『ONE PIECE』は、練りに練られたであろう設定や伏線の数々が魅力ですが、長く連載を続けているだけに「この設定おかしくない?」と感じたことがある読者もいるハズ。

 果たして『ONE PIECE』に矛盾は存在するのでしょうか?

懸賞金10億ほどのシャンクスがなぜ……?

 シャンクスに関する最大の謎は「にらみを利かせるだけで怖気づくような近海の主に、腕を喰われてしまうのはおかしい」という点です。映画『ONE PIECE FILM RED』で、シャンクスがルフィに初めて会ったときにはすでに懸賞金が104000万ベリーだったことが明らかとなりました。

 懸賞金10億といえば、王下七武海に並ぶほどの懸賞金です。シャンクスは「睨み」を利かせただけで、近海の主は引き下がってしまいました。今となって思えば、覇王色を使ったと思われます。

 しかし、腕を喰われる前に覇王色や武装色を使っていれば、片腕を失うことなどなかったのではないかと思ってしまいます。

 シャンクスについてはまだ分かっていないことが多く、その力量も未知数ですが、尾田先生がこんな象徴的な場面に矛盾を残したままにするのは考えづらいです。

 この件に関して様々な憶測が飛び交っていましたが、近年では「ニカの力が暴走したのではないか?」という考察が有力となっています。

 ルフィが食べた悪魔の実はゴムゴムの実の力ではなく「ヒトヒトの実 モデルニカ」でした。

 ゾオン系の悪魔の実は能力者が未熟なまま覚醒してしまうと、暴走してしまうという特徴があります。

 また、生前の白ひげとの会話で、なくした腕について「どんな敵にくれてやった?」と問われたときのシャンクスの返答は「新しい時代に懸けてきた」でした。

 これについても白ひげは「敵」と表現し、それを修正することなくシャンクスは「新しい時代」と答えています。「新しい時代」については、ルフィのことをさしていると考えていいでしょう。

 ルフィが持つ能力がゾオン系であり暴走の可能性があることや、白ひげとの会話をとっても、シャンクスが腕をなくす要因にルフィが大きく関わっていると考えられます。

 そうすれば、この矛盾は少しずつ薄くなっていくのかもしれません。

エースやクロコダイルは覇気を使えなかった?

 「覇気」は、レイリーとの修行中に名前が出てきた力になります。しかし、ストーリー前半ではどんなに強いキャラクターでも、覇気を使っている描写はありませんでした。

 ルフィの義兄であるエースは幼少期に覇王色を使っている描写はありますが、本編中では使っていません。王下七武海だったクロコダイルも、アラバスタ編で何かの覇気を使っているシーンはありませんでした。

 このことを踏まえて、覇気という設定自体が海軍との頂上決戦後に付け加えられた後付けの設定で、物語前半との矛盾が生じてしまったのではないかという意見があります。

 しかし、覇気という名前が出てくる前にも、CP9が使う鉄塊や、エネルたちが使うマントラなど、覇気に近しい能力は何度か登場していました。ルフィも、アマゾン・リリー編で覇王色の片鱗を見せています。

 そのため、「覇気という設定はあったが、レイリーとの修行でその力が明確になった」と考えるのが自然なのかもしれません。

 エースも覇王色の素質を持っていましたが、ルフィたちとの関わりの中でそれを発揮する機会はありませんでした。黒ひげとの戦いでも描写はなかったものの、覇気を使いながらも押し負けてしまったのかもしれません。

 クロコダイルに関しても、見下しているルフィに対してわざわざ覇気を使う必要もないと、高をくくって足元をすくわれて負けた可能性も十分にあり得ます。

ロビンの懸賞金、安すぎなんじゃ……?

 ロビンの懸賞金は、オハラを命からがら逃げた幼少期から、CP9戦終了まで7900万ベリーで変化がありませんでした。彼女の出自と目的を考えれば、この懸賞金は安すぎるように感じます。

 確かに子供がかけられる懸賞金にしてみれば莫大な金額かもしれませんが、ロビンは「空白の100年」を研究していたオハラの生き残りです。

 バスターコールをしてまで隠したかった世界の秘密を握る人物が大人になるまで捕まらなかったのに、懸賞金が横ばいというのは考えづらいでしょう。

 ほかにも、アラバスタ編では王下七武海であるクロコダイルの補佐官として研究を続けていました。王下七武海といえば、当時は海軍に最も近い組織でした。

 クロコダイルが自分の目的のためにロビンの存在をうまく隠していたのかもしれませんが、政府や海軍が見逃していたというのも考えにくいです。

 CP9戦後、ロビンの存在が明らかになりながらも懸賞金は8000万ベリーまでしか上がりませんでした。

 しかし、今までの懸賞金の低さを修正するかのように、ワノ国編終了後の懸賞金は93000万ベリーと爆上がり。

 これは、麦わら一味の両翼であるゾロ(111100万ベリー)とサンジ(103200万ベリー)と同等クラスであり、上がり幅はルフィに次ぐ高さでした。

 明かされたくない世界の秘密を研究しているロビンですので、本当であればこのぐらいの懸賞金をかけられて当然なのかもしれません。

 ただ、世界政府としては懸賞金を高くすることで、逆にロビンが目立つのを避けたかった可能性があります。

 海賊王になりたい者からすれば、ロビンの「ポーネグリフを読める頭脳」は我がものとしたい能力です。不自然に高額な懸賞金をかけると彼女に何か秘密があると気づかれやすくなり、あくまで麦わらの一味のロビンとして妥当な金額を設定しているのかもしれません。

 

 ──2017年発売の『ONE PIECE 総集編 THE 23RD LOG』で、尾田先生は「元々『ONE PIECE』は5年で完結させる予定でした」と述べています。人気すぎて長期連載となったため矛盾を感じる設定もありますが、改めて1話から読み直してみると「この設定ってこのことなのかな?」と感じる箇所がいくつもあるように感じます。

 今はまだ矛盾に感じることでも、後に明らかになる設定で回収される可能性も十分あるでしょう。その尾田先生への期待が『ONE PIECE』の読者をつかんで離さないのかもしれません。

〈文/Takechip 編集/諫山就〉

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