『ジョジョの奇妙な冒険』第4部には振り返るとあの世に連れて行かれる小道が登場しますが、この小道は日本神話の「黄泉比良坂」(よもつひらさか)がモデルだと言われています。

 なぜ、このような坂が杜王町に存在しているのでしょうか? それは、杜王町という地名に理由が隠されているのかもしれません。

◆なぜ「黄泉比良坂」がモデルだと考えられているのか?

 「振り返ってはいけない小道」に住んでいる鈴美は、この小道を「この世とあの世の通り道」と呼び、死んだものはここを通ること、振り返るとあの世に魂を引っ張られて死ぬことを作中で説明しています。

 実際に、『ジョジョ』4部のラスボス、吉良吉影やスタンドのチープ・トリックは、この小道で振り返ってしまいあの世に連れて行かれる姿が描かれていました。

 この設定は日本神話に登場する「黄泉比良坂」と共通点が多くあり、これがモデルではないかと考えられています。

 黄泉比良坂は三途の川のように生者の世界と死者の世界の分かれ目にある境界だと考えられており、日本神話ではイザナギが死者の世界へイザナミを迎えに行く話で登場しました。話の内容は次のとおり。

 イザナミが死んだ妻に会いに死者の国へ行くと、イザナミは「死者の国から戻っていいか相談するから、その間は自分の姿を見ないでほしい」とお願いします。

 イザナギは「見てはいけない」というタブーを犯し、生前とは変わり果てたイザナミに追いかけられ、黄泉比良坂を通りもといた葦原中国へ戻りました。

 振り返ってはいけない小道も黄泉比良坂もこの世とあの世の境に存在しており、どちらにも「振り返ってはいけない」、「見てはいけない」というタブーがあること、タブーを犯すとあの世のものから追いかけられることなど、多くの共通点から見られます。

 これらのことから、振り返ってはいけない小道は黄泉比良坂がモデルだと考えられるのです。

 なお、この振り返ってはいけない小道は、テレビドラマ『岸辺露伴は動かない』の第5話「背中の正面」でも設定が応用され、「平坂」という名前で登場します。

 この話は原作の「チープ・トリック」を模しており、スタンドではなく妖怪のような何かという存在に変えられていました。

 原作と同じように取り憑いたものを退治するのですが、退治する場所が「平坂」と呼ばれる場所で、露伴は「黄泉比良坂」と「平坂」の名前が類似していることから、この場所が本物のこの世とあの世の境だと考えたようです。

 また、イザナギとイザナミように冥界へ妻を迎えに行く話は日本神話に限った話ではなく、海外の神話にも登場します。

 有名なのは『ギリシャ神話』の、オルペウスが妻のエウリュディケーを迎えに行く話ですが、振り返ってはいけないというタブーを犯してしまい、妻を冥界から連れ帰るのに失敗しています。

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