冨樫義博先生の作品にはインパクトのあるセリフや言い回しが多く、ネットミーム化しているものも少なくありません。

 たとえば『幽☆遊☆白書』の「残像だ」や、後に広辞苑に載るほどまでに広まった『レベルE』の「斜め上」などがそれにあたります。

 例にもれず、『HUNTER×HUNTER』にも、ネットミーム化しているセリフが多くあります。

◆エッチな投稿によく使われる?──「恐ろしく早い手刀、俺でなきゃ見逃しちゃうね。」

 クロロがネオンを気絶させる際に高速で放った手刀に気づいたモブキャラクターのセリフです。

 これは『HUNTER×HUNTER』のセリフの中でもかなり有名で、2022年の「M-1グランプリ」でお笑いコンビ・真空ジェシカがネタに使ったことでも話題になりました。

 このセリフは、X(旧Twitter)に投稿された投稿に、恐ろしい速さで「いいね」が付いたときや、投稿が瞬く間に拡散されたときなど、物事が早い展開で進んでいる際、「俺でなきゃ見逃しちゃうね。」といったように使われます。

 また、お色気あふれる写真がXに投稿されたとき、「恐ろしく早い●●(エッチな言葉)、俺でなきゃ見逃しちゃうね。」といったような感じで使われることも……。

 このようにセリフそのものの面白さと、それぞれが好きなように改変して使える汎用性の高さが相まって、ネットでも特に人気のミーム化したセリフとなっています。

◆聖書を使った秀逸な例え?──「オレたちの中に背信者(ユダ)がいるぜ」

 おもに「裏切り者」や「嘘つき」のようなニュアンスで使われる、ネットミーム「ユダ」はこのセリフからです。

 幻影旅団がヨークシンシティのオークションをジャックした際に、先にオークションの品だけが何者かに盗まれていたことに対し「オレたちの中に背信者(ユダ)がいるぜ」とウボォーギンが発したセリフです。

 ネットでは、主にXや匿名掲示板で鍵アカウントを監視目的でフォローし、その内容を流出させるような人のことを言う場合が多いです。

 また恋人がいるのにネットで非モテ芸をしているような人のことを言う場合もあり、「Twitterにはぼっちがあふれているのに街中はカップルであふれている。Twitterはユダがいる。」のような使われ方をすることもあります。

◆中二病全開で人気?──「クセになってんだ 音殺して動くの」

 このセリフは、たとえば「クセになってんだ 夜中ポテチ食べるの」のようにセリフを改変して使われることが多いです。

 20222024年に開催された「冨樫義博展 –PUZZLE-」では、上記のセリフをネタにした「キルアの『クセになってんだ音殺して動くの』ルームシューズ」というグッズが発売されています。

 公式からもネタにされたことを受け、当時Xでは「めちゃくちゃ笑った」「ほしい」と話題になりました。

 作中では人並外れて聴覚の優れるセンリツでさえ、ごくわずかにしかキルアの足音を聞き取れなかったことへの指摘に対し、キルアがこのセリフを発しました。

 子供の頃から暗殺者としての教育を受けてきたという、キルアの境遇を考えれば何気ない会話ではあるものの、そこはかとなくただよう中二病っぽさから何かとネタにされることが多いです。

 ネットではたびたび、『地獄のミサワ』風に描かれたキルアのイラストにこのセリフをそえた画像がXのリプライで用いられることもあります。

◆味方の敗因を連想?──「凝をおこたるなよ」

 ゴンたちの尾行に気付いたクロロが、マチとシズクに対して警戒するように伝えたセリフです。

 この発言をした少し前のエピソードでウボォーギンが凝を怠りクラピカとの戦闘で負けてしまったこと、のちのエピソードでビスケが「何か怪しい雰囲気を感じたら何をおいても“凝”」というように凝が基本中の基本だと発言をしたことなどからファンの間でネタになり、何かとミーム的に使われるようになります。

 ネットでは「春から大学生のみんなへ 凝をおこたるなよ」のように注意喚起的な意味合いで使われることや、SNSなどでは『HUNTER×HUNTER』とは無関係のゲームのキャプチャにこのセリフを添えた投稿をするなど意味もなく使われることも多いです。

 最近では、Vtuberの天鬼ぷるるさんがXで、『HUNTER×HUNTER』の話題をポストした際に「凝をおこたるなよ」という引用やリプライが多く集まりました。

 ──このように、『HUNTER×HUNTER』の話題に対して、とりあえずこのセリフを言っておくというような使われ方をすることも多いです。

 これらのセリフは今でもネットではミームとして使われることもしばしばあり、原作を読んだことがない人でも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

 休載の多い漫画の代名詞的存在にも関わらず今なお愛され続けるのは、インパクトが強くてついつい日常会話で使いたくなるようなセリフの存在も一因なのかもしれません。

〈文/michel

 

※サムネイル画像:Amazonより

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