなっているといえるでしょう。
2つ目はクロロに負けて一度死んだヒソカは、死後強まる念によって息を吹き返してパワーアップしていることです。そのため、95点のイルミであればカルトがオマケで付いて来ても問題ない、というよりそのほうが楽しいバトルができると考えたのかもしれません。
3つ目は、イルミがヒソカから別の依頼を受けている可能性です。前述したとおり、ヒソカは強い敵と戦えるようにイルミにマネージャーをしてくれないかと頼んだことがあります。
このことを本気で考えていたなら、イルミに幻影旅団内に入り込んでもらって、ヒソカがクロロと1対1で再戦できる状況をプロデュースする依頼もしているかもしれません。もちろん、ヒソカをターゲットとする依頼も出しているでしょう。
ヒソカがクロロに勝てば、その後は依頼通りにイルミとの戦いになり、クロロに負けて命を落としても、依頼達成ということでイルミに報酬が支払われる契約になっていそうです。
──ヒソカはウボォーギンと同じバトル好きですが、タイプが異なっていてその行動は複雑です。自分を100点として強い敵には自ら挑み、80点くらいを超える有能な相手からは恨みを買って自分を狙うように仕向けます。
ブラックホエール号での幻影旅団との戦いはヒソカがクロロを見つけて挑むチャンスもあり、彼を恨む旅団員が狙って来る状態でもあります。まさにヒソカの思惑にうってつけの舞台といえるでしょう。
〈文/諫山就〉
《諫山就》
フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。
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