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※この記事にはTVアニメ・原作漫画『幽☆遊☆白書』のネタバレが含まれます。ご注意ください。

※本記事はTVアニメ・原作漫画『幽☆遊☆白書』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。

 中華か和食かで揉める仲間たちを前に、寡黙な剣士・飛影が選んだのは「……もんじゃ焼き」でした。

 『幽☆遊☆白書』の原作コミックは全19巻と、その人気の割には短くまとまった連載でした。それゆえ作中で十分に語られないまま残された“謎”が今も多く存在しています。

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◆飛影は本当に人間を食べていたのか “もんじゃ焼き”発言に残るヒント

 作中で「人間を食料にする妖怪」の描写は珍しくありません。食人鬼の系譜である雷禅をはじめ、彼の盟友である北神たち、ライバル関係にある軀や黄泉、八つ手といった面々が人間をエネルギー源にしていました。さらに、かつて飛影と蔵馬とともに行動していた剛鬼のように、肉体ではなく魂のみを糧とするタイプの妖怪も登場しています。

 では、純血の妖怪である飛影本人はどうだったのでしょうか。蔵馬は南野秀一という人間の肉体を借りているため食事は人間と同じです。一方、生粋の妖怪である飛影が人を食らっていたとすれば作中の印象も大きく変わってしまいます。

 この疑問に答えを与えてくれる音源があります。1997年1月にポニーキャニオンからリリースされたサウンドトラック『幽☆遊☆白書ミュージックバトル編2』に収録された特別ミニドラマ「戦士の空腹」です。幽助一行が食事に出かける場面で「何を食うか」で口論になり、幽助は中華、桑原は和食を主張するなか、飛影が口にしたのは「……もんじゃ焼き」でした。

 加えて、初登場時に提示された霊界データの記述も傍証になります。剛鬼が「前科十二犯」「魂を食う鬼」と紹介されていたのに対し、飛影には「前科なし」と記されていました。少なくとも人間界で常習的に人を捕食していた形跡は見当たりません。

 魔界時代に何を食べて生きていたかは描かれていませんが、人間と同じく雑食の体質で、たまたま人間界の食事も口に合った──そう考えるのが自然でしょう。

◆魔界に電話はつながるのか 蔵馬の通話シーンに残る謎

 仙水によって魔界トンネルが開通し、人間界と魔界の行き来が可能になった「魔界統一トーナメント編」。三つ巴で勢力争いを続けていた雷禅・軀・黄泉という三国の王から、それぞれ幽助・飛影・蔵馬に招待状が届きます。

 蔵馬は再婚した母親に8月いっぱいの新婚旅行をプレゼントしており、その留守の1ヵ月間に限るという条件で黄泉の誘いを受け、参謀として陣営に加わりました。

 注目したいのは、魔界都市・癌陀羅(がんだら)にある黄泉の居城でのワンシーンです。屋外を眺めながら、蔵馬は魔界の通信機器らしき装置で誰かと会話している描写があります。なんと相手は旅行中の母親で、平然と通話を楽しんでいるのです。

 魔界に有線回線が敷かれていたのか、人間界の電波を傍受していたのかは作中で語られていません。ただし、蔵馬が発信したのではなく母親側から着信があったという点が重要です。これは南野家の固定電話に入った着信を、魔界へ転送する技術が存在していたことを意味します。

 舞台が携帯電話の普及以前であることを踏まえると、現在の感覚で読み返した方がむしろ違和感が強い設定とも言えます。魔界が人間界を凌ぐ科学技術を保有していた可能性すら浮かんできます。

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◆長髪と紋様はどこへ? 幽助の妖怪モードに残る未解明設定

 仙水戦で命を落とした幽助は、魔族・雷禅の血を引く子孫であったことから、魔族大隔世によって妖怪として蘇生しました。厳密にいえば、停止した心臓の代わりに魔族の心臓である「核」を得て生命活動を維持している状態です。

 復活直後、仙水と桑原たちが激突していた魔界の戦場へ駆けつけた幽助は、雷禅から妖気の干渉を受けたことで魔族としての力が覚醒。髪は足元まで伸び、全身に刺青のような紋様が浮かび上がり、闘神・雷禅を彷彿とさせる姿に変貌しました。

 干渉自体はごく短時間で、幽助はすぐに正気を取り戻します。しかし変身は解けず、その姿のまま人間界へ帰ることになりました。後の回想で幽助は「髪は蔵馬に切ってもらい、体の模様は寝て起きたら消えていた」と語っており、当時の彼には変身を自分で制御する術がなかったことが分かります。

 ところが、アニメ版の魔界統一トーナメントで黄泉と対戦した際は、紋様こそ一時的に浮かび上がったものの、髪が伸びるところまでは至らず、紋様も戦闘途中で消えています。

 原作で明確な答えは語られていません。ただ、蔵馬が修行を重ねるにつれて南野秀一の姿のまま妖狐の力を引き出せるようになっていった経緯を踏まえると、幽助も同様に、戦いを重ねる過程で変身を自在に出し入れできるようになっていた、と読むのが自然かもしれません。

◆雷禅は餓死を避けられたのか 代替食があったかもしれない理由

 妖怪が人間界で好き放題に暴れていた時代、闘神・雷禅は人間を食らうことで妖力を高めていました。ところが食脱医師(くだくすし)である一人の人間の女性に一目惚れし、それ以来「もう人を食うまい」と誓いを立て、700年に及ぶ断食の末に餓死します。

 配下の北神や東王、ライバルの軀、黄泉らも同じく「人間を食料とするタイプ」と語られていました。しかし魔界統一トーナメントで優勝した煙鬼が掲げた「人間界に迷惑をかけない」という新方針には、彼らも大会後は素直に従い、魔界に迷い込んだ人間を保護して送り返すまでになっています。

 一方、幻海のもとで修行していた酎たちは、力をつけるために飲まされていた薬草の不味さに文句を言っていました。つまり、好んで口にしない食材であっても、妖怪のエネルギー源として機能するものは存在するわけです。

 ここから導き出せるのは、「人間を食料とするタイプ」の妖怪であっても、別の食物に切り替えれば死ぬことはなく、力を維持するどころか強くなることすら可能だった、という事実です。

 雷禅は突然変異の食人鬼の一種で、人間以外を食べた経験そのものがなかったのでしょう。人間界で活動していた飛影や、人間界との共存を提唱した旧友・煙鬼のように、食事に対してもっと柔軟であれば、体質に合う代替食料が見つかった可能性は十分にあります。あの孤独な絶食の結末は、避けられたものだったのかもしれません。

 

 ──全19巻という比較的コンパクトな尺で物語が締めくくられた『幽☆遊☆白書』には、明確に語られないまま読者に委ねられた設定が数多く残されています。サウンドトラックの特典ドラマや初登場時の霊界データなど、さまざまな媒体や細部の描写から答えを拾い集められることこそ、原作者・冨樫義博先生が仕掛けた巧みな伏線の妙ともいえるでしょう。

〈文/最上明夫 編集/相模玲司〉

《最上明夫》

アニメ・漫画・特撮・映画など、幅広いエンタメ作品に関心を持つライター。作品内の設定やキャラクター描写、物語構成を丁寧に読み解き、読者が作品をより深く楽しめる記事制作を心がけている。アニギャラ☆REWでは、アニメ・漫画を中心とした考察・解説コラムを担当している。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「幽☆遊☆白書」第4巻(出版社:集英社)』

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