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※本記事にはTVアニメ・原作漫画『キン肉マン』のネタバレが含まれます。ご注意ください。

※本記事はTVアニメ・原作漫画『キン肉マン』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。

 『キン肉マン』は、勢いのある名場面ほど、読み返したときに「なぜそうなる?」と立ち止まりたくなる作品です。ウォーズマンの体内で背骨を上る五重の塔、突然飛び出したロビンパワー、ブロッケンJr.の過激な行動。子どものころはそのまま受け入れていた描写も、あらためて追うと、作品ならではの理屈と勢いが見えてきます。

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◆ウォーズマンの体内はなぜ「縦」に進めたのか 五重の塔に残る重力の謎

 悪魔六騎士編で強い印象を残したのが、ウォーズマンの体内に現れた五重の塔リングです。キン肉マンたちは、ウォーズマンの背骨を上っていくように描かれました。ところが、外のウォーズマンは地面に横たわっています。普通に考えると、体内の上下関係がどうなっているのか気になる場面です。

 この疑問は、王位争奪編に登場した立体浮遊リングを思い出すと、少し見え方が変わります。ソルジャーチームとフェニックスチームが戦った立体浮遊リングは、サイコロのような六面体のリングで、上面以外のリングでも選手たちが普通に立っていました。中央部には重力を制御する装置があり、各面に対して自然に立てるような仕組みがあると説明されています。

 ウォーズマンは機械超人です。もし体内にそれと近い重力制御の仕組みが組み込まれていたなら、外から見て横たわっていても、体内では足側へ重力がかかるように調整されていたと考えられます。人間なら体に大きな負担がかかりそうですが、ウォーズマンは機械の体を持つため、内部の重力方向が一定のほうが安定する可能性もあります。

 さらに、ウォーズマンの代表技であるスクリュー・ドライバーは、猛烈な回転で相手へ突進する技です。あれほどの回転運動を行うなら、体内の各部にかかる負荷も相当なものになるはずです。体内重力を一定方向に制御する仕組みがあったとすれば、そうした負担を抑えるための機構だったとも考えられます。

 つまり、ウォーズマンが仰向けだったにもかかわらず、キン肉マンたちが背骨を上っていた描写は、たんなる不思議シーンではなく、機械超人ならではの内部構造として解釈できる余地があります。勢いで描かれたように見える場面にも、後からもっともらしい理由を見つけられるのが『キン肉マン』らしい面白さです。

◆ロビンパワーとは何だったのか ガラス片からベルを作った謎の力

 フェニックスチームとのシックスメンタッグマッチでは、ロビンマスクが突如として「ロビンパワー」を見せました。ガラスの破片から大きなベルを作り出すという場面は、今読み返してもかなり唐突です。読者の中には、思わず「ロビンパワーとは何なのか」と感じた人も多かったはずです。

 この場面では、ザ・サムライが「風鈴の音色は実にいいものだのう」とロビンにヒントを与えます。そこからロビンは風鈴作戦を思いつき、マスクの上から髪の毛を抜いて糸にし、ベルをマンモスマンの予言書に結びつけました。そして、リングロープに結びつけた糸を鳴らしながら、予言書の位置を探り当てていきます。

 ロビンマスクは、もともと不思議な説得力を持つキャラクターです。ロビン家の家宝であるアノアロの杖をマスクと融合させるなど、通常の超人レスリングの範囲を超えた行動も見せています。そう考えると、「ロビンパワー全開」の一言でガラス片をベルにする場面も、ロビンならやりかねないと思わせる力があります。

 ただし、何でも解決できる便利な能力として扱うには危険すぎる力でもあります。ロビンパワーが常用できるなら、試合の駆け引きそのものが大きく変わってしまうからです。だからこそ、この場面はロビンの知恵と経験、そして一度きりの勢いが重なった特別な見せ場だったと考えるほうが自然でしょう。

 前触れの少ない能力でありながら、妙に記憶に残る。ロビンパワーは、ロビンマスクというベテラン超人の底知れなさを象徴する言葉だったのかもしれません。

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◆ブロッケンJr.はラーメンマンを責められるのか ウォッチマン戦とカーメン戦の重さ

 ブロッケンJr.は、父ブロッケンマンの命を奪ったラーメンマンを強く憎んでいました。その感情自体は自然です。しかし、彼自身の試合を振り返ると、ラーメンマンだけを一方的に責められるのか、少し考えさせられる場面があります。

 第21回超人オリンピックの決勝トーナメント1回戦で、ブロッケンJr.はウォッチマンをキャメルクラッチで真っ二つにしました。これは、かつて父がラーメンマンに受けた最期を思わせる行為であり、ラーメンマンへの挑発でもありました。しかし、当のウォッチマンからすれば、完全に巻き込まれた形です。さらにブロッケンJr.は、その体をラーメンマンに投げつけるような行動まで取っています。

 ウォッチマンは機械超人であるため、修理できる可能性はあるかもしれません。それでも、ラーメンマンへの怒りを示すために相手を利用した構図は、正義超人としてはかなり危ういものです。復讐心に支配されていた時期のブロッケンJr.が、まだ未熟だったことを示す場面ともいえるでしょう。

 さらにミスターカーメン戦では、ミイラパッケージから逃れるためにレフェリーを身代わりにしています。このレフェリーはミスターカーメンに全身の水分を吸われ、命を落とす形になりました。しかも、ミイラ化した人物に「わたしはレフェリー」と分かるようなプレートが置かれるなど、かなり強烈な描写です。アニメ版で身代わりがキン骨マンに変更されたのも、表現上の配慮があったのかもしれません。

 もちろん、ブロッケンJr.はその後、ラーメンマンとの関係を乗り越え、正義超人として成長していきます。だからこそ、初期の過激な行動を振り返ると、彼がたんなるまっすぐな正義の男ではなく、怒りや未熟さを抱えながら成長したキャラクターだったことが見えてきます。

 

 ──『キン肉マン』には、冷静に考えると不思議に思える場面がいくつもあります。しかし、その疑問をたどっていくと、後から理由を考えたくなるだけの魅力が残されています。ウォーズマンの体内重力、ロビンパワー、ブロッケンJr.の過激な行動。それぞれに、作品の勢いとキャラクターの濃さが詰まっています。

子どものころはそのまま楽しんでいた場面も、大人になって読み返すと別の面白さが見えてきます。疑問を笑い飛ばすだけでなく、あえて理由を考えてみる。そんな楽しみ方ができることも、『キン肉マン』が長く愛され続ける理由の一つなのかもしれません。

〈文/相模玲司〉

《相模玲司》

編集プロダクション勤務を経て、フリーランスの編集・ライターとして活動。メンズファッション誌の編集、週刊誌Web版での取材記事制作、アニメ・漫画関連のムック本制作など、幅広い媒体で編集・執筆経験を持つ。アニギャラ☆REWでは、アニメ・漫画・映画を中心としたエンタメ記事の編集、構成確認、コンテンツ制作を担当している。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「キン肉マン」第41巻(出版社:集英社)』

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