2020年の開催予定から延期となった東京オリンピック。

 未だ反対の声もあるわけですが、予定通りであれば、ついに2021年7月23日から開催されます。もう開催までひと月を切っているのですよね。

 さて、そんな東京オリンピックで話題になった漫画があります。それが1982年に連載をスタートした『AKIRA』。作中の舞台となる“ネオ東京”2020年に東京五輪が開催されることが描かれており、現実世界の出来事を予言していたとして話題になりました。

 1988年にはアニメーション映画版が公開されており、原作を読んでいなくても、東京五輪を控えるネオ東京の姿を映画で観たというは多いでしょう。

 ある意味、30年近くの時を経て、旬な映画になっているわけですが、実はそんな東京五輪が決定したことを踏まえて、最近のアニメーション映画でも作中にオリンピック描写が描かれる映画が登場してきています。アニメーション映画界で描かれるオリンピックの姿を追っていきましょう。

◆ひるね姫〜知らないワタシの物語〜(2017)

 イチ早く東京オリンピックを作中に取り込んだ作品が、2017年の神山健治監督作品『ひるね姫〜知らないワタシの物語〜』

 東京オリンピックを数日後に控えた日本を舞台に、居眠りしがちな女子高生の森川ココネは、父親がなぜか警察に連行されてしまったことを機に、父が実は隠していた自動車の全自動運転機能を持ったロボット“ハーツ”と出会います。現実世界を舞台にしていながらも、夢の世界を行き来することで、ココネが過去を辿る旅をSFファンタジーへと押し広げた映画となっています。詳しくは言えませんが、ロボットもの作品が好きな人にもオススメしたい映画です。

 設定だけでなく本編にも東京オリンピックが大きく関わっており、開会式で自動運転の車が選手を乗せて入場させようとするというアイデアがストーリーの鍵となっています。そう言えば、実際の開会式で選手たちはどう入場するのでしょうか。もし自動運転の車に乗っての入場だったら驚きですよね。

◆日本沈没2020(2020)

 Netflixにて配信されたアニメシリーズ『日本沈没2020』もオリンピック描写が登場しています。本作はNetflixで配信されたのちに『日本沈没2020 劇場編集版 -シズマヌキボウ-』のタイトルで編集版が劇場公開されました。

 武藤家の長女である中学三年生の武藤歩は日本代表候補として期待される陸上選手。そんな彼女が競技場で練習をしていたところ、突如大きな地震が襲います。多くの人が戸惑う中、なんとかして武藤家の家族は神社に集結することに成功します。しかし、日本の大地は海へ侵食されており、これは家族にとっての大きなサバイバルの始まりでしかなかったことが後に明らかになります。

 実はこの映画は、2020年の東京五輪がすでに終わったばかりの世界を舞台にしています。もし、日本が海に沈んでしまったら……というもしもの世界を描いた作品なのはタイトルからわかりますが、当初の予定通り2020年にオリンピックが開催されたらという別のもしもの軸も加わることになるとは、当時の制作陣も思いもしなかったことでしょう。

 ちなみに本作では東京五輪とは別の五輪も描かれ、それが物語中でも重要な意味を持つ場面となっています。

◆名探偵コナン 緋色の弾丸(2021)

 毎年新作映画を公開しているシリーズ作品では、オリンピック年に合わせて、作中でもオリンピックを取り上げている作品が登場しています。『名探偵コナン』もそんな作品の一つ。

 2021年公開の最新作である『名探偵コナン 緋色の弾丸』では、オリンピックというイベント名ではありませんが、世界最大のスポーツの祭典ワールド・スポーツ・ゲームスこと「WSG」が東京で開催されるという、オリンピックイヤーを意識した内容になっています。

 作中には新国立競技場を模したような新設のスタジアムも登場。そのデザインが、当初予定していたザハ・ハディド氏が提案したデザインに似ているのも面白いところ。

 超電導リニアも、未だ未完成のリニア中央新幹線を思わせたりと、あり得た日本の姿が詰まっているのは、半ば現実世界を舞台にしている『名探偵コナン』らしい仕掛けと言えるでしょう。

 ちなみに当初上映を予定していた2020年から、オリンピックと共に2021年の公開に移っているのも不思議な縁ですね。

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◆それいけ!アンパンマンふわふわフワリーと雲の国(2021)

 2021年6月25日に上映されたばかりの『それいけ!アンパンマン』の劇場版シリーズ最新作『それいけ!アンパンマンふわふわフワリーと雲の国』にもオリンピック描写がまさかの登場!

 こちらも作中ではオリンピックであるとは明言されていないのですが、冒頭で多くの仲間たちがスポーツに打ち込む姿は、アンパンマン界のオリンピックを思わせます。そして、オリンピックを意識しているのが明らかになるのが、そのスタジアムのデザイン。こちらもまさかの新国立競技場を模したデザインになっているのです。現実の競技場との大きな違いは、その屋根には大きくアンパンマンの顔が貼り付けられているところ。アンパンマンの世界で、どれだけアンパンマンが支持されているのかを思い知るシーンとなっています。

 冒頭のシーンのみではありますが、しっかりアンパンマンもオリンピックイヤーを作中で盛り上げてくれていました。

 

 ――以上の東京オリンピックを意識した演出が盛り込まれるアニメーション映画4作品を紹介しましたが、やはりいずれも2020年の安泰な開催を想定して盛り込まれた設定であることが、コロナ禍を知る今にして思うと色々と考えさせられるポイントです。

 当時は2020年のオリンピックを思い起こす演出になるはずが、別の感慨深さが生まれる映画となってしまったことはちょっと寂しい話。いざ迎えるオリンピックで、少しでも輝かしい出来事を想起させられるようになれたら嬉しいのですが、果たしてどうなるのか。

 また、今後公開されていくアニメーションでは、コロナ禍を経た日本を描いていく映画も登場するかもしれませんね。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』(https://note.com/nejimura89/m/mcae3f6e654bd)を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi

映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』オフィシャルサイト
©2017 ひるね姫製作委員会

Netflixオリジナルアニメシリーズ『日本沈没2020』公式サイト
© “JAPAN SINKS : 2020”Project Partners

劇場版『名探偵コナン 緋色の弾丸』
©2020 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

2020年 映画『それいけ! アンパンマン ふわふわフワリーと雲の国』公式サイト
©やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV
©やなせたかし/アンパンマン製作委員会2020

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