ファンタジー世界で人生をやり直す転生モノ『無職転生~異世界行ったら本気だす~』(以下、無職転生)2021年冬アニメとして放送開始されました。

無職転生 Blu-ray 画像<画像引用元:『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』Blu-ray Chapter 1 (初回生産限定版) 販売元:東宝>

 『無職転生』は、他の転生召喚系の作品によく見られる『小説家になろう』(以下、なろう)出身のアニメです。しかし、他の作品と違うところは、異世界転生モノの先駆け作品だということ。本作は2012年から2015年まで連載され、すでに完結しています。

 実は『無職転生』、2013年から2019年までの6年間、なろう累計ランキング1位を維持していたトンデモナイ作品なのです。そして完結後も人気が持続。そのため、読者からはアニメ化の際に“なろう最終兵器”と言われていました。

◆人生をやり直す! 恵まれなかった主人公が送る第2の人生『無職転生』とは?

無職転生 人気 画像<画像引用元:https://mushokutensei.jp/story/01/ より引用掲載 ©理不尽な孫の手/MFブックス/「無職転生」製作委員会>

 『無職転生』は、ニートとして堕落した生活を送ってきた主人公が不慮の事故によって異世界に転生。第2の人生を歩むことになる物語です。ただただ転生する作品というよりは人生をやり直す。そのようなテーマの含まれた作品と言えます。

 そんな『無職転生』が、どんな作品なのかを簡単に説明するのは、非常に難しいです。本作は、俺TUEEEモノでもあり、転生モノでもあり、ファンタジーモノでもあり、冒険モノでもあります。しかし、そのどれもが、この作品を表す言葉として物足りなさを感じてしまうのです。

 本作を振り返り、どんな言葉で言い表そうかと考えていると、一つの言葉が思い浮かびました。それが「人生」です。1度そう考えると、何やらしっくりとした感覚がありました。そう、この作品『無職転生』は、1人の転生した人間の人生を描いた作品なのです。

 一つの作品を表す言葉として人生を使うのは、少し大げさと考える方もいるかもしれません。しかし、過去にも人生と表現された作品があります。それが『CLANNAD』です。不朽の名作として知られるこの作品。泣けるアニメランキングでは、10年以上経った今でも上位に入るほど、人気の高い作品です。『CLANNAD』が人生と呼ばれる所以は、主人公の半生を描いているから。

 冴えない高校時代から始まり、ヒロインと出会い、バカ騒ぎをし、いろいろな出会いを経験、ヒロインと結ばれ、子供ができ、そして、父親となる……。『CLANNAD』はそんな、人生の輝きとも言える苦楽を描いたアニメなのです。「何もかもが成功するわけじゃない、でもどこか暖かさがあり、一つの幸せの形が描かれている」だからこそ、人生と呼ばれているのではないでしょうか。

無職転生 人気 画像02<画像引用元:https://mushokutensei.jp/story/3/ より引用掲載 ©理不尽な孫の手/MFブックス/「無職転生」製作委員会>

 『無職転生』も『CLANNAD』と同じく主人公の半生を描いた作品なのです。本作では、主人公が生まれ変わり、成長していく様子、冒険に出て出会いと別れを経験し、ヒロインと結婚し子供が生まれ、そして子供のためにまた冒険に出る、そんな人生が描かれています。作中での経過年数は、ざっと20年から30年分。しかも、1人の主人公にのみ焦点が当てられています。それはまさに、一つの人生を描いていると言えるのではないでしょうか。

 学園モノで人生を描いた作品が『CLANNAD』なら、転生モノで人生を描いた作品が『無職転生』です。どちらの作品もそういった簡略化された枠組みを越えた感動があり、一つのジャンルに別けることのできない良さがあります。

 だからこそ、俺TUEEEモノ、転生モノ、ファンタジーモノ、冒険モノといった枠組みに囚われてほしくありません。『無職転生』は、そういったことを気にせず全てのアニメファンに観て欲しい作品です。

◆アニメファン納得の完成度!! 作画や背景のココが凄い!

  『無職転生』が感動する人生作品なのはモチロンのこと。この作品の凄いところはそれだけではありません。本作の凄いところは、作画や背景に強いコダワリを見せているところ。その一端は1年ほど前に公開されたティザーPVからも感じることできます。

 もしかすると劇場版アニメでも、これほどレベルの高い作画や気合の入った背景が描かれることは少ないかもしれません。

 このPVの特徴は、画面いっぱいにキャラを描くのではなく、少し小さめにすることで、背景の美しさに目がいくようになっている部分です。ファンタジー世界っぽさが全面に出ていて、どこかワクワクするような映像となっているのに気づいた方も多いハズ。

 さて、重要なのは本放送がどうなっているのかです。PVだけ完成度が高くても本放送がPVと同じレベルでなければ意味がありません。

 その気になる本放送ですが、まさに期待に沿う完成度となっています。序盤は、主人公が生まれ、両親と暮らす平和な日常が描かれているので、それほど激しい動きがあるわけではありません。しかし、それを補って余るほど、キャラや背景が丁寧に描かれています。

