カルトがキメラ・アント討伐のときに口にした「兄さんを取り戻すため」という言葉の意味、幻影旅団に入った理由は多くのファンから考察されていますが、いまだに答えが明らかになっていません。
はたして「兄さん」は誰のことをさし、カルトが幻影旅団で何をしようとしているのかを考察していきます。
◆「兄さん」が示す兄弟は誰?
カルトは末っ子のためイルミ、ミルキ、キルア、アルカと4人の年上の兄弟がいます。しかし、カルトが「兄さんを取り戻すため」発言をしたときにゾルディック家を出ていたという点を考えると、「兄さん」が示す者はやはりキルアになるでしょう。
イルミ、ミルキはゾルディック家にいて家業を手伝っていましたし、アルカは監禁状態でした。一方でキルアは母親を刺して家出をしており、おもしろそうだったという理由からハンター試験を受けます。
そこでゴンたちと巡り会うわけですが、イルミによって一度家に連れ戻されることに……。しかし、その後ゴンたちがキルアを迎えに来ると、シルバと話をつけて再びゾルディック家を出て旅立っています。
そのため、カルトが家を出て行ったキルアを取り戻したいと考えているのは間違いないでしょう。ただ、カルトがキルアを慕っているという描写はないため、どうしてそこまで執着しているのかは不明です。
◆ゾルディック家相関図から見るカルトとキルアの関係
驚くことに作中でカルトとキルアの絡みはなく、2人が普段どのような関係なのかは描かれていません。しかし、単行本第31巻に掲載されているゾルディック家相関図を見ると、カルトがキルアを慕っていることは推察できます。
相関図でも2人の直接的な関係性は示されていませんが、カルトはアルカに嫉妬の感情を抱いていることが分かります。キルアとアルカは相思相愛となっていますから、カルトが嫉妬している理由はキルアでしょう。
また、カルトは母親のキキョウとも相思相愛関係。ゴンたちがキルアを迎えに来たときも、彼らを追い返そうと現れた母親に付き従っていました。
キキョウはキルアのことを溺愛しており、カルトもこの影響を少なからず受けていると考えられます。この2点からカルトはキルアへ相当強い執着心を持っていると判断してよいでしょう。
そもそもイルミやミルキはお世辞にも兄として甘えたり遊んでもらったりしたい存在とは言い難いです。キルアはアルカへの接し方を見ても面倒見がよく、年下の子供の扱いもうまいですからカルトが慕うようになるのも当然でしょう。
◆幻影旅団に入った目的はキルアを守るため?
カルトは「グリードアイランド編」のときに幻影旅団に入っていましたが、このことがキルアを取り戻すことにどうつながるのかは謎です。ただ、旅団に入った目的の一つはキルアを守るためなのではないかと推察されます。
グリードアイランドを落札するためのお金を作るために、キルアたちは幻影旅団をターゲットとしていました。その結果ゴンと一緒に捕まっており、運が悪ければこのときに命を奪われていてもおかしくはなかったです。
この時点では鎖野郎がクラピカであるという認識を持っておらず、イルミから仕掛けられていた針の効果もあってかキルアはノブナガとの駆け引きにも冷静に対処して逃げ出すことに成功。しかし、カルトとしては大事な兄、ゾルディック家からすれば期待の跡取りを失っていたかもしれない由々しき事態でした。
このことから再びキルアが幻影旅団とぶつかるような状況になったときに、カルトがクモ内部にいればその情報を迅速にシルバやゼノに伝えられます。そうすればキルアが幻影旅団に命を奪われるような事態を避けるために動けますし、カルトも内部から妨害したりキルアを手助けしたりもできるでしょう。
イルミの針によってキルアはピンチになれば逃げるよう思考が操作されていましたが、幻影旅団に本格的にねらわれるとそれだけで生き延びれるかは心もとないです。カルトの旅団入団は、キルアのための保険の意味合いもあるのだと考えられます。
◆幻影旅団をキルアの居場所にして一緒に過ごすため?
カルトはフェイタンとザザンの戦いを見て「No.2くらいならすぐとか思ったけど」と発言していました。このことから強くなって幻影旅団でのし上がることも目的の一つだと考えられます。
すぐにでもNo.2になって、ゆくゆくは団長の座に就くことがカルトのねらいだったのではないでしょうか。シルバはかつて仕事で幻影旅団のメンバーを倒しており、息子たちにはクモに手を出すなと警告しています。
ゾルディック家としては将来的にカルトが団長になれば、旅団との衝突も避けられるという思惑があったのかもしれません。また、カルトからすればキルアが家業を継がない選択をするということも危惧しているでしょう。
キルアは家業が嫌で1度家出をしたあと、また旅立っています。シルバは戻ってくると自信満々でしたが、カルトからすればこのまま帰って来ないのではないかという心配も大きいはずです。
もしキルアが戻らないと決断したとき、ゾルディック家より比較的自由に行動できる旅団は闇の住人にとってうってつけの居場所となるでしょう。そのときにカルトが幻影旅団を自分のものとしていれば、キルアを何の障害もなく迎え入れられます。
実際に現在幻影旅団に入っているイルミとカルトは行動を共にしていることから、キルアもメンバーになれば一緒に過ごす時間を増やせるでしょう。はたしてカルトのキルアへの執着心の強さと原因が今後明かされるときが来るのでしょうか。
──新しいエピソードではゴンと同じく出番がまったくないキルア。カキン国の王位継承戦も大詰めを迎え、いよいよ暗黒大陸に到着すれば新たな展開を迎えそうです。暗黒大陸と関係があるアルカと一緒に行動しているキルアの再登場も切望されます。
〈文/諫山就 @z0hJH0VTJP82488〉
《諫山就》
アニメ・漫画・医療・金融に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。かつてはゲームプランナーとして『影牢II -Dark illusion-』などの開発に携わり、エンパワーヘルスケア株式会社にて医療コラムの執筆・構成・ディレクション業務に従事。サッカー・映画・グルメ・お笑いなども得意ジャンルで、現在YouTubeでコントシナリオも執筆中。
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