あの『忍たま乱太郎』が今年、新たな挑戦に挑もうとしています。いや、厳密にいえばリベンジとでもいうのでしょうか。今年の12月、新たな新作長編『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』の公開が発表されました。
『忍たま』シリーズが劇場版を公開するのはこれが三度目で、前回から約13年ぶりという久しぶりの企画となっています。なぜこんなに間が空いてしまうかといえば、やはり興行の難しさがあるのかもしれません。
◆Eテレ放送だからこその悩み!放送枠での宣伝ができない問題
<画像引用元:『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』公式Twitter(@nintama_eiga)より (C)尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会>
『忍たま乱太郎』が映画の興行をするにあたって、ほかのTVアニメとは違った特殊な悩みがあります。それは放送局の問題です。
TVアニメ『忍たま乱太郎』といえば、1993年にEテレ(当時はNHK教育テレビ)で放送を開始し、再放送なども挟みつつ現在にいたるまで放送をし続けていて、『それいけ!アンパンマン』や『クレヨンしんちゃん』などと並んで日本の長寿アニメの一つとして数えられる作品です。
これだけの長寿作品であれば、映画の興行も意外とうまくいくのではないかと思うのですが、困ったことにEテレでの放送となるとその他の長寿アニメ群たちとは違って自身のTV放送枠で映画の宣伝ができないという問題があります。
これは『忍たま乱太郎』に限らずNHK関連の放送作品にいえるのですが、NHKでは財政的な自立ができるように政府や企業といったスポンサーに頼らず、放送法でコマーシャルを行うことを禁止しています。
その分、NHKは受信料を視聴者から払ってもらっているのであり、もし宣伝になりそうな企業商品が映ろうものならモザイクをかけることになります。
それほど徹底しているだけあって、せっかく連日放送枠を持っている『忍たま乱太郎』なのですが、自身の放送枠などに合わせて映画のコマーシャルを流すどころか、映画の存在すらを告知するのもままならない状態です。
『忍たま乱太郎』はそういう意味でも“まずは映画を認知してもらう”という段階からほかのアニメ群とは違ったハードルがある作品なのです。
◆宣伝のタイミングを逃してしまった2011年の劇場版
とはいえ、今やSNSも普及していれば、地上波だけでなくWebメディアなど昔以上に宣伝先も増えてきているので、Eテレでの放送作品といえど映画を認知してもらうのも宣伝のやりようといえます。
しかし、既にSNSが普及していた2011年に公開された『忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段』では不運にもタイミングが悪く率先して宣伝がしづらい作品となってしまいました。
というのも『忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段』の公開日は2011年3月12日であり、なんと東日本大震災が発生した直後となってしまったのです。
当時、被災地以外の映画館は通常通り稼働してはいたものの、地上波での宣伝は自粛する風潮が強まり公益社団法人であるACジャパン以外のコマーシャルは流れない状況がしばらく続きました。
そもそも被災の規模の大きさから、娯楽作品に足を運ぶのもはばかられるほどのショックを全国に与えたこともあり、映画館に足を運びづらい時流が一時的に発生してしまいました。
そのため、劇場版第二弾にして当時も久しぶりの銀幕作品だった『忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段』は知る人ぞ知る作品となってしまい、目立った興行ができずに上映を終えることとなってしまいました。
そういう意味でも、今回の新作映画はこの当時の興行のリベンジとも言えます。
◆新作映画はかなり本気?それが「ビジュアル」にも表れている!
作品自体の問題ではない苦い思いをした2011年から13年。今度こそ、という形でさっそく発表された映像は挑戦的なものとなっています。
“超特報”として発表された映像やビジュアルには、主人公でおなじみの忍たまの面々ではなく、担任の土井先生が単独で映ったものが起用されています。
実は今回映画化されるエピソードには『小説 落第忍者乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師』という原作が存在しており、とりわけ土井先生ファンには支持の厚い知る人ぞ知る名エピソードです。
ある意味、待望の映像化ということで、今回の特報からすでにかなり攻めてきたという印象のあるネタなのです。
【🎬映画化情報解禁】
2024年12月公開
『劇場版 #忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』卍 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
✨原作本が劇場公開に
あわせて、ついに再刊
__________卍
『復刻版 小説 #落第忍者乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師』4/22発売https://t.co/6PO2ppcXno#忍たま#乱太郎 pic.twitter.com/1IhMswr8oT— 落第忍者乱太郎 (@rantarouasahi) February 22, 2024
あくまでも超特報ということで、公開日の12月に向けて、新たなビジュアルや予告編が発表されていくはずです。果たして今度の『忍たま』の映画興行はどんな結果を残せるのか。公開前からその動向を追っていくのも面白いでしょう。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi
『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』公式サイト
(C)尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会