<この記事にはTVアニメ、原作漫画『鬼滅の刃』のネタバレが少し含まれます。ご注意ください。>
5月12日から放送が始まる、テレビアニメ『「鬼滅の刃」柱稽古編』は、これまでのように鬼との激しい戦いが中心ではないことから、今までのエピソードに比べるといささか地味に感じるかもしれません。しかし、このエピソードは次の最終決戦である「無限城編」につながる重要なポイントが描かれています。
◆義勇と実弥の関係は? 柱同士の関係が密に描かれる
たとえば『柱稽古編』では今まで描かれてこなかった柱同士の関係が描かれます。
これまで炭治郎が柱と一緒に戦うことがあっても、柱同士の関係はあまり描かれていませんでした。唯一、柱合会議で柱同士の関係が垣間見えますが、それでも鬼の禰豆子を連れた炭治郎の裁判が中心だったため、メインでは描かれていません。
しかし、『柱稽古編』では柱が隊員たちに稽古をつけるだけでなく、柱同士でも手合わせをしているため、柱同士の関係が描かれているのです。たとえば、水柱の冨岡義勇と風柱の不死川実弥の手合わせでは、義勇が実弥をどう思っているのかが描かれます。
義勇は柱合会議のときの様子からして実弥からあまりよく思われていません。しかし、義勇が実弥に対してどう思っているのかは、これまで彼の本心が語られていないうえ、彼の態度からでは分かりませんでした。しかし、ふたりが手合わせした後に、義勇が実弥に好物を渡したら仲良くなれると思うと炭治郎に語っていたことから、実は実弥と仲良くなりたかったことがうかがえます。
また、柱同士の関係以外にも、まだ戦闘シーンが描かれていない柱が刀を振るったり、鬼殺隊最強の人物が明かされたりして、柱の実情が描かれます。最終決戦の前に柱の実情を描くことで、最終決戦での柱同士の変化などがより分かるでしょう。
◆最終決戦前に覚悟を決める隊員たち
また、『柱稽古編』ではそれぞれが最終決戦に向けて覚悟を決めます。
たとえば、義勇は鬼殺隊の入隊試験である最終選別で錆兎に守られて鬼を倒していないことから、自身は水柱ではないと思い込み、当初は柱稽古にも参加しませんでした。
しかし、自宅に引きこもっていたところ、お館様から義勇を頼まれた炭治郎が来訪し、彼を説得します。そして、義勇は炭治郎の一言に心を動かされ、覚悟を決めて柱稽古に参加しました。その後、義勇は最終決戦で柱としての自覚を持ち、水柱の名にふさわしい活躍を見せます。この柱としての自覚や活躍は柱稽古がなければ、なかったかもしれません。
また、善逸も義勇と同じく『柱稽古編』を経て最終決戦への覚悟を決めます。当初、善逸は柱稽古でもいつものように騒ぎ立てたり弱音をこぼしたりしていました。しかし、チュン太郎からとある手紙を受け取った善逸は、いつもの様子から一変して「やらなくちゃいけないことがはっきりした」と言います。そしてとある目標を掲げ、最終決戦へ覚悟を決めたようでした。
このように柱稽古編ではキャラの背景が語られたり、とある事態が発生したりして、それぞれが最終決戦へ向けて覚悟を決めます。各々がどのような覚悟で最終決戦に挑むのか語られることで、この先に待ち受ける戦いがよりアツいものになるでしょう。
◆最終決戦へ向けて胡蝶しのぶの役割
柱稽古では義勇以外にも蟲柱の胡蝶しのぶが稽古に参加していません。彼女には最終決戦へ向けて大切な役割があるからです。
しのぶは鬼殺隊の中でも珍しく薬学に通じており、鬼を倒す毒を作り出します。彼女は体格が小さく腕力が足りないことから鬼の頸を落とせませんが、持ち前の知識を生かして毒で鬼を倒す珍しい剣士です。
しのぶはその知識や実績から、柱稽古には参加せずにとある人物と協力して最終決戦へ向けて薬を開発します。
しのぶは柱稽古に参加しないことから、彼女の継子である栗花落カナヲに柱稽古へ参加しない理由や復讐相手への秘策を語るシーン以外は、登場しないかもしれません。
しかし、その裏で最終決戦へ向けてさまざまな薬を開発する大きな役割を担い、鬼殺隊を支えていたのです。登場するシーンは少ないものの彼女が映る貴重なシーンは、最終決戦につながる重要なポイントといえるでしょう。
──このようにテレビアニメ『「鬼滅の刃」柱稽古編』では、最終決戦へ向けていくつもの重要なポイントが描かれます。今までのような鬼との派手なアクションや長編ではありませんが、このエピソードを抜きにして最終決戦は語れません。『柱稽古編』で描かれることが最終決戦にどうつながるのか、注目してみるとこの先に描かれるであろう無限城編をより楽しめるでしょう。
〈文/林星来 @seira_hayashi〉
フリーライターとして活動中。子供の頃から培ってきたアニメ知識を活かして、話題のアニメを中心に執筆。アニメ以外のジャンルでは、葬儀・遺品整理・金融・恋愛などの記事もさまざまなメディアで執筆しています。