2017年が湯浅政明監督イヤーだと思っていたら、2018年になっても湯浅政明監督イヤーは終わっていませんでした。

 年明けにDEVILMAN crybabyが配信をスタートしたかと思えば、日本アカデミー賞のアニメーション最優秀賞を『夜は短し歩けよ乙女』が受賞し、毎日映画コンクールの大藤信朗賞と第21回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を夜明け告げるルーのうたが受賞。

 さらに秋の恒例イベントとなっている東京国際映画祭では、2018年は湯浅政明監督特集を実施するということで、引き続き年末にかけてまだまだ勢いを加速し続けています。

湯浅政明監督作品が続々NETFLIX配信作品として登場

 そんな、湯浅政明監督が勢いをブーストさせた、二本の長編アニメーション作品が続々とNETFLIXの配信ラインナップに追加されました。2018年5月8日より『夜は短し歩けよ乙女』の配信がスタート。続く6月20日には『夜明け告げるルーのうた』が配信スタートします。

 いつまで配信が続くかは明らかにはされていませんが、NETFLIXは湯浅政明監督作品にはかなり注力しているようなので、長期の配信が期待できそうです。

 NETFLIXに加入している方は、ぜひチェックして欲しいですし、加入してない人もNETFLIX自体をチェックして欲しいなぁ……なんて思っております。中でも個人的にオススメなのが『夜は短し歩けよ乙女』です。

オススメの恋愛アニメ映画!?『夜は短し歩けよ乙女』

夜は短し歩けよ乙女
画像引用元:「夜は短し歩けよ乙女」 Blu-ray 通常版販売元:東宝

 『夜は短し歩けよ乙女』は、森見登美彦さんの小説を原作に、湯浅政明監督がアニメ映画化した恋愛作品で、飄々と我が道を行く「黒髪の乙女」と、彼女に恋心を抱きながらもひたすら外堀を埋め続ける奥手な「先輩」の一風変わった恋の行方を描いています。

 独特の言葉選びやキャラクターの独白が特徴的な森見登美彦さんの原作は、文章だからこその味が特に強い作品です。文体での楽しみがいが強い原作を、湯浅政明監督はうまい具合に味付けして、アニメーションだからこそ出来る動きや演出で見事に映像化しているところがポイントになっています。

 お酒を飲みほした時は一瞬だけ胸がぐっと膨らんだり、とんでもないぐらい大きな肉を一口でぺろりと平らげたり。随所にアニメーションの動きの気持ちよさが感じられます。

『夜は短し歩けよ乙女』はアニメ映画版と原作でここが大きく違う!

夜は短し歩けよ乙女 森見登美彦
画像引用元:夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)出版社:角川グループパブリッシング

 そんな『夜は短し歩けよ乙女』の原作とアニメ映画版では、大きく違う部分があります。その大きく違う部分というのが“時間”の要素。

 原作では春夏秋冬の4つの季節に合わせて、4つの物語が展開していくのですが、アニメ映画版では、同じく4つの季節のパートに分かれているものの、不思議なことにその4つの季節は、一晩の出来事のように語られます。この仕組みが非常に面白く、湯浅政明監督独特のエッセンスとも言えるところです。

 一見、黒髪の乙女や先輩の時間軸だけ1年が一晩の出来事になっているので、1年の密度が薄くなって二人の時間の感覚こそ早く進んでいるようにも見えるかもしれないのですが、実はこれは逆ですよね。二人にとっては、たった一晩が1年分ぐらいの密度なのです。

 その証拠に、作中では黒髪の乙女やほかの登場人物が、時計を見せ合うというシーンがあるのですが、年配のキャラクターになるほど時計の針のスピードが早くなっていたり、文字盤が春夏秋冬や十二支表記になっていたりします。

 また、生きる気力が弱まった李白というおじいさんのキャラクターは、家のベッドで目まぐるしいスピードで針の回る大量の時計に囲まれて寝込んでいたりします。

 密に生きるとは……というテーマも隠れた、これまた味わい深さを持ったアニメ映画が夜は短し歩けよ乙女なのです。

 

 ――あるタイミングで夜は短し歩けよ乙女は夜明けを迎えるわけですが、冒頭で述べたような湯浅政明監督イヤーとかつては感じていた湯浅監督の勢いはまだ夜明けを迎えていないのかもしれないですね。2019年、2020年、2021年と湯浅政明監督の勢いは全然収まらないどころか、さらに拡大していくなんて予感も感じさせます。

 夜は短いです。いつの間にか湯浅政明監督の波に乗り遅れてしまった……なんてことがないよう、この怒涛の湯浅監督の勢いをリアルタイムで実感していきましょう。

(Edit&Text/ネジムラ89)


映画『夜は短し歩けよ乙女』公式サイト

©森見登美彦・KADOKAWA/ナカメの会

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