2020年8月15日、二度の延期を経て『劇場版 Fate/stay night[Heaven's Feel]III. spring song』(以下、『Fate [HF]』第3章)の公開がスタートしました。
『ドラえもんのび太の新恐竜』や『コンフィデンスマンJP』などの作品に比べると、2倍ぐらいの公開館数さがあるのですが、興行通信社が発表する週末の動員数ランキングでは、それらの作品を上回る集客力を見せ、初登場第1位を獲得する快挙を果たしました。
私も公開を楽しみにしていたのですが、初日はあまりの人気に、あらかじめ予約していないと、よほどじゃないけど鑑賞はできないというほど席があっという間に埋まっていました。結局映画館で観たのは土日を明けた平日に入ってから。すごい人気ですよね。
で、その観てきた感想を述べさせてもらえば、本当に素晴らしい映画だったな、ということです。この記事はそんな話。
ネタバレなしなので、観ていないという人も、どんだけこの映画がすごい作品なのかが分かるように伝えようと思いますので、読んでくださいませ。
◆完璧なお膳立てを経て繰り広げられる全編クライマックス
かつて『アベンジャーズ/エンドゲーム』という、それまでのシリーズを鑑賞していればこそ最大限に映画を楽しむことができる究極の一見さんお断り映画があったわけですが、『Fate [HF]』第3章もまさにそんな映画。1章、2章のあらすじもなく、いきなり2章のラストから始まります。
ただ、2章の終わり方が本当に「これからクライマックスですよー」というところで終わったので、2章で何が起こったのかわかっている私は、映画冒頭からゾクゾクする気持ちが止まらなかったのです。しかも、冒頭からいきなりハンパない窮地が繰り広げられるのだからたまない。映画が始まって、いきなり衝撃の展開が見せられるのが続き物の強み。手堅くその強みを遺憾無く発揮してくれました。
一見さんお断りで、二作分の続き物というのはある意味興行的にはハンデでもあるのですが、裏を返せば、物語の説明の尺を省略した上で、二作分のお膳立てが有る状態で映画を始められるということ。それだけリッチな映画のラストがたのしめるという豪勢な映画なのですよね。
◆最大の見所はアクションシーンだ!
本作の見所は何と言っても、アクションシーン。
前作、前々作でも映画ひとつひとつに見せ場となるアクションシーンが用意されていました。が、三部作ということでそのアクションシーンの配分や演出が少し歪な状態でした。
1章では、まだ物語の序章ということもあってか、主人公ではないキャラクターのアクションシーンが一番映えていたり、2章も主人公より以外のキャラクター同士のぶつかり合いが、一番派手だったり。ことアクションに関しては、完成度こそこれまでもエゲツないぐらいのものだったのですが、物語の展開としては100%気持ちを乗せられるような状態ではなかったのです。
が、今回は満を持しての最終章ということで、主人公の士郎くんを始めとした主要キャラクター大集結によるベストバウトの連べ打ち。これでもかと、怒涛の戦いを繰り広げます。2章分にかけて溜まりに溜まったフラストレーションを、ここぞとばかりに解き放ってくれるのだから気持ちいいに決まってます。
◆日本最高峰!? Ufotableのアニメーション
『ドラゴンボール』や『NARUTO -ナルト-』、『ONE PIECE』など、例えとしてわかりやすいので、これらの作品を挙げますが、頭身の高いキャラクターが戦いを繰り広げる作品ってこれまでも数多くありました。そんな中でもこの『Fate [HF]』第3章はその最先端を走っているんじゃないでしょうか。
キャラクターたちが鮮やかな色彩の光弾や光線を纏いながら、高速でぶつかり合うその“エフェクティブ”なアクションシーンは未知の領域で、美しくそしてかっこ良い。洗練されたそのアニメーションは、“その分野”での現状の日本最高峰と言っても過言ではない気がします。それぐらい、他の追随を許さないほど『Fate [HF]』第3章はキャラクターが動くのです。
本作を制作しているのは、昨年大ヒットにもなった『鬼滅の刃』を送り出したアニメーション制作会社Ufotable。まさに『鬼滅の刃』も現在のバトル系少年漫画作品の最前線で戦う作品です。
『ONE PIECE』の東映アニメーションや、『NARUTO -ナルト-』のStudioぴえろなど、アクションに定評のあるアニメーション制作会社は数多ありますが、Ufotableこそ2020年の今、その最先端を走っているのではないでしょうか。
<PR>
◆バトル物アニメ映画って世界的にもレア!
面白いのはこういったバトル物のアニメーション作品が、海外ではあまり観られないところ。
独自の漫画文化などの影響もあると思いますが、海外でこういった長編アニメーション映画の例は限られています。『Fate [HF]』第3章のようなアクションアニメーション映画をコンスタントに劇場で楽しめるのは、ある意味日本で生活している人の特権と言えるでしょう。
昨今は、中国から『羅小黒戦記』といった同ジャンルのライバル作品の出現もあったばかり。日本も負けてらんないぞー......なんて思っていた矢先だったので、今回の『Fate [HF]』第3章の登場には大満足。しっかり世界で戦えるアクション作品の大団円を観せていただきました。
さぁ、『Fate [HF]』第3章から間髪入れずに続くのが、10月公開のUfotable最新作『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』です。こちらではどんな戦いを観せてくれるのか、より一層楽しみになりました。
販売開始のムビチケも売れているようですし、『Fate』に続いて、鬼滅の刃でもUfotableが映画館を賑わせてくれそうです。
ちなみに、12月公開の『Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット-前編 Wandering ; Agateram』の制作はProductionI.Gさん。『Fate』シリーズとはいえ、こっちはUfotableさんじゃないのですね。こちらはこちらでどんなものを観せてくれるのか楽しみです。
(Edit&Text/ネジムラ89)
劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅲ.spring song
©TYPE-MOON・ufotable・FSNPC ©TYPE-MOON