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※本記事には漫画『HUNTER×HUNTER』の内容が含まれます。ご注意ください。

※本記事は漫画『HUNTER×HUNTER』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。

 しばしばファンの間でも物議が醸されている幻影旅団の行動。その一つが、ヒソカへの対応とクラピカへの対応の違いです。ともに団員の命を奪った存在ですが、クラピカに関しては放置という対応で、ヒソカに対しては全力で狩る姿勢を見せています。この違いの理由はなんなのでしょうか?

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◆旅団はなぜ復讐より存続を選ぶのか クロロが守ろうとした“蜘蛛”の掟

 まず、最初に幻影旅団の行動の違いにおいてもっとも注目したいのが、旅団の独特な価値観です。その象徴ともいえるのが、コミックス第114話で語られた団長・クロロ=ルシルフルの考え方。

 クロロは、たとえ自分が命を落としても、仲間が命を落としたとしても、「生かすべきは旅団」であると語っています。このことから、「幻影旅団」の存続が最優先事項の掟であることが分かるのです。

 この掟が決められた経緯は、コミックス第38巻の幻影旅団の回想編で明かされました。それは、流星街において二度とサラサのような被害者を出さないため……。そのために、クロロが「幻影旅団」という恐怖のシステムを生み出して、世界が流星街に手を出せないようにデザインしたのです。

◆クラピカとヒソカは何が違うのか 旅団が受けた“損害”の決定的な差

 ここであらためて、クラピカとヒソカがそれぞれ旅団に与えた被害を振り返ってみましょう。

 ヨークシンシティ編では、鎖野郎ことクラピカによってウボォーギンが、そして直接手を下したわけではないですが、パクノダも命を落としました。一方で暗黒大陸編では、ヒソカによってシャルナークとコルトピが命を奪われています。

 実はクラピカから被害を受けた際、旅団内で唯一現在のヒソカへの対応のように総力を上げて鎖野郎の討伐を唱えていた人物がいました。それがノブナガです。

 しかし、ノブナガの意見はクロロ自らの判断で却下されています。ここで注目したいのは、クロロが却下した理由。それが、組織における各々のポジションだったのです。

 まず、第104話でクロロは、ウボォーギンやノブナガの仕事は特攻部隊であり、命を落とすことは折り込み済みのポジションだと言っています。

 一方で、シズク、パクノダ、シャルナークは情報・処理部隊で、旅団全体の行動を補佐する生命線だと語っているのです。おそらく、コルトピも能力から推察するに、この後方支援の部隊であったと考えられるでしょう。

 つまり、旅団を生かすという掟の損得から単純計算すると、クラピカによって命を奪われたウボォーギンの被害は、旅団としてはある程度想定の範囲内だった可能性が浮かび上がってきます。

 またパクノダに関しても、クラピカは生き残るチャンスを与えていましたが、自ら命を落とす結末を受け入れていました。何より、パクノダは「記憶弾(メモリーボム)」でクラピカの弱点を味方に共有したので、「生かすべきは個よりも旅団」の掟を最期に実行していたことになります。

 つまり、彼女の被害に関しても、クロロが常日頃から語っている掟を遵守した結果ともいえるでしょう。これは、旅団にとっては手痛くはあっても広義的に見たら敵の弱点を知れたので必要最低限の被害だったとも捉えられます。

 一方で、シャルナークとコルトピの被害に関しては、幻影旅団の生命線を脅かす損害です。もちろんかなりの損害ですが、ここまでなら、まだ鎖野郎と同じく放置した方が旅団にとってはメリットだったかもしれません。

 しかし、ヒソカは旅団全員を倒すまで闘い続けると宣戦布告しているのです。これは、明確に旅団の「掟」に対する敵対行為になります。

 つまり、「幻影旅団の存亡」という観点から見たら、クラピカとヒソカでは旅団にもたらした被害は比較にならないのです。だからこそ旅団は、クラピカへの復讐よりもヒソカへの対処を優先しているのでしょう。

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◆クロロは本当に冷静なのか ヒソカ狩りににじむ団長の私情

 クラピカとヒソカに対する対応の違いには、実は被害的な側面だけでなく、もう一つ大きな理由があります。それがクロロの「感情」のタガが外れかけていることです。

 もともと幻影旅団は、仲間への思い入れが強い集団だったことが判明しています。事実、旅団立ち上げの直接的な動機は、サラサという仲間がやられたことによる復讐でした。

 しかし、クロロはあくまでも旅団をシステムとして「機械的」にデザインしてきたのです。そしてクロロ自身も、誰よりも機械的に目的のために決断を下そうとしてきました。実際、仲間を失って涙を流したノブナガに対しても、冷静かつ論理的に諭しています。

 確かに、トップが機械的に判断できるなら、「幻影旅団」というシステムはずっと存続できるでしょう。だからこそ、掟の一つに「団長の命令は最優先」だというルールを作ったのかもしれません。

 しかし、幻影旅団は「機械」ではなく「人間」の集団なのです。事実、仲間たちの中には旅団存続を最優先事項と認識しつつも、個人の命を簡単に切り捨てることに躊躇している人物もいました。たとえば、第114話でのパクノダは、「たとえそれが旅団に対する裏切りでも……!!」と掟よりも団長救出を優先しています。

 実は、クロロ自身も口では機械的に旅団の掟を遂行しようとしていますが、ヒソカによる被害のあとは感情を抑えきれなくなっている描写が多いのです。

 たとえば、第405話でボノレノフによって明かされたNo.9を永久欠番にした事実。No.9はパクノダの団員ナンバーです。さらに、第406話でも「相反する二つの感情を統率する事が難しくなってきている」とクロロ自身も感じています。

 これは、察するに「団長としての理性的な感情」と「クロロ個人としての人間的な感情」のことでしょう。仲間を失って一番悔しかったのはクロロのはずです。なぜなら昔のクロロは、たった一人の少女(サラサ)のために涙を流し、二度と同じような被害者を出さないよう人生を賭けることができる誰よりも優しい少年だったから。

 そんなクロロだからこそ、シャルナークとコルトピを喪った原因についても、天空競技場でヒソカの「死後強まる念」の可能性に思い至らなかった自分を責めているのかもしれません。

 そう考えた場合、「ヒソカの首を獲って来い」と命じた団長は、どちらの感情からだったのでしょうか……。クロロは鎖野郎に私怨を向けたノブナガを諌める際、こう言っていました。

 「旅団の立場を忘れてダダをこねてんのはオレとお前、どっちだ?」。奇しくもその言葉は、クロロ自身の胸にブーメランとなって突き刺さっているのかもしれません。

 

 ──6月29日発売の『週刊少年ジャンプ』31号より、『HUNTER×HUNTER』の最新話が掲載されています。現在、ブラックホエール1号には、幻影旅団をはじめ、クラピカ、ヒソカが乗船しています。王位継承戦の裏で錯綜する三つ巴の思惑がどう描かれるのか……。本誌の最新話とあわせてコミックスを読み返すと、より楽しめるのかもしれません。

〈文/fuku_yoshi〉

《fuku_yoshi》

出版社2社で約10年にわたり編集業務に従事した元編集者。男性向けライフスタイル誌やムック制作のほか、漫画編集者としての経験も持つ。現在はフリーライターとして、映画・アニメ・漫画などサブカルチャー領域を中心に記事を執筆。漫画考察記事では、元編集者の視点を活かし、作品内の描写や設定を論理的に読み解く記事制作を得意としている。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『DVD「HUNTER×HUNTER」Vol.5(販売元:バップ)』

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