 特に、PVで注目していただいた背景などは「一つ一つが、それ単体で作品として成り立っているなのではないか?」と思わされる完成度。麦畑や森林、遠くに見える山脈が美しく描かれていることで、この世界の広さや、主人公が生まれた町の穏やかさを余すことなく伝えてくれています。

無職転生 人気 画像03<画像引用元:https://mushokutensei.jp/story/01/ より引用掲載 ©理不尽な孫の手/MFブックス/「無職転生」製作委員会>

 モチロン背景だけではなく、キャラのビジュアルも安定しており、崩れるようなこともありません。安心感を与えてくれると共に、キャラの可愛さ、美しさ、かっこよさが遺憾なく発揮されています。

 本当にキャラがその世界にいるような臨場感がこの作品の凄いところです。背景にキャラの乗せただけのような違和感が一切ありません。これは、背景と作画が両方とも非常に高いレベルで描かれているからでしょう。

 この背景と作画だけでも、十分に楽しめるのがこのアニメの魅力の一つです。

◆登場人物に惚れ込んでしまう!! キャラのココが凄い!

  『無職転生』が全体的にレベルの高い作品であることは分かってもらえたでしょう。その上で、まだ凄いところが本作にはあります。それは、キャラクターがとても人間臭いところ! 本作では、感情豊かで様々な考えを持っているキャラが登場します。個性豊か過ぎて、とても一人の作者が考えたとは思えないくらいです。

 例えば、主人公の優秀さについて、キャラそれぞれの反応がとても人間臭い。

 『無職転生』は転生モノなので、主人公は凄く優秀な人間として転生します。それ事態はなんの変哲もない異世界転生モノ要素の一つなのですよね。しかし、それに対してのキャラの反応がとても人間臭くて好印象を与えてくれます。

▼優秀な主人公に対しての両親の反応

無職転生 人気 画像04<画像引用元:https://mushokutensei.jp/story/02/ より引用掲載 ©理不尽な孫の手/MFブックス/「無職転生」製作委員会>

 主人公が幼くして魔術を発動させた時は、母親は飛び跳ねて喜び、すぐにでも魔術の家庭教師をつけようとします。そんな母親に対して、父親は「男の子なら剣術を習わせる約束だろ?」と反論。この父親が少し反対する部分など、とても人間臭いのではないでしょうか。子供が母親のお腹にいる時に「男の子なら強い剣士になって欲しい。自分の後を継いで欲しい」と願っていた様子が頭に浮かびます。父親心というやつですね。

▼優秀な主人公に対しての師匠の反応

無職転生 人気 画像05<画像引用元:https://mushokutensei.jp/story/01/ より引用掲載 ©理不尽な孫の手/MFブックス/「無職転生」製作委員会>

 また、そんな優秀な主人公に家庭教師である師匠すら、ある種の嫉妬するような感情を抱いている場面が描かれています。

「あなたは簡単に私を越えるでしょうし、自分より劣るものを師匠と呼ぶのは嫌でしょ」

 教えることをなんでも吸収する主人公に、師匠は教え甲斐があると喜ぶ一方で、主人公の才能に嫉妬し、自分の才能の無さを実感している場面もあるのです。弟子を誇らしく思う気持ちと自分を越えてしまう寂しいが同居している様子など、本当に人間臭いですよね。

 ▼優秀な主人公に対してのメイド(乳母)の反応

無職転生 人気 画像06<画像引用元:https://mushokutensei.jp/story/4/ より引用掲載 ©理不尽な孫の手/MFブックス/「無職転生」製作委員会>

 主人公は、転生者なので、生まれた瞬間から自意識がしっかりしていました。そのため、物分りもよくあまり泣くことがありません。その事をメイドはどこか気味悪く思っているのです。これも一つの人間臭さですよね。確かに、子供らしくないどこか大人びた子供が不気味に思えることもあるでしょう。それが幼子となれば尚更です。

 

 ――『無職転生』は、アニメが好きな方なら誰でも満足できるハズ。

 筆者の主観になりますが、特に近年は作画や背景に優れるアニメが大ヒットしているように感じます。例えば『Fate』『君の名は。』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』そして『鬼滅の刃』。どれも、シナリオが良いことはモチロンですが、作画や背景に優れたアニメです。

 アニメの一つの楽しみ方として、やはりアニメーションが優れているのは優位点と言えるでしょう。そんなアニメの中でも『無職転生』は高レベルの作画と背景を魅せています。

 また、本作のストーリーは、主人公の優秀さを表すだけでなく、それぞれの登場人物がどう考えるのか、どう感じるのか、どんなキャラなのかを視聴者に伝える役割を果たしてくれます。ただ主人公をアゲアゲするだけじゃなく、その優秀さに対してどう考えているのかをそれぞれのキャラが持っているのが『無職転生』の凄い部分と言えます。

 昨晩第4話が放送され、物語も盛り上がってきた本作。まだ作品の世界に触れていない方は、今からでも遅くない! 主人公・ルディの「人生」を覗いてみてください。

〈文/天乃ひる〉


TVアニメ「無職転生 ~異世界行ったら本気だす」公式サイト

©理不尽な孫の手/MFブックス/「無職転生」製作委員会

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