映画『カンフー・パンダ4』が今、世界規模で公開されていて大ヒットを果たしています。中でもアメリカでの成績はシリーズでも最大のオープニング記録を達成し、現在の興行収入は1.5億ドルを超える活躍を見せています。
しかし、そんな『カンフー・パンダ4』の日本公開は現在もまだ発表されていません。いったい何が起きているのでしょうか。
◆『カンフー・パンダ4』だけじゃなかったドリームワークス・アニメーションが上映されない時代に突入
今、日本では『カンフー・パンダ4』に限らず、『カンフー・パンダ』シリーズを制作しているドリームワークス・アニメーション社の制作している映画が劇場で公開されなくなっています。
去年『長ぐつをはいたネコと9つの命』を上映したのを最後に、以降のドリームワークス・アニメーションの作品は海外では興行されていても、日本では一切劇場上映がされていません。
昨年夏に海外では公開された『ルビー・ギルマン、ティーンエイジ・クラーケン』は、日本では2023年末に配信サービスなどで有料販売・レンタルの形で上陸をしました。
昨年秋に海外で公開された『トロールズ・バンド・トゥギャザー(原題)』は、前作『トロールズ ミュージック・パワー』が日本でも公開されたのにも関わらず、2024年4月現在でも上映予定どころか日本での展開の予定も一切発表されていません。
かつては『シュレック』シリーズや『マダガスカル』シリーズなどヒットシリーズを世に送り出してきたドリームワークス・アニメーションですが、すっかり日本での活躍が見れなくなってしまいました。
◆アメリカ大手の海外アニメーションは日本での興行に苦戦中
ドリームワークス・アニメーション作品が日本で公開されないのは、近年は興行的に目覚ましい成功作が出ていないことにあるでしょう。
2022年に公開された『バッドガイズ』、2023年に公開された『長ぐつをはいたネコと9つの命』はどちらも大規模な全国上映を実施していたにも関わらず、日本映画製作者連盟が発表している興行収入10億円以上の作品のリストにも名前が載っていません。以前よりもヒットが難しくなっていることは、ドリームワークス・アニメーション作品に限らず、海外のアニメーション映画全般に言えるでしょう。
かつては興行収入100億円にも迫る作品も多数公開してきたディズニー・ピクサー作品ですら2023年の公開作品では『マイ・エレメント』や『ウィッシュ』といった作品が興収約30億円ほどで以前に比べると落ち着いた成績となっています。
ミニオンでおなじみのイルミネーション社は『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』という興収140億円もの大ヒット映画を昨年生み出したばかりですが、一方で今年3月に公開したばかりのオリジナル作品『FLY! フライ!』は、興行通信社の発表する週末の観客動員数ランキングでも初登場7位からのスタートで、この映画も興収10億円が厳しいペースでの興行となっています。
マリオやミニオンといったヒットキャラクターが不在の作品となるとイルミネーション社でも興行には苦戦してしまうようです。
◆“アニメ”が主流の特殊な国、日本
なぜこれだけ海外のアニメーションが苦戦するかといえば、日本で制作された“アニメ”作品が強すぎるのが大きいでしょう。
直近でも『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』のロングランヒットであったり、毎年恒例で上映されている映画『ドラえもん』シリーズの安定した集客などにも分かるように、日本制作のアニメーションはコンスタントにヒット作品が登場しています。
海外ではアニメーション映画は子供向けの作品として需要を満たしている面も強いのですが、こと日本では『ドラえもん』のようにその需要を満たすキャラクターが既に存在しています。
これは未就学児向けの作品にも言えることで、『それいけ!アンパンマン』や『しまじろう』など“定番”として定着したキャラクターが存在します。ファミリー向けの枠としても海外アニメーション映画にとって競合が強すぎるのです。キャラクター大国の日本で新たなキャラクターを活躍させていくのは至難の業といえます。
新型コロナウイルス感染症の流行以降、『鬼滅の刃』の特大ヒットを皮切りに興収100億円を超えるアニメーション映画が定期的に登場するようになったのは嬉しいニュースである一方で、以前よりも海外アニメーションが活躍する場が減ってしまっている証拠なのかもしれません。
国内作品が盛り上がっていることは素晴らしいです。同じように海外作品でもヒット作が登場しないと、世界ではヒットしているのに日本には入ってこない映画がたくさん存在するなんて時代がやって来かねないでしょう。『カンフー・パンダ4』の未上陸がそんな傾向の表れでないよう、なにかしらの形で日本でも楽しめる日がやってくることを祈ります。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像:YouTubeチェンネル『Universal Pictures』より