『オッドタクシー』に出てくるキャラクターで誰が好き?
と不躾にいきなり質問をしてみたのですが、2021年のTVアニメの放送から早くも『オッドタクシー』が帰ってきたわけですよ。『映画オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』が2022年4月1日より上映をスタートしました。
本作では、TVアニメの全13話で描かれた物語を再構成や新規シーンなどを加えて、一本の映画にしたものです。TVアニメを観て物足りなさを感じた人や、オーディオドラマなども追って不穏なその終わり方の行く末が気になった人には、満を持しての劇場版となっています。
そんな『オッドタクシー』に関して、TVアニメの放送当時から時間が経過した今、これらのシリーズを追ってきている人に恐れ多くも聞いてみたかったのが冒頭の『オッドタクシー』に出てくるキャラクターで誰が好き?という質問です。
なんでそんなことを聞きたいのかといえば、どうも作品周辺の様子を見ると、『オッドタクシー』では、あるキャラクターが意外にも人気なのではないかと、思ったからです。そのキャラクターというのが、ヤマアラシのヤノです。
◆ヤノとはどんな人物か?
ヤノはヤマアラシの姿をしたトゲトゲの髪と小柄な体型、独特の手つきでラップで会話をする姿が特徴のキャラクターです。やっていることは明らかにカタギではなく、アイドルに美人局をさせて上納金を巻き上げたり、宝くじの高額当選者を拉致してそのお金を自分の物にしようとしたりと、お世辞にもカッコ良いとはいえない小悪党的な役どころです。
そんな立ち位置から、実はそれまでヤノに対してそれほど人気が高そうなイメージは持っておらず最初はヤノが人気キャラクターかもしれないという可能性に懐疑的でした。
ただ、よくよく考えると憎めない愛らしさもあるのは確かな人物です。
鋭い眼光とビシッと決まったスタイルに対し、少し気の抜けた声でリズミカルに韻を交えながらコミュニケーションをとるギャップは、珍妙ながら癖になるバランス。ヤノのキャストには、実際にラッパーとして活躍するMETEORさんを声優として初起用していたりと、役自体にもチャレンジ精神が詰まっています。
METEORさんがラッパーということもあってか、2021年にはヤノをテーマにした楽曲『My Name Is …』がヤノ(CV:Meteor)feat.PUNPEE名義で発表されたりと、実は特別扱いも手厚い状態でした。
◆『映画オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』のパンフレットの違和感
ヤノというキャラクター自体の魅力は理解しつつも、そこまで人気の高いキャラクターだとまだまだ信じられなかったのですが、『映画オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』のパンフレットを読んであることに気づかされました。どうも仄かに“ヤノのファンに向けた目配せ”があると。
#映画オッドタクシー イン・ザ・ウッズ
劇場販売グッズ情報を公開🚖✨OP映像を手掛けた山田遼志さん描き下ろしイラストを使用したグッズや、パンフレットには禁断の対談インタビューも…?!
各上映劇場で販売されますのでぜひチェックしてください!#オッドタクシー #oddtaxi pic.twitter.com/te9rgmjkyO— アニメ「オッドタクシー」OFFICIAL (@oddtaxi_) March 24, 2022
その目配せというのが収録されているインタビューです。
複数のインタビューが収録されているのですが、脚本の此元和津也さんのインタビューでは、今回の劇場版の追加シーンに関する逸話が披露されるのですが、それに加えて唐突に、「なぜヤノが手袋をしているのか」という裏話がそこそこの文量で披露されます。実は想定より多めの文量のインタビューに苦心しているという背景を踏まえた半ば冗談めいたエピソードだったのですが、あえてここでヤノがピックアップされているところに、「あれ?」と違和感が残ります。
違和感はそれだけではありません。キャストコメントも収録されているのですが、一部のキャラクターを演じた方のみ、インタビュー形式での収録となっていました。
まずは小戸川役の花江夏樹さんと、和田垣さくら役の村上まなつさんの対談形式のインタビュー。主人公キャストと、本作で重要な役割を担う役のお二人の対談ということで、起用も頷けるのですが、問題はもう一組の対談です。
ヤノ役のMETEORさん……は、残念ながらコメントのみでしたが、ヤノの舎弟である関口役の堀井茶渡さんと敵対するドブ役の浜田賢二さんとのお二人による対談が収録されています。悪役サイドのインタビューでありながら、一方は舎弟というアンバランスさ。その他の作品でも声優として活躍している者同士であることや、作中でも直接対決がある二人という点での起用なのか?と自分の中で理由を探していったのですが、その対談内容をみて少し理解しました。対談では、ドブや関口にとってヤノがどういう存在なのか、という話をしていたのです。ここにもヤノ人気の気配が漂っています。
そもそも関口自体も、オッドタクシーのBD BOXプロジェクトの一環で行われた、人気投票でキャラクターソングを制作する企画で見事上位に選出されたほどのキャラクター。意外と人気が高いことは、それとなく知っていましたが、実はこの企画では前述のキャラクターソングが制作されていたこともあってか、ヤノは投票対象から除かれていたようです。この投票企画ではヤノの人気を測ることはできないかもしれないですが、その浮いたヤノ票もそれとなく舎弟の関口票に上乗せされているのでは?という可能性に気づかされました。
◆ヤノの影響力はグッズで明らかに?
そして関連商品を意識していくとヤノ人気は明確なものに見えてきます。
プレミアムバンダイで実施されているカードダスオンライン ODDTAXI プレミアムダイカットステッカーセットでは、描き下ろしイラストが描かれている4キャラにドブ・関口・山本と並んでヤノが選出。メインビジュアルではヤノがセンターを飾っています。
▼カードダスオンライン ODDTAXI プレミアムダイカットステッカーセット
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続いては、アニメイト通販のオッドタクシーくじメイト。缶バッジやアクリルチャームなど様々なキャラクターのグッズが並んでいるのですが、最高賞であるA賞のB2タペストリーや、続くB賞のデニムポーチに使われているイラストが、木下麦監督描き下ろしのヤノと関口のイラストなのです。
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ここまでくると、当初は懐疑的だった私も、確信します。
『オッドタクシー』ではヤノが人気筆頭なのだと。
ミステリーキッスの二階堂や小戸川といい感じの白川さんが人気高いのかなぁとざっくりとしたヒロイン人気みたいな物をぼんやり想像していたのですが、『オッドタクシー』はヤノなのか、と自身の想像の甘さを痛感しました。一見キャラクター人気にそこまで大きな差が生まれそうにないストーリーかと想像していたのですが、思った以上に明確な人気差がそこにはありそうです。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』(https://note.com/nejimura89/m/mcae3f6e654bd)を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi
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