◆クロロがウボォーギンを「さんづけ」するのは“ある悲しい事件”が関係していた?
<画像引用元:YouTubeチャンネル『ジャンプチャンネル 』より ©P98-21 ©V・N・M>
なぜクロロはウボォーギンのことを「ウボォーさん」と呼んだのでしょうか? それは、旅団が結成される前の幼少期に関係しています。
現在の幻影旅団の前進となったのは、流星街に捨てられたビデオテープの吹き替えのため、クロロを中心に集まった子どもたちの演劇集団でした。
社会的に存在しないことになっている流星街で、掘り出し物のビデオテープは子どもたちにとっての娯楽の一つ。吹き替えの公演をするまでは、子どもたちの中にも縄張りがあり、クロロはウボォーギンやフィンクスに立場的な関係で逆らえない、賢いけど大人しい子という印象で描かれていました。
しかし、クロロの迫真の演技に感銘を受けたウボォーギンを筆頭に、メンバーが集まり一つの劇団……「旅団」となったのです。このときから、のちに「蜘蛛の頭」となるクロロのカリスマ性は発揮されていたと考えられます。
公演準備中のある日、メンバーのサラサという少女が行方不明になります。そして無残にも袋詰めにされた遺体が発見されました。
社会的に存在を認められなかった流星街は、被虐的な立場に置かれていました。マフィアと手を結んで人員と引き換えに安全を得るようになるまで、毎年数100人単位で住人狩りの被害に遭っていたとされています。
サラサの事件を機に、クロロは流星街でこれ以上の犠牲者を出さないよう、犯人探しと「沢山の人間を殺す」ことを掲げます。3年間で通信革命が起こると予期して、その技術を使って犯人をあぶり出そうというのです。そして、流星街に手を出させないため、残りの人生を悪党として生きると誓いました。
このとき、クロロはウボォーギンのことを「ウボォーさん」と呼び、旅団のリーダーを持ちかけます。しかしウボォーギンはクロロが頭なら死ぬまでついていくと答え、この事件から3年後、幻影旅団は「蜘蛛」として産声を上げたのです。
なお、『劇場版 HUNTER×HUNTER 緋色の幻影』で配布された0巻でも、クロロは立候補して団長になったわけではない旨を原作の冨樫義博先生は綴っていました。
ウボォーギンの弔いにあたって、クロロが指揮棒を振りながら「ウボォーさん」と呼びかける象徴的なシーンがありました。団長としてではなく一個人として、旅団結成前からの呼称で語りかけたと思うと、そのシーンに重みが増すように感じます。
そして、0巻ではクラピカの幼少期が中心となっていましたが、シーラという“外の世界の女性”が登場します。なんと彼女は流星街の出身で、吹き替えメンバーの一人でした。しかし、蜘蛛の結成には加わらず去っていった唯一の人間です。
通信技術に関しても、クラピカが闇サイトで発見したけど、その配信元を辿れなかった「緋の目」に関わって来そうな伏線です。サラサの殺害、シーラという女性、そして通信技術と緋の目、これらが今後の幻影旅団とクラピカとの対立にどう関わってくるのか、とても気になるポイントでもあります。
──主人公サイドのクラピカから語られた「幻影旅団」は、残酷な盗賊集団と思われました。ですが、故郷での悲しい事情が絡んでいるとなると、悪者と一括りにはできそうありません。劇団・旅団などの単語から、悪者を演じているだけと連想することもできそうです。
原作はお休みに入っていますが、暗黒大陸行きの船に乗り込んでいる幻影旅団の団員たち。現在、彼らが狙っているのは、コルトピとシャルナークを殺したヒソカではあるものの、同じ船には因縁深いクラピカ、闇サイトに緋の目の動画を流したツェリードニヒ=ホイコーロも乗り合わせています。
連載の再開がいつになるかは分かりませんが、彼らがどう結びつくのか、腰を据えて待ちたいですね。
〈文/mizuno @wr_mizuno 〉
編集プロダクション出身。アニメ系月刊誌『PASH!』編集者・ライターを経験。複数の紙媒体・web媒体で記銘原稿を寄稿する。KADOKAWA、小学館、主婦と生活社、ムービックなど各出版社・メーカー発売のムック・単行本の編集・取材・原稿執筆を務める。現在はフリーランスの編集者・ライターとして企画立案・記事作成を行なう。2023年、働く女性向けの新規コンテンツ立ち上げに運営として参画中。