◆ファンたちが噂するタイトルに隠された意味とは?
次にファンの間で考察されている『葬送のフリーレン』に隠された意味とはどんなものでしょうか?
ファンの間では、フリーレンが魔族だけでなく旅の仲間などを見送ってきた経験から、『葬送のフリーレン』とタイトルがつけられたのではと考察されています。
フリーレンはエルフなので長い時間を生きており、寿命の違いから師匠のフランメや旅の仲間のヒンメル、ハイターなどを見送ってきました。
長寿だからこそ見送る役回りが多く、この経験から『葬送のフリーレン』というタイトルがつけられたのでは、とファンの間で考えられています。
確かにフリーレンは数多くの人たちを見送っており、この考察は正しいといえるかもしれません。しかし、「葬送」はただ死者を墓所まで送り出す行為をさすのではなく、墓所まで連れ添う最後のお別れという側面があります。
このお別れという意味に着目すると、フリーレンはヒンメルのことを「葬送」できなかったと言えるのではないでしょうか。
フリーレンは第1話でヒンメルが埋葬される際に「…人間の寿命は短いってわかっていたのに……なんでもっと知ろうと思わなかったんだろう…」と後悔していました。
この発言から、フリーレンはヒンメルがいつか死ぬと理解していながらも、自分にとってヒンメルがどのような存在か理解しておらず、心の中で別れの準備ができていなかったといえるでしょう。
その後、彼女は魔法収集と人間を知るために旅へ出ていましたが、アイゼンへの手伝いをきっかけに、死者と話せる「魂の眠る地(オレオール)」を目指します。
フリーレンはヒンメルと言葉を交わすためにこの地を目指しますが、この地は彼女たちが倒した魔王城にあり、フリーレンはかつてヒンメルたちと旅した道のりをたどり、魔王城を目指し始めました。
彼女は葬儀後の旅やオレオールを目指す旅の中で、たびたびヒンメルたちとの旅を回想しており、そのたびに懐かしんだり新たな気づきがあったりしているようです。
たとえば、中央諸国ターク地方を旅した際には、大陸で絶滅したといわれるヒンメルの故郷の花「蒼月草」を見つけ、かつてヒンメルが口にした「(蒼月草を)いつか君に見せてあげたい」という思いを叶えていました。
また、中央諸国グランツ海峡を訪れた際には、新年祭の日の出をフェルンとともに見て、かつてヒンメルが言った「(フリーレンは新年祭を)楽しめるね」という意味を初めて理解していました。
これらの旅路での回想は、彼女がヒンメルのことを理解することで知ろうとしなかった後悔を晴らし、彼とのお別れの準備をしているようです。
もしかしたら、彼女がオレオールに到着した際にはお別れの準備を済ませており、かつて出来なかった最後のお別れである「葬送」を果たす可能性があるでしょう。
このように考えると、『葬送のフリーレン』というタイトルは仲間を見送るという意味だけでなく、ヒンメルをちゃんと「葬送」するためのフリーレンの旅路を意味しているのかもしれません。
〈文/林星来 @seira_hayashi〉
※サムネイル画像:アニメ『葬送のフリーレン』公式サイトより
© 山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会