2019年『名探偵コナン 紺青の拳』では怪盗キッドや京極真。2021年『名探偵コナン 緋色の弾丸』では赤井秀一をはじめとした赤井ファミリー。こういった具合に、名探偵コナンの劇場版シリーズでは、近年は主人公のコナンの他にも物語の鍵を握るキャラクターが登場することでおなじみです。

 では2022年の今年公開された映画『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』では、その立ち位置は誰に当たるのか?それはもちろん、キービジュアルにも据えられている安室透や、高木刑事と佐藤刑事のコンビであることは間違いないでしょう。

 ただ忘れてはいけないのが警察学校編のメインキャラクターである安室の同期の面々です。中でも、その中の一人、松田陣平は待望の登場だったのではないでしょうか

◆松田陣平とは何者か?

 松田陣平は、元警視庁刑事部捜査一課強行犯三係の刑事。といっても、警視庁捜査一課に居た期間はわずか1週間でした。それまでは警視庁警備部機動隊爆発物処理班に所属していたのですが、松田は幼馴染の萩原研二を殺した爆弾犯を追っていました。そして3年前の捜査一課配属から1週間後のタイミングで、同じく萩原を葬った爆弾犯の爆弾によって、大勢の命と引き換えに自死を決断します。そんな経緯から、本編では終始故人として登場したキャラクターでした。

 そんな松田刑事は、2002年末に放送されたTVアニメシリーズ第301話『悪意と聖者の行進』で初登場。そして、2003年の年明けに、因縁の爆弾犯との戦いが、コナンたちに引き継がれ第304話『揺れる警視庁1200万人の人質』で決着へと向かいます。当時、松田が登場したのはこれらのエピソードのみで、それ以来、松田はしばらく回想にも登場しない時期が続きました。

◆実はもともと高い人気キャラクターだった?

 しかし、驚くべきは松田がわずかな登場回数ながら、高い人気を持っていることにあります

 2012年に小学館・週刊少年サンデー誌面で行われた「名探偵コナンキャラクター人気投票」では、14位の佐藤刑事、15位の吉田歩美、16位の毛利小五郎といったレギュラーキャラクターを抑え、13位にランクインしました。すでに登場から10年近く時が経っているのに異例とも言える高い人気です。

 そして、それからさらに約10年の時を経た2021年に『名探偵コナン 緋色の弾丸』の公開に合わせて人気投票企画「緋色の総選挙」が開催されます。ここでは、さらにランクを上げ、10位のジンや11位の服部平次に次ぐ12位にランクインしました。

 存命でなんども出番が用意されているキャラクターたちに並んで、すでに故人であり出番の限られている松田がこれだけ長い期間高い人気の記録を残していることは、2022年に改めて劇場版で活躍の場が設けられることが偶然ではないことの証拠でしょう。

◆実は劇場版への登場は二度目?

 そんな松田刑事が登場した劇場版は、今回の『ハロウィンの花嫁』が初めてではありませんでした。実は出番こそ限られてはいながらも、松田刑事の存在を大きく動かすきっかけとなった映画が、先行して公開されています。それが2016年に公開された劇場版第20弾『名探偵コナン 純黒の悪夢』でした。

 今作では、観覧車と爆弾事件という松田刑事の殉職シーンを思い出すモチーフが登場するわけですが、加えて、安室が爆弾を解体するというシチュエーションで、安室が松田刑事のことを思い出すという場面が登場しました。

 実はこのシーンをきっかけに、安室と松田が警察学校時代の友人関係であることが初めて判明することになります

 そして、2018年には安室透を主人公にした『ゼロの日常』のスピンオフ漫画の登場や、

 映画『名探偵コナン ゼロの執行人』の大ヒットなど、安室の露出機会がどんどん増えていくようになり、2019年には早くもさらなるスピンオフ作品『名探偵コナン 警察学校編Wild Police Story』の漫画の連載がスタート。晴れて生前の松田の活躍を見られるようになりました。2021年末には『名探偵コナン 警察学校編Wild Police Story』もアニメ化を果たしており、松田の露出も増えていくようになりました。

 わずかな登場シーンのみで存在感を示した00年代、そして徐々に徐々にと活躍の場を広げていった10年代。その流れを思うと、こうしてやってきた20年代に劇場の大きなスクリーンで松田刑事の活躍が見られるのは、ゴールというよりも、さらなる活躍を期待していい“始まり”と受け取っても良いかもしれません。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレターを配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi

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