◆呪いの言葉を残した者とそうでない者
渋谷事変では七海が残した言葉が大きく話題となりましたが、作中ではほかにも死の間際に呪いの言葉を残したものがいます。それは「第1話 両面宿儺」で死を迎えた虎杖の祖父です。
虎杖の祖父は死の間際に虎杖へ「オマエは強いから人を助けろ」と遺言を残しました。
虎杖はこれを受けて、オカ研の先輩が呪霊に襲われた際、祖父の遺言が頭をよぎり助けへ入ります。
そして、伏黒に逃げるよう諭されても再び祖父の遺言が頭をよぎり、「こっちはこっちで面倒くせえ呪いがかかってんだわ」と言って引かず、結果的に呪術の世界へ足を踏み入れることになりました。
虎杖が言うように祖父が残した言葉は呪いとなり、虎杖に「人を助ける」という生き方を決定付けています。
このように死の間際に呪いの言葉を残すキャラがいる一方で、呪いの言葉を残さずに虎杖の生存を願ったキャラがいます。それは、渋谷事変で生死不明に陥った釘崎です。
七海が命を落とした後、彼女も真人の術式を受けて死を覚悟します。彼女は過去を振り返りつつ自身の心の中にある人生の席へ腰を掛ける人たちを思い浮かべた後、虎杖に「皆に伝えて 「悪くなかった!!」」と言葉を残し、顔の一部が吹き飛んでしまいました。
彼女の残した言葉を虎杖が伝えるためには、彼が渋谷事変から生還しなければなりません。このことから、彼女が虎杖の生存を願っていたことが考えられます。
しかし、その一方で彼女の言葉はただ伝えてほしいと言うだけで、虎杖のその後の生き方を決定付けるものではありません。これは窮屈な田舎で育ったことから生き方を強制されることを嫌い、自分らしく生きるために命を賭けた彼女らしい言葉でもあります。
──渋谷事変では多くのキャラが死を迎えましたが、3期で描かれる「死滅回游」も多くのキャラが命を落とす過酷なストーリーです。そこでもさまざまなキャラが生き残るものへ「呪いの言葉」を残し、その後の生き方を決定付けていくでしょう。
〈文/林星来 @seira_hayashi〉
フリーライターとして活動中。子供の頃から培ってきたアニメ知識を活かして、話題のアニメを中心に執筆。アニメ以外のジャンルでは、葬儀・遺品整理・金融・恋愛などの記事もさまざまなメディアで執筆しています。