<この記事にはTVアニメ、原作漫画『鬼滅の刃』のネタバレが含まれます。ご注意ください。>
『鬼滅の刃』では師匠のいない伊之助が異常に強かったり、善逸の鎹鴉がスズメだったり謎のまま終わった気になるポイントも多いです。その中には、今考えると鬼舞辻無惨を倒すのに、地味に重要だったと思われるものもあります。
次の4つは多くの読者が疑問に思い、今でも気になっているポイントでしょう。
◆鬼殺隊士でナンバー1の天才は伊之助?
嘴平伊之助には師匠がおらず、剣術も呼吸も我流で習得しています。『鬼滅の刃』には柱をはじめ、多くの才能あふれる鬼殺隊士が登場しますが、その中でも自ら呼吸を編み出した伊之助は天才的といえるでしょう。
口グセは「猪突猛進」であり、性格も粗暴のため天才肌という印象はありません。しかし、野生の中で培った直感と闘争本能、センスはズバ抜けたものがあります。
伊之助は特に触覚が優れており、集中することで空気のかすかな揺らぎすら感知。直接触れていないものでも察知でき、視線や殺気に対してはさらに敏感です。
また、生命力・回復力が高く、毒が効きにくい体質となっています。ドラマCD「嘴平伊之助の力比べ」のエピソードで伊之助は、鬼から逃げて来た鬼殺隊士を打ち負かしたり、奪った日輪刀で鬼を倒したりしており、このときにはすでに獣の呼吸を身に着けていました。
さらに最終選別では、いち早く合格して一足先に下山しています。このことから、もともと持ち合わせているスペックがものすごい高いといえるでしょう。
また、竈門炭治郎と出会って仲間と協力することを覚え、強い鬼と戦うことで作戦の重要性も理解していきます。生き残るため、強くなるための吸収力はとんでもなく、自分を高めるために猪突猛進して行ける能力こそ伊之助を天才たらしめている要因でしょう。
◆鬼殺隊士の伝令役はなぜカラスだった?
伝令役として鎹鴉が割り当てられいますが、なぜハトや九官鳥でなくカラスだったのでしょうか。これはカラスの能力や特徴など、考えられたうえでの絶妙な選択だったといえます。
話す鳥であれば九官鳥やオウム、インコなどもいます。九官鳥は江戸時代には輸入されていたといわれており、産屋敷なら集めて訓練させることができたでしょう。また、ハトも古くに日本に持ち込まれており、レース鳩のように鍛えれば何百キロも飛ぶ能力があります。
しかし、カラスは人間にたとえると7歳程度の知能があるとされており、人の言葉をマネして話すようにもなります。記憶力が良く人の顔を覚えるのも得意です。
また、ゴミ捨てのときに遭遇した経験がある人も多いでしょうが、カラスは人を恐れません。山はもちろん人里にも生息しているので、カラスがどこにいても不自然さは感じないでしょう。
さらにハトには意外と天敵が多く、その中にカラスも含まれています。つまり、ハトや九官鳥、オウムよりもカラスのほうが適任だといえるでしょう。そのため、産屋敷家も知能や弱肉強食の観点から、カラスを伝令役に選んだのかもしれません。
◆善逸の鎹鴉はなぜスズメだったのか?
ほかの鬼殺隊士の伝令役はカラスだったのに対して、我妻善逸だけスズメのチュン太郎でした。1人だけスズメをあてがわれたのは、善逸の実力と関係している可能性があります。
『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録』には、強い隊士には飛行の速いカラスがつくとあります。また、野生のカラスの寿命は10~15年なのに対して、スズメは1~2年といわれています。
善逸は最終選別で生き残ったものの、もっとも弱いと評価されて長生きしないと思われていたのかもしれません。実際に本人も「死ぬ~死ぬ~」とよく叫んでいますし、全集中の呼吸の中でも基本とされる五大流派の1つ、雷の呼吸を教わりながら壱ノ型霹靂一閃しか使えませんでした。
そのため、善逸が戦闘で早く命を落とすと考えていたら、伝令役に寿命が短いスズメを選んだ理由もうなづけます。ただ、善逸は並外れた鋭い聴覚を持っており、絶対音感も持っています。
そのため、人の言葉を話せないチュン太郎の鳴き声、イントネーション、音の高低を聞き分けることで話している内容が分かると考えたのかもしれません。実際に善逸はチュン太郎とコミュニケーションは取れていたように見えます。
ほかには単純にカラスの数が足りなかった、カラスを伝令に使っているのが鬼にも知られてスズメにシフトしようとしていたという可能性も考えられるでしょう。
◆厄除の面はむしろ災厄を招いていた?
鱗滝左近次は炭治郎をはじめとした教え子たちに、厄除の面をプレゼントしています。その名の通り厄を取り除く効果があるとされていますが、鱗滝にうらみを持つ手鬼に狙われるきっかけとなってしまいました。
錆兎や真菰もこの厄除の面が鱗滝の関係者である証明となり、手鬼から復讐の的とされてしまいます。そのうらみの深さはかなりのもので、錆兎は頭をつぶされ真菰は四肢をもがれるなど、無残な最期を遂げることになりました。
手鬼が鱗滝へのうらみを晴らすための犠牲となったのは、錆兎と真菰を含めて13人。このことから厄除の面は、むしろ厄災を招いていたのではないかと思えてしまいます。
しかし、厄除の面は鱗滝の天狗の面と同じ彫り方で作ったもので、炭治郎の額の傷や錆兎の口元の傷など、所有者の特徴をとらえた模様が刻まれています。鱗滝が贈る相手のために、精魂込めて作ったことは間違いないでしょう。
そのため、とんでもない効果があるわけではないですが、身に着けている人を守る何らかの効果はあると思われます。
実際に炭治郎が手鬼に吹っ飛ばされたときに厄除の面が割れて、失神を免れたような描写がありました。また、冨岡義勇の最終選別でもお面が割れているので、代わりに攻撃を受けてくれたと思われます。
残念ながら炭治郎のお面が割れてからは、厄除の面は出番がなくなってしまいました。その後に柱となる義勇、鬼舞辻無惨を倒す鍵となった炭治郎を救ったのだとすれば、厄除の面は鬼殺隊と鬼との戦いの結末にも影響する働きをしたといえるでしょう。
──原作は完結した『鬼滅の刃』ですが、これからまだ明かされていない設定や裏ストーリーが出て来る可能性もあります。アニメでもオリジナルシーンが追加されており、「大正コソコソ噂話」でもきっと新しい発見があることでしょう。
〈文/諫山就〉
《諫山就》
フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。
※鬼舞辻の「辻」は「一点しんにょう」が正式表記となります。
※サムネイル画像:Amazonより