<この記事にはアニメ・原作漫画『鬼滅の刃』のネタバレが登場します。ご注意ください。>
竈門炭治郎がつけている耳飾りや黒い日輪刀と日の呼吸の関係は、原作ストーリーの中ではあまりしっかりと語られていません。また、タイトルロゴの「黒い輪」も「日の呼吸」と関係しているといわれており、『鬼滅の刃』をより深く楽しむためにもおさえておきたい設定となっています。
◆色変わりの刀と呼ばれる日輪刀
日輪刀は色変わりの刀と呼ばれており、変色前の刀に隊士が触ると呼吸の適性に応じて色が変化するのが特徴です。基本の5色に加えてそこから派生したものがあり、能力が高いほど色が濃くなる特性を持っています。
基本の5色は炎の呼吸の赤色、水の呼吸の青色、風の呼吸の緑色、雷の呼吸の黄色、岩の呼吸の灰色です。刀身が薄赤紫色になる花の呼吸、桃色の恋の呼吸などは基本の5つから派生したものとなります。
これは肉体や剣術の素養に応じて色が変わるため、使う呼吸の技に影響されるものではありません。順番的には柱の元で修業をして技を覚えてから最終選別に挑み、合格すれば自分専用の日輪刀を打ってもらえます。
そのため、覚えた呼吸と日輪刀の色が合致しないことも多いです。その場合、隊士は最終選別後に呼吸を変えるかどうかの選択を迫られることになります。
実際に炭治郎は鱗滝左近次の元で水の呼吸を覚えましたが、日輪刀は青色ではなく黒色になりました。このとき仮に黄色に変わっていたら、炭治郎はその後雷の呼吸を覚えることになっていたかもしれません。
黒色の日輪刀は新しい派生色というわけではなく、過去にも見れらたものでした。しかし、その正体は謎に包まれていたため、炭治郎はそのまま水の呼吸を使うことにしたのでしょう。
◆黒い日輪刀の秘密と無惨との関係
炭治郎の日輪刀は黒い色に変わっており、これこそすべての全集中の呼吸の源である日の呼吸の適性がある証です。また、隊士たちの間では黒刀は出世できないまま早死にするという話がまことしやかに広まっていましたが、これには鬼舞辻無惨の存在が大きく関わっています。
最初に呼吸を生み出したのは継国縁壱であり、日の呼吸の使い手である彼の日輪刀は黒色でした。刀鍛冶の里で隊士訓練用の絡繰人形、縁壱零式の中にあった黒刀が彼のものだったと推察されます。
漆黒の深みが段違いだといわれており、炭治郎は最終的にこの刀身に煉獄杏寿郎の形見である鍔を付けて使っていました。作中に登場した黒い刀の使い手は炭治郎と縁壱のみとなっているので、かなりレアなものといえるでしょう。
煉獄からも「黒刀か!それはきついな!」、「黒刀の剣士が柱になったのを見た事がない」といわれていました。もともと使い手が少ないというのもありますが、実は黒刀がレアなのには無惨も大きく関係しています。
それは無惨が自分にとって脅威となる日の呼吸の使い手の命を積極的に奪っていたからです。黒死牟とともに日の呼吸狩りを行って根絶やしにしたため、後世に黒刀の情報が伝わらなくなってしまいました。
このため早死にする、出世できない色だといわれることになります。隊士からすればお先真っ黒というイメージだったのでしょうが、すべての色を混ぜると黒色になるように始まりの呼吸である日の呼吸にふさわしい色といえるでしょう。
◆炭治郎が耳飾りをしていた経緯
炭治郎は始まりの呼吸の剣士である縁壱と同じ日の呼吸を使い、彼がつけていた耳飾りを受け継いでいます。また、髪の色も同じく赤みがかっており、炭治郎が縁壱の子孫であるような設定が多いですがこれはミスリードでした。
炭治郎は昏睡状態のときや戦いの途中に何度か祖先の記憶を見ています。祖先である竈門炭吉が初めて登場したのは、単行本の第12巻第99話「誰かの夢」です。
