桜木花道の湘北高校は問題児が多く、選手層は薄いながらもそれぞれの長所を生かし、「君たちは強い」という安西監督の言葉を胸に格上チーム相手にも見事勝利してきました。
そんな“ギリギリの戦い“の中で、湘北高校を勝利に導いてきた本当の意味での「影の功労者」は、2年生ポイントカード宮城リョータではないでしょうか?
◆公式戦 全試合フル出場は宮城リョータただ一人!
選手として重要なことの一つに、大前提として「いつ何時も試合に出場できること」が挙げられるでしょう。
宮城はケガからチームに復帰した際の三井たちからの報復騒動により、復帰戦となる三浦台戦こそ“安西監督からの罰”として、宮城を含め関わった4人とも途中出場となったものの、その後はインターハイ神奈川予選の翔陽戦、海南戦、陵南戦はもちろん、インターハイ初戦となる豊玉戦、原作最後の試合となる山王戦にも全てフル出場しています。
それに対してほかのスターティングメンバーはというと、まず桜木は公式戦デビューとなった三浦台戦、翔陽戦の2試合連続5ファウルで退場。インターハイ出場を懸けた陵南戦はケガで一時離脱。海南戦、インターハイ2試合、海南戦でも安西監督の采配で途中交代しています。
スター選手ながらまだ1年の流川、長いブランクがある三井については、スタミナ不足により途中交代しており、流川については豊玉のエース・キラー南により負傷させられ、途中ベンチに下がっています。
そして、チームの大黒柱である主将・赤木も、海南戦で足首の捻挫により前半途中交代した経験があり、フル出場はしていません。
宮城自身も作中では描かれていない三井たちとの抗争により一時離脱し、インターハイ予選直前からの復帰だったにも関わらず、その後スタミナ切れもなくフル出場を続けたことは称賛に価するでしょう。
◆数々のスーパープレイヤーと対峙してきた実績
主役やポイント・ゲッター(点取り屋)の活躍に隠れがちですが、宮城は各試合で数々の強敵とマッチアップしています。
翔陽戦では選手兼監督で主将の藤真、海南戦では神奈川No.1プレイヤーである牧、豊玉戦では大阪予選・得点ランキング3位であり、身長差15cmもある板倉。さらに山王戦ではキャプテンで2年から王者・山王でレギュラーを勝ち取った深津など、常に対戦チーム内でも屈指のプレイヤーと対峙してきました。
その中でもスタミナを切らすことなく、持ち前のセンスと判断力、小柄な体格を生かした俊敏な動きで身長差や経験不足をカバーしています。
特に印象的なのは、山王戦後半、激しいプレス・ディフェンスにより消耗してきたことを深津に見透かされ「もうキレがないピョン」と挑発されたときでしょう。
宮城は「こんな でけーのに阻まれて どーする」「ドリブルこそチビの生きる道なんだよ!!」という心の声とともに、深津・沢北の最強ダブル・チームを抜き去りました。
原作では数少ない、宮城のプレーと強敵相手に活躍するシーンが描かれています。
◆2年生ながらチームの司令塔であり、ゲイムメーカー
宮城のポジションである「ポイント・ガード」の役割は、主にボールをドリブルで運び、最適なタイミングで仲間にパスを出して得点につなげるという、いわば“司令塔”です。
宮城自身は過去の三井との件や豊玉戦での激昂シーンなどでも分かるとおり、喧嘩っ早い短期な性格ながらその反面思慮深く、瞬時の判断を得意としており、湘北のゲームメイクも一手に彼が担っています。
安西監督も彼の判断能力や俊敏性には絶大な信頼を寄せており、山王戦・後半開始直後に湘北メンバーを絶望的させた“ゾーン・プレス”に堪らずタイムアウトを取った際、ボール運びの手段を尋ねられた安西は「決まってるでしょう。湘北の切り込み隊長ですよ……!!」と断言し、チーム全員でもままならなかったボール運びを彼に一任するという“断固たる”決断をしています。
安西の期待に応え、宮城のドリブルにより湘北は見事にプレスを突破。しかし、その後も縮まらない点差とスタミナの消耗により、チームの士気が落ちたと見るや「しっかりしろォ!! 流れは自分たちでもってくるんだろがよ!!」と、檄を飛ばし自らシュートを打つなど、常にチームや試合自体の空気を読み取り、最善の行動をとってきたのが宮城でした。
──元は兄の影響(※特別読み切り“ピアス”のリョータが同一人物だと仮定)でバスケットボールを始め、彩子への恋心が原動力となっている単細胞なキャラだと思われがちですが、フィジカル、メンタルともにチーム内ではトップクラスであり、派手なプレーこそ少ないものの、堅実かつ俊敏な動きを生かして強敵と渡り合ってきた、チームメイトからも信頼が厚い宮城。
それがどれほどの功績に価するのかは、原作最終話で赤木、小暮の引退後、“新キャプテン”に就任したことが何よりも物語っているでしょう。
スタメンで唯一低身長というハンデを持ちながらも、それを武器に変えて強敵に立ち向かう姿は、多くの読者の共感を呼び、勇気を与えたはずです。
現実世界のスポーツにおいても、メッシ氏や大谷翔平氏など、ストライカーやスラッガーなど“得点王”が注目されがちですが、ぜひ宮城リョータのように陰で確実に任務を遂行し、気づけばいつもピッチやグラウンドに立っている──。そんな選手に注目して思いをはせるのも良いのではないでしょうか。
〈文/lite4s〉
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