『キン肉マン』には、変わった笑い方や口グセを持つキャラクターがいます。完璧超人始祖編で登場した完璧・無量大数軍(パーフェクト・ラージナンバーズ)は特にユニークで、登場シーンはもはや一発ギャグ集団にしか見えないと話題になりました。
その中には、明らかにキャラがブレていたり、ねらってキャラ付けしていたりする超人も。しかし、やり続けることで笑い方がその超人の代名詞として定着したものもあります。
◆一発ギャグ集団の優等生サイコマン(グリムリパー)
サイコマン(グリムリパー)の笑い声は「ニャガニャガ」で、完璧・無量大数軍(パーフェクト・ラージナンバーズ)の中でも飛び抜けてインパクトが強いです。そのため、SNSでもネタにされており、「ニャガニャガさん」と呼ぶ人もいるほど。
サイコマンやグリムリパーといわれても、ピンと来ない人も多いと思います。しかし、「ニャガニャガさん」と言われたら、「あの超人か」とすぐ頭にイメージが湧くのではないでしょうか。
実は登場して間もない頃は、「ニョゴニョゴ」も使っていました。つまり、最初は手探り状態でキャラがブレていたわけです。
しかし、「ニャガニャガ」のほうがウケが良いと感じたのでしょう。バッファローマン・スプリングマンとのタッグマッチに勝利したあたりから、「ニャガニャガ」を推そうと決めたようです。
よほど手ごたえを感じたのか、正体をバラしてグリムリパーと名乗ってからも「ニャガニャガ」を使っています。理解できないけど流行るフレーズという意味では、ハリウッドザコシショーさんの「ハンマカンマ」を連想させる一発ギャグと言えるでしょう。
◆ねらってキャラ付けしていたストロング・ザ・武道(ザ・マン)
ストロング・ザ・武道(ザ・マン)の笑い方は「グロロ~」です。ことあるごとに使っていたのでキン肉マンも印象が強かったのか、のちに「グロロの大将」と呼んでいるシーンがありました。
奇をてらったフレーズながらも、笑い方としてはギリギリ意味合いが通じる範囲といえるでしょう。ストロング・ザ・武道と名乗っていたときは不自然なほど多用していましたが、正体を明かしてザ・マンとなってからは「グロロ~」をほぼ使っていません。
つまり、ストロング・ザ・武道のキャラ付けとして「グロロ~」を使っていたのだと思われます。そういう意味では、ハンバーグ師匠のときは「ハンバーグ!」を連呼するも、スピードワゴンのときはあまり使わない井戸田潤さんと同じタイプといえるかもしれません。
◆キャラクターを活かした一発ギャグ超人たち
よだれ掛けをしている赤ちゃん姿の超人ピークア・ブーは「ホギャホギャ」、犬の姿のダルメシマンは「ガウガウ」、蛇口を模した超人ジャック・チーは「ジャジャジャー」が口グセです。見た目を活かしているので、実にシンプルで分かりやすくなっています。
このほかにも、ピークア・ブーは「ホンギャホンギャ」「バブー」、悲鳴では「ホギャラー」など赤ちゃんをイメージしたものが多いです。また、ダルメシマンも「ギャンギャンギャン」「ウォーンウォンウォン」、悲鳴では「キャイーン」など犬の鳴き声そのままとなっています。
見た目とリンクした一発ギャグといえば、なかやまきんに君さんの「パワー」です。「パワー」のほかにも「ヤー」「どっちなんだい!?」など、手数が多いところも似ています。
このタイプの一発ギャグはやり続けることで、時代が追い付いてバズるときが来るに違いありません。
◆せっかくのキャラクターを活かせず迷走した完璧超人
両肩に龍の首のギミックを備えたマーベラスの笑い声は「キュワキュワ」。カジキマグロがモチーフになっているマーリンマンは、「ピヨピヨ」「ピヤピヤ」という笑い声をあげています。
龍と「キュワキュワ」はピンとこないですし、「ピヨピヨ」はカジキマグロというよりヒヨコを思い浮かべる人のほうが多いでしょう。どちらも意味が分かりにくく、スベっている感じは否めません。
ストロング・ザ・武道は完璧・無量大数軍(パーフェクト・ラージナンバーズ)のリーダーなのですから、エド・はるみさんの「コー」、レイザーラモンHGさんの「フォー」のように動きを付けたほうがいいとアドバイスしてあげるべきでした。ストロング・ザ・武道として自分のキャラ付けに必死で、そんな余裕がなかったのでしょうか。
マーベラスはラーメンマン、マーリンマンはアトランティスと戦って命を落とします。そのため、1戦だけの登場だったことも響いているのでしょう。
出番が多ければサイコマン(グリムリパー)の「ニャガニャガ」のように、バズる可能性を秘めていたのかもしれません。
──子供のころに『キン肉マン』を観ていた人の中には、ミスターカーメンの「マキマキー」という笑い方が印象に残っているのではないでしょうか。1987年にキン肉星王位争奪編が終了から、25年ほどが経過して再び連載されている『キン肉マン』。
ストーリーのおもしろさはもちろん、超人たちの笑い声や口グセもパワーアップしています。7月から放送されるアニメでは、超人たちの個性を声優さんがどのように表現してくれるのか楽しみです。
〈文/諫山就〉
《諫山就》
フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。
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