炭吉とその妻であるすやこ、彼らと縁壱の出会いは本編では描かれていませんが、単行本第22巻のおまけページ「戦国コソコソ話」に掲載されています。炭吉夫妻が住んでいたのはもともとは縁壱の家であり、2人が鬼に襲われているところを助けたのがきっかけでした。
そこから付き合いが始まり、縁壱が心を許せる相手は炭吉たちだけという関係になります。そして、2年後に再び訪れたときに自分のミスで無惨を取り逃がしたこと、兄の厳勝が鬼(上弦の壱の黒死牟)になったことで落ち込んでいた縁壱が胸の内を告白。
このとき縁壱はすやこにせがまれて日の呼吸の型を見せ、それを目に焼き付けた炭吉が耳飾りとともに後世に伝えていく約束をします。その結果、日の呼吸はヒノカミ神楽に形を変えて受け継がれていきました。
この後、無惨が日の呼吸の使い手を根絶やしにしたため、ヒノカミ神楽だけが残ります。もし神楽に形を変えていなければ、無惨を倒す手立ては途絶えていたでしょう。
呼吸の使い手ではなく関係のない炭焼きの炭吉に託した縁壱、そしてヒノカミ神楽として後世に伝えた炭吉のファインプレイといえます。無惨を倒すために日の呼吸を生み出し、戦いに一生をささげたといえる縁壱。
しかし、結果的に無惨を倒す決め手となったのは、戦場からふと離れたひとときでした。炭吉夫妻とその娘であるすみれを見て、自分が守るべきものを再認識した瞬間だったからこそ未来の隊士が無惨討伐を果たすという結果につながったのかもしれません。
◆ロゴに隠された日の呼吸・十三の型の秘密
『鬼滅の刃』のタイトルロゴで、「鬼」の漢字の上下に刺さるように描かれている赤と黒の輪。この黒い輪には日の呼吸の十二の型を繰り返して円環を成すことで、13個目の型になるという伏線が込められていたと考察されています。
『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐』(出版社:集英社 2021年2月出版)の日の呼吸の紹介ページには、タイトルロゴの輪の周りに十二の型の名称が記載。そして、「日の呼吸は十二の型を繰り返すことで円環を成し、それが十三個目の型となる」とも記されています。
つまり無惨を滅する鍵となる日の呼吸の奥義、十三の型は12個の型を繰り返すことで生まれるという意味です。また、壱の型の円舞と十二の型の炎舞の読みが同じなのも、それを示唆する伏線となっていました。
始まりの呼吸である日の呼吸の使い手、縁壱にも「えん」が含まれており縁(えにし)の最初を意味する名前となっています。十二の型のつながり、縁壱からその後の呼吸の使い手となる隊士たちへのつながりが無惨を滅する刃となるという想いが込められているとも考えられるでしょう。
──「鬼」の字にある「ム」は無惨を表しているという推察もあり、炭治郎が覚えた水の呼吸と杏寿郎から受け継いだ刀の鍔は「滅」の字にある「さんずい」と「火」から考えられたのかもしれません。ストーリーがおもしろいのは誰もが知るところですが、『鬼滅の刃』はタイトルロゴを考察するだけでも楽しめる作品といえるでしょう。
〈文/諫山就〉
《諫山就》
アニメ・漫画・医療・金融に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。かつてはゲームプランナーとして『影牢II -Dark illusion-』などの開発に携わり、エンパワーヘルスケア株式会社にて医療コラムの執筆・構成・ディレクション業務に従事。サッカー・映画・グルメ・お笑いなども得意ジャンルで、現在YouTubeでコントシナリオも執筆中。X(旧Twitter)⇒@z0hJH0VTJP82488
※サムネイル画像:Amazonより 『「鬼滅の刃」第10巻(出版社:集英社)』
※鬼舞辻の「辻」は「一点しんにょう」が正しい表記となります。
※煉獄杏寿郎の「煉」は「火」+「東」が正しい表記となります。