4月に入り新たなアニメーションが続々とスタートする中、従来の放送からリニューアルを果たした作品も登場しています。それがTVアニメ『ポケットモンスター』シリーズ。この4月11日からタイトルを『ポケットモンスター』新章“メガボルテージ”に改め、新章に突入しています。今、『ポケモン』のアニメはどんな変化が起きているのでしょうか。
◆バッドエンドを迎えていた?TVアニメ『ポケットモンスター』
2年前の2023年にリニューアルを経たTVアニメ『ポケットモンスター』シリーズ。主人公が従来のサトシからリコとロイの二人へと変わり、冒険家の集まりである“ライジングボルテッカーズ”との出会いを経て、謎の多いポケモン・テラパゴスとの出会いや、リコ自身のルーツなどを追っていく物語が展開されました。
今回の新章へ突入する直前となる、去年の10月からスタートした「レックウザ ライジング」シリーズではそれらの物語の顛末までが描かれたのですが、この結末が驚きの内容となっていました。
長らく探し求めていた地・ラクアや黒いレックウザとの対面を果たすリコたちでしたが、結局は敵対する組織エクスプローラーズの幹部であったスピネルが組織を乗っ取り、ポケモンのために設立された会社・エクシード社の社長へと就任。そのうえ、リコやロイたちが所属しているライジングボルテッカーズに環境破壊の汚名を着せられてしまうという結末を迎えました。
その上、ライジングボルテッカーズのリーダーであるフリードとパートナーであるリザードンは、ラクアを脱出するための上昇気流に巻き込まれてしまい行方不明になってしまいます。結局、フリードたちは見つかっておらず、ライジングボルテッカーズ自体も解散してしまうのでした。
2年という冒険を経て、主人公チームのリーダーがいなくなってしまうどころか、組織自体が世間的に悪者扱いとなってしまい、ついには解散まで迎えてしまうのは驚き。この節目だけを思うと物語はバッドエンドを迎えたと言っても間違いではないでしょう。
◆新章はリベンジマッチ? 本格的な物語はここから?
そんなバッドエンドともいえる顛末から迎えた新章がこの4月11日からスタートした『ポケットモンスター』新章“メガボルテージ”。物語は前章から一気に時間が進んで、なんと1年後からスタートします。
初回となる前後編の第90話・第91話「大空へ向かって、再び」では成長したリコとロイの様子が描かれました。失意からまだ完全には立ち直れていなかったリコのもとに、冒険を経たロイが再び現れ、謎の物質ラクリウムの影響で暴走するポケモンの存在を聞きます。
この再会をきっかけにリコとロイは、暴走するポケモンたちの謎を追い、ライジングボルテッカーズの汚名返上に臨むべく、再び旅立つという内容になっていました。
TVアニメの『ONE PIECE』しかり『NARUTO -ナルト-』しかり、多くの長期放送作品がある時期を境に、時間を大幅に進めて主人公たちを急成長させ、本格的に物語を進めていく傾向がありましたが、まさに『ポケットモンスター』シリーズもその節目を迎えたといえます。
このエピソードではこの1年間でしっかりと強くなったリコとロイ、そしてポケモンたちの対決も描かれますが、ライジングボルテッカーズという後ろ盾がなくなった二人の本当の冒険はこの新章から本番を迎えたと言えるでしょう。
◆ゲームタイアップもしっかり意識している? ゲームファンこそ要警戒!
ただ新章に突入しただけでなく“メガボルテージ”という副題や演出からも、『ボケットモンスター』シリーズに詳しい人はある程度の今後の展開が予見できます。
というのも『ポケモン』の原作ともいえるゲームシリーズの最新作『Pokémon LEGENDS Z-A』が2025年秋に発売されることが決まっており、アニメシリーズもそれに合わせた展開を準備しているのがよく分かります。
というのもこの新作ゲームでは、長らくシステムから除外されていたポケモンのパワーアップ要素の一つ“メガシンカ”が久しぶりに復活することも発表されており「メガボルテージ」の副題もこの復活を意識した副題だと分かります。
このメガシンカは特定のポケモンしか使えない要素なのですが、新シリーズになりロイが突然メガシンカができるポケモンであるルカリオを仲間に連れるようになっていたり、“メガ”が口癖で、メガシンカができるポケモン・ヤミラミを連れている新たなレギュラーキャラクターのウルトが登場したりとあからさまにゲームシリーズの今後の発売展開を意識した要素が加わっています。
こういった路線を踏まえると、新作ゲームに用意されているまだ未発表の情報のヒントなども新章に隠されているかもしれません。
近年のTVアニメ『ポケットモンスター』シリーズでは、新作のゲームシリーズが発売されてから後続する形でそれらの要素が組み込まれてきていましたが、今回は発売に先立ってのリニューアルという点でも違いは大きいです。リコやロイたちが連れているポケモンや新キャラクターらの言動にも、ゲームシリーズのファンは注意して観ていったほうがいいでしょう。
主人公たちのリベンジマッチ物になっていることや、今後発売予定の新作ゲームを意識していることの2点からも、『ポケットモンスター』新章“メガボルテージ”こそ熱い展開を迎えた新章と言えるでしょう。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像:YouTubeチャンネル『』より